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2005年5月 3日 (火)

再生巨流

4104753017楡周平「再生巨流」、新潮社(2005)

お奨め度:★★★★1/2

帯にある「このプロジェクト、死んでも成功させる」というフレーズが気になり、読んでみた。経済小説。

佐川急便をモデル化した運送会社スバル運輸で、豪腕ゆえに、新規事業開発事業部という新設ポストに左遷された主人公吉野公啓が、アスクル(小説中ではプロンプト)に対抗するビジネスモデルを構築するプロジェクト小説。アスクルは文具店を代理店としているが、このモデルでは、街の電気屋さんを代理店とし、文具だけでなく、日用雑貨、電気製品などを総合的に取り扱うネットワークの構築を行う。

このビジネスモデルは昔から話題に上ることが多いものだが、相当、具体的にかかれており、それだけでもなかなか読み応えがある。

この小説の真骨頂は、プロジェクトマネジメントである。商社からスバル運輸に転職した主人公は立ち上げ屋のイメージがあり、立ち上がるといなくなってしまうタイプの人間。それが左遷の原因にもなる。この小説で描かれているプロジェクトでも立ち上げ前のプロセスが詳細に書かれているが、最後は社主に直談判して実現にこぎつけた総額90億円の投資プロジェクト。運用ベースに乗るまで逃げるわけに行かない。その中で、人を育てるということを知る。

ステークホルダマネジメント、チームマネジメント、リーダーシップ、リスクマネジメントの教科書ともいえるくらいよくできたストーリーになっている。まさに、プロジェクトマネジメントのすべてがここにある。プロジェクトマネジメントを「説明」するために、いくつかの小説が書かれたが、さすが本職。それらとは比べ物にならない出来だ!

ビジネスモデルの構築の中で、SIがスケジュールが間に合わないとごねるシーンがある。ここに対しても非常に明確な解答を与えている。まあ、楡氏の得意分野ではあるが、、、

エンディングは書かないが、プロジェクトマネジメントというより、マネジメントのすべてがここにあるといってもよいかもしれない。

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