プロアクティブマネジメントのノウハウ満載!
村中 剛志「 「先読み力」で人を動かす~リーダーのためのプロアクティブ・マネジメント」、日本実業出版社(2008)
お薦め度:★★★★
プロアクティブという概念はプロジェクトマネジメントで真っ先に出てくる概念である。にもかかわらず、説明に苦労する。日本語では、この本でつかわれている「先読み」とか、「先手必勝」とか「用意周到」とかそんな言葉を当てている人が多いが、ピンとこないという人が多い。
この本は、それを見事に、(一般的な)リーダー向けの行動レベルで書き切っている。特に、個人レベルの話もさることながら、チームマネジメントの方法を述べた第3章は非常に参考になる。プロアクティブとは何かという以前に、この本に書いてあるようにやることがプロアクティブだと言えるようなレベルまで落とし込んであるのは素晴らしい!
本書では、まず、最初にプロアクティブ(先読み)するというのはどういうことかを業務効率やコストなど、いろいろな視点から説明している。
第2章以降は、たいへん、具体的だし、著者の持つノウハウを惜しみなく出してあり、分かりやすい。第2章は個人レベルのタイムマネジメントを具体的なツールとともに、示している。基本は段取り変えを如何になくすかにある。それを著者の独特のノウハウとツールで説明するとともに、実行する際にポイントになるところを丁寧に解説している。
第3章は冒頭にも書いたチーム編である。ここでは、3週間スケジュールとTOP5というツールを使い、チームでの情報共有によって、プロアクティブな段取りのコントロールを行う方法を説明している。さらに、原理を示すだけではなく、実践編として、実際にチームとしてそのような活動に取り組んでいく際の普及ステップまで示されており、たいへん、実践的である。
4章はミーティングマネジメントを如何にプロアクティブにしていくかについて、これまた、さまざまな工夫が紹介されている。基本的にはアジェンダ管理をプロアクティブに行うような仕組みになっている。
第5章はステークホルダマネジメントをプロアクティブに行う際の留意点。内容的には相手に求められる前に対応することが基本。レポートマネジメント、事前相談などについて述べられている。こちらは2~4章と比べると若干、Tips的である。
第6章ではリーダーのこころということで、「リードする」、「援助する」、「感謝する」という3つのこころがプロアクティブな行動を可能にするという著者の信念のようなものを書いている。
最後のまとめとして、村中さんはプロアクティブとは、思考法でも、マインドでも、リスク回避でもない。考え方、心構え、スタイル、姿勢であると書いている。結局、プロアクティブとは、個別の行動や思考、思考にたいして、これはプロアクティブ、これはリアクティブという風に考えていくものなのだろう。そういう意味で、プロアクティブとは何かという根本的なもやもやは消えないかもしれないが、すっきりするのではないかと思う。
最後に一つ、よけいなことを書いておく。この本で、プロアクティブの必要性として例に使っている例え話を僕もよく使う。野球で守備位置をバッターによって変え、常に真正面で捕球する野手と、常に横っとびで派手に捕球する野手はどちらがファインプレイをしているかという話だ。セミナーなどのつかみでこの話をすると、必ず、出てくる意見は「評価されるのは後者」とおうものだ。
もちろん、おかしいのだが、プロフェッショナルでない多くの日本組織では、この話は個人とかチームだけで切り離しできる話ではないのだ。組織もプロアクティブという「価値観」を持ち、顧客もまた同じ価値観を持っていないと、ジレンマが起こりかねない。非常に実践的な本なので、すぐにやってみる人もいると思うので、あえてその点をコメントしておきたい。特にチームマネジメントの中で実践する際には要注意だ。もちろん、その覚悟を持って実践してほしいという意味である。
目次
序 章 先読み力ってなに?
第1章 あなたの先読み力を知る
第2章 先読み力を鍛えるタイムマネジメント
第3章 メンバーが躍動するチームマネジメント
第4章 成果を生み出すミーティングはこうつくる
第5章 チーム関係者を巻き込み成功に導く
終 章 リーダーに必要な三つのこころ
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