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2019年4月16日 (火)

【PMスタイル考】第149話:プロジェクトマネジメントにおける主観や直観の活かし方

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◆プロジェクトコンセプト=目的+目標

前回のPMスタイル考では、客観/論理では新しいものは生まれない、直観や主観が必要であるということを述べた。今回はもう少しこの議論を深めて、どういう目標設定をすれば直観や主観を活かしたプロジェクト活動に展開していけるのかを考えてみたい。

プロジェクトには目的と目標がある。コンセプチュアルプロジェクトマネジメントの考え方では、その上位に戦略があり、戦略実行に貢献するためにプロジェクトを実施する。その際に、どのようなプロジェクトとして実施していくかをコンセプトとして考えていく。言い換えると、戦略実行にどのように貢献していくかがプロジェクトコンセプトになる。

プロジェクトコンセプトを決めた上で、プロジェクトの目的や目標に落とし込んでいくいう流れが基本であるが、実際には目的や目標と行き来しながらコンセプトを固めていくことが多い。つまり、

プロジェクトコンセプト=目的(意義)+目標

と考えてコンセプトを決めていくことが多い。プロジェクトの役割分担で考えると

コンセプト:プロジェクトスポンサー
目的:プロジェクトマネジャー
目標:チームリーダー

という分担が基本になる。

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2019年4月 1日 (月)

【PMスタイル考】第148話:直感や主観こそがイノベーションを生み出す

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◆議論の背景

今回は、PMスタイル考でこれまで婉曲的に書いてきたが、あまり伝わっていないなと感じていることを書いてみたい。それは、客観性、論理性に「こだわっている限り」、人と同じことしかできず、新しいものは生まれないということだ。

まず、背景を整理しておこう。

日本では2000年前後にロジカルシンキングが注目され、急速に普及してきた。今ではビジネスマンの基礎的なスキルとして新入社員から習得させようとしている企業が多い。また、論理的にものごとを考える背景として、客観性も重視されるようになってきた。論理と主観をくっつけると屁理屈になるので当然だと思われるかもしれないが、あとで述べるようにここに一つ、落とし穴がある。

このような傾向の中で、論理的ではない考え、客観性のない考えはダメだと考えられるようになってきた。ある意味で妥当だといえるが、問題はそれによって起こっていることである。起こっていることは

「新しいアイデアは生まれなくなり、イノベーションで後れを取っている」

ことだ。

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2019年3月12日 (火)

【PMスタイル考】第147話:テクノロジーを本質的に理解する

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◆伊藤穣一さんの指摘

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日本のインターネットの元祖の一人で、MITのメディアラボの所長である伊藤穣一さんが「教養としてのテクノロジー」という書籍で面白い指摘をしている。

「技術的な仕組みの背景にある考え方、すなわち「フィロソフィー(哲学)」として理解することが不可欠になってきました。これまで「教養」と呼ばれてこたレベルで、テクノロジーについて本質的な理解が必要となったのです。「テクノロジーが変えつつある世界」をきちんとした視点を持って捉えることができなければ、いまの経済や社会を正確に語ることができません」(「教養としてのテクノロジー」、NHK出版新書、2018)

伊藤さんといえば、世界レベルで通用している日本人のインターネット知識人であり、世界のテクノロジーのトレンドを作っている一人で、その伊藤さんの指摘だけあって、非常に興味深い。

著書のタイトルからも分かるように、これは技術者の話ではなく、ビジネスマン、あるいは社会で活動している人すべてにおいてテクノロジーは教養になってきたという指摘である。実際に、ビジネスにおいては、事業に取り組むためにテクノロジーに関する知見は重要だと感じている人が増えている。テクノロジーを知らないとビジネスモデルも構築できないし、スピーディーに競争戦略もできないような時代になっているのだ。

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2019年3月 6日 (水)

【PMスタイル考】146話:組織学習とコンセプチュアル思考

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◆シングルループ学習とダブルループ学習

今回のPMスタイル考は「失敗を活かす」ことについて考えてみたい。よく議論されるテーマであるが、意外と深く考えることは多くない問題だ。

この問題は言い換えると学習の問題である。そこでまず最初に学習に関する2つのフレームワークを2つ紹介しておきたい。一つは、アメリカの組織心理学者であるクリス・アージリスとドナルド・ショーンが組織学習について提唱したフレームワークで、組織の学習にはシングルループ学習とダブルループ学習の双方が必要というもの。

シングルルール学習はすでに備えている考え方や行動の枠組みにしたがって問題解決を図っていくことで、改善はここに含まれる。ダブルループ学習とは、既存の枠組みを捨てて新しい考え方や行動の枠組みを取り込むことである。

この2つを併せて、組織学習は、過去の成功体験における固定観念を自ら捨て、新しい枠組みをダブルループ学習し、それをシングルループ学習によって反復・強化していくサイクルを繰り返すことによって組織は強くなっていくというのが組織学習のフレームワークだ。

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2019年2月13日 (水)

【PMスタイル考】第145話:プロジェクトマネジメントはAIでどのように変わるのか

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◆定着してきたAI活用

この1~2年、AI(人工知能)関係のニュースが流れない日はないくらい、AIへの取り組みが盛んになり、多くの企業がチャレンジするようになってきた。これは、80年代後半にエキスパートシステムがブームになり、多くの挑戦がなされたとき以来のことであろう。

30年前と今では学習という点において大きな進歩がみられ、進歩した分、可能性を感じている企業や人が多く、日本でも特にこの1年くらい、取り組み状況が急速に拡大し、AI活用はもはやブームを超えて定着した一つの流れになっている。もはやニュースにすらならないような取り組みが非常に多くなっていると思われる。

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2019年1月28日 (月)

【PMスタイル考】第144話:本質的な需要をベースにしたコンセプトを創る

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◆アマゾンと楽天

ネット販売といえばアマゾンと楽天を思い浮かべる人が圧倒的に多いだろう。アマゾンが設立されたのが1995年、楽天は1997年でインターネットが普及しはじめた時期に設立され、ネットの発展とともに事業を成長させてきた感のある両社である。日本に関していえばアマゾンの日本語サイトが設立されたのは2000年なので、楽天の方が3年ほど早かったことになる。また、アマゾンがマーケットプレイスを開設したのは2003年なので、楽天より5年くらい遅れてスタートしたと考えてよいだろう。

今では、アマゾンはクラウドサービス「Amazon Web Services(AWS)」に収益源が移っているものの、14か国でサイトを展開し、売上げでも楽天とずいぶん差が開いているようだが、通販事業自体においても格段の差があるように感じる。その理由になっているのが、おそらく、需要の本質に対応しているかどうかだと思う。

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2019年1月11日 (金)

【PMスタイル考】第143話:ソリューションからセンスメイキングへ(2020/03/23改訂)

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◆センスメイキングとは

今回は少し大きな話をしたい。これからはソリューションの時代ではなく、センスメイキングの時代になるだろうという話だ。

多くの人はセンスメイキングという言葉や概念は聞いたことがないかもしれないが、これからの10年くらいのキーワードになってくるのではないかと思う概念だ。

2018年に読んだ本の中でもっとも素晴らしかった本として、クリスチャン・マスビアウの「センスメイキング」を選んだ。

クリスチャン・マスビアウ(斎藤栄一郎訳)「センスメイキング」、プレジデント社(2018)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4833423065/opc-22/ref=nosim

この本が英語で出版されたのは、2017年である。

「Sensemaking: What Makes Human Intelligence Essential in the Age of the Algorithm」
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/1408708361/opc-22/ref=nosim

この本でマスビアウは、

センスメイキングとはアルゴリズム思考の対極にある概念であり、自身の文化の土台になっている先入観や前提を捨て去り、対象世界の文化を調べ、全方位的に理解し、意味付けをすること、一言でいえば「本当に重要なものを見極めること」である

と説明している。

著者がセンスメイキングという言葉を初めて聞いたのは、カール・ワイクの

カール・ワイク(遠田 雄志、西本 直人訳)「センスメーキング イン オーガニゼーションズ」、文眞堂(2001)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4830943807/opc-22/ref=nosim

を読んだときだ。

組織文化との関係を知りたいと思って読んだのだが、この本は結構難解で、気になりつつ、そのままになっていた。2017年にマスビアウの本を読んだときに非常によくわかり、なぜ、欧米で注目されているかも理解できた。ちなみにマスビアウを読んだあとで、カール・ワイクを読み直してみたら、かなり理解が進んだような気がする。



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2018年12月26日 (水)

【PMスタイル考】第142話:ティール組織を実現するコンセプチュアルスキル

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◆はじめに

今年のマネジメントの一番の話題はやはり、「ティール組織」であろう。今年1月に英治出版より

フレデリック・ラルー(嘉村賢州解説、鈴木立哉訳)「ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」、英治出版(2018)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862762263/opc-22/ref=nosim

が翻訳出版され、ほぼ1年経った今でも雑誌記事などでティール組織をテーマにした記事をよく見かけるし、関連書籍もぼちぼち登場してきた。

そこで今年最後の記事は、ティール組織について書くことにした。

まず、ティール組織とはどういう概念なのかを簡単に触れておく。いまだに尋ねられることがあるのは、そもそもティールとはどういう意味の単語なのかということだ。ティールとは「青緑色」の意味である。

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2018年12月19日 (水)

【PMスタイル考】第141話:目的のイノベーションと手段のイノベーション

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◆はじめに

あらゆる分野でイノベーションは求められる、空前のイノベーション時代だと言われるが、イノベーションとは何か、イノベーションと改善はどう違うのか、などという疑問や議論ががいまだに残っている。

この議論はイノベーションというものの根幹にかかわる議論である。今回のPMスタイル考はこの議論をしてみたい。


◆なぜ、高級キャンドルは売れるのか

2~30年前、電力の配給が不安定だった時代には停電が多く、停電時の非常用品としてロウソクが不可欠だとされていた。最近では停電はめったになくなり、停電は地震で起こっていることが多いので、余震での火災を防ぐために停電の際にはロウソクを使わないように行政が指導していることもあり、ロウソクといえば仏壇に灯すくらいになってきた。

こういった事情は日本だけの話ではなく海外でも同じであるが、海外ではロウソクが以前以上に使われているという。それは高級なキャンドルである。

高級キャンドルは主に部屋のインテリアとして使われている。海外ではもともとランプが来客を歓迎する雰囲気を創る家具として重宝されているが、その一つとしてロウソクを使う習慣が生まれてきている。

このような仕掛けをしたのは、ロウソクでは新参のメーカであるヤンキーキャンドルという企業であるが、ヤンキーキャンドルは高級キャンドルでは40%以上のシェアを持っているトップメーカである。

このように時代の流れを書いてみると自然なのだが、ロウソクに注目してみると、一旦、使われなくなったものが、再び使われるようになってきているわけで不自然だ。何がこういう状況をうみだしたのだろ

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2018年11月30日 (金)

【PMスタイル考】第140話:デザインとコンセプチュアル思考

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◆デザイン思考の役割

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デザインを行うには「デザイン思考」という思考法がある。日本でも2010年にIDEOのティム・ブラウンの著書「デザイン思考が世界を変える」(ハヤカワ新書 juice)がベストセラーになり、注目されるようになってきた。

そして、今、デザイン思考は「イノベーション」のツールとして考えられて節がある。

この背景には、ヒューマン・センタード(人間中心)という考えがあるようだ。つまり、デザイン思考はどんな商品であれば買いたいかをさまざまな問いで顧客(消費者)に問いかけ、それに応えていくことによって売れる商品を創っていこうというビジネスモデルの根底にある思考法で、顧客のニーズには今までにない要求が含まれているという前提がある。そして、それを解決しなくてはニーズは実現できないというところからイノベーションの実現に結びついていくと考えられている。

だが、ちょっと考えてみればわかるように、このプロセスは改善プロセスである。顧客のニーズというのは現在、存在している商品がどうあってほしいかというものがほとんどで、顧客が自発的にまったく新しいものを想像し、欲しがるということはほぼあり得ないと思われる。

これは、アップルがiPhoneを開発したときに、スティーブ・ジョブズがフォーカスグループによるインタビューを行いながらも「多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ」と言ったとされるエピソードに代表されていると言えよう。

言い換えれば、デザイン思考は1を改善して10にする思考法であり、0→1、つまり、何もないところに新しいものを生み出す思考法ではない。

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