イノベーションのジレンマ
クレイトン・クリステンセン「イノベーションのジレンマ 増補改訂版」、翔泳社(2001)
お奨め度:★★★★★
イノベーションマネジメントの分野では歴史的名著になった感のある本である.本書を読むと,イノベーションというのが,単に技術開発だけでは成り立たないことを容易に理解することができる.
本書では,新しい技術の誕生により,優良企業の中で戦略的なジレンマが起こり,優良であるがゆえに小さな市場においそれと出て行くことができず,気が付いたらその市場が大きくなっており自社製品の市場を侵食しているという現象を,事例に基づき,そのメカニズムを徹底的に分析している.このような現象を引き起こす技術を著者は破壊的技術と呼んでいる.本書の中で中心的に取り上げられている破壊的技術はハードディスク技術,,掘削技術の2つである.この2つの事例については非常に詳細に書かれており,読み物としても面白い.例えば,ハードディスクでは,8インチから5.25インチ,そして3.5インチへの推移と,そのハードディスクを主に使うメインフレーム,ミニコンピュータ,パーソナルコンピュータの推移を関係付けて,ハードディスクメーカがそれぞれの時期にどのように振舞ったかを分析してある.主張自体,非常に明快で,かつ示唆に富んでいる.
技術イノベーションを中心にして,経営革新を図ろうとしている企業の経営者,ベンチャー企業の経営者,これらの支援をするコンサルタントの方にはぜひお奨めしたい一冊である.
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クレイトン・クリステンセン、マイケル・レイナー(玉田俊平太、 櫻井 祐子訳)「イノベーションへの解―利益ある成長に向けて」、翔泳社(2003)
お奨め度:★★★1/2
イノベーションのジレンマの待望の続編。
前作のイノベーションんのジレンマとは逆の視点から、破壊的イノベーションを起こし、市場を支配するにはどうすればよいかを論じている。実際に、企業の活動の中で、顧客の扱い方、プロセスの内外製などのいくつかの視点から、具体的にとるべきソリューションを示し、ソニーなどの事例を挙げて、その検証をしている。
前作のイノベーションのジレンマは非常に説得力のあるものだったが、今回の作品は、「まあ、そういう考え方もある」という程度で、本当に破壊的イノベーションへのソリューションになるかどうかは、環境と運次第と思わせる部分がある。
ただ、前作で、分かった、じゃあ、どうすればよいのかという点でストレスを持った人はぜひ一読をお奨めしておく。
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