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2005年5月31日 (火)

ピーエムアタマを作る

メールマガジンをはじめてから知り合った人で、もう2年以上付き合っている人がいる(Aさんと呼ぼう)。あるメーカで技術系人材の人材育成を担当している人であるが、今のところ、会社としてのお付き合いはなく、個人的なお付き合いにとどまっている(この記事、読んでいたら、たまには仕事を依頼してください!;笑)。

こういうお付き合いがメルマガ開始後、3年間で40人くらいはできたと思う。その中でもAさんとは考え方がよく合う。組織文化のシャイン博士のいう「基本的仮定」のレベルで考え方が共有できているように思う。一言でいえば

「いくら手法を身につけても、そんなにすごいプロジェクトマネージャーは生まれない」

という点で価値観が一致している。プロジェクト手法や、ノウハウを否定しているのではない。これらはもちろん、大切である。問題はこれらに対して、パターンのようなものがどれだけ通用するかどうかである。

ちょっと話がそれるが、1年くらい前に、「ジアタマ」のよしあしが話題になったことがある(漢字では地頭と書く)。世の中で人間の頭の良さをいうのに、

 知識-思考力-パフォーマンス

というモデルが使われることがある。知識と思考力はわかると思う。パフォーマンスは、あまたの回転の速さとか、ひらめきの多様さとかをいう。

このモデルだと、ジアタマというのは思考力の部分が中核になる。もちろん、知識やパフォーマンスが不要ということではないが、中核になるのは思考力である。

このモデルが面白いのは、思考力というのは育てることができるからだ。つまり、ジアタマはよくすることができる。これが思考法ブームの正体だったという説がある。

さて、話がもとに戻るが、Aさんと僕の共通の認識は、プロジェクトマネージャーを育てるというのはジアタマの強い人材を育てることだということである。つまり、経験知のようなものを教え込むのではなく、プロジェクト、あるいはプロジェクトマネジメントの中でのクリティカルシンキングやシステムシンキングを具体的に教えるといったことが必要だということ。われわれはこれを、「ピーエムアタマ」と呼んでいた。

ここまではよいのだが、ご承知のように、今年度、うちで2本の新しいオープンセミナーを開発した。ひとつは、まさに、このジアタマ強化セミナーで

  ◆システム思考によるプロジェクト統合マネジメント
  日時:8月2~3日(終日)
  場所:ヴィラフォンテーヌコンファレンスセンター
  講師:好川哲人(プロジェクトマネジメントオフィス)
  参加料:84,000円(税込)
  詳細・お申込 http://www.pmos.jp/juku/regular/pmp-system.htm

である。これは、Aさんとの議論をきっかけに開発したセミナーである。しかし、もう1本の

  ◆プロジェクトを成功させる10のベストプラクティス
  日時:6月16~17日(終日)
  場所:ヴィラフォンテーヌコンファレンスセンター
  講師:好川哲人(プロジェクトマネジメントオフィス)
  参加料:94,500円(税込)
  詳細・お申込 http://www.pmos.jp/juku/regular/pmp-practice.htm

にAさんは異議を唱えてきた。なぜ、そんなセミナーをやるのか?と。いつも言っていることと違うのではないか?と。

このAさんの意見は、おそらく、ベストプラクティスというものに対する誤認であると思った。ベストプラクティスというのをノウハウとか、経験知という風に考えている人が多い。確かに、そういう側面があるのは事実だ。「こういうケースはこうやればうまくいった」というパターンに見えるからだ。しかし、ベストプラクティスというのは単なるノウハウではない。

世の中でよく、成功事例と失敗事例という並びで議論をすることがある。オブジェクト指向でいえば、パターンとアンチパターンである。ところが、よく考えてみると、この2つは似て非なるものである。失敗事例というのはまさに事例であり、知識である(失敗に学ぶというのはちょっと違うが)。ところが成功事例というのは知識ではない。

日本人は、「ちょっとでもよいところを取り入れられるとよい」という発想をする。これはこれで、向上心が強く、ポジティブだという意味ですばらしいことである。ところが、これで大やけどをすることがある。たとえば、こんな話に身に覚えはないだろうか?どこかで顧客の声に耳を傾けようという話を聞いてきた。なるほど、これは大切だと思う。偉いのは、ここから、さらに独自に研究し、よりよい取り組みをしようとする。その結果、顧客絶対主義とも呼ぶべき風潮がはびこったことがある。心当たりのある企業もあるのではなかろうか。

なぜ、こんなことが起こるか。成功を部分的に切り出しているからだ。いわゆるいいところ取り。しかし、トレードオフのある問題でそんなうまい話はあるはずがない。

つまり、成功事例というのはシステムであり、思考法なのである。システムとして、思考法を伴って切り出さなくてはならない。

ベストプラクティスというのも成功事例であるが、単に事実としての知識ではない。それを思考法に昇華したものだ。昇華する思考法としては、やはり、システム思考法が適切だろうと思うのだ。このセミナーはそういう意味でのプロジェクト思考法のセミナーである。半日のプロジェクト思考法セミナーでは、ものの考え方を議論している。しかし、ベストプラクティスのセミナーでは、プロジェクトマネジメントとしてそのような考え方をどのように展開していくかを議論している。

つまり、僕にしてみれば、ベストプラクティスのセミナーもピーエムアタマの強化セミナーということになるのだ。幸い、Aさんはこの説明で納得してくれた。

みなさんは如何でしょうか?

by 好川哲人

◆関連セミナーURL

プロジェクトを成功させる10のベストプラクティス

http://www.pmos.jp/juku/regular/pmp-practice.htm

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