【PMstyle Proposition:003】使えるプロジェクトの教訓とは~使える教訓にする2つのポイント
IPMA Conference 2000の発表論文「Managing Projects Management Knowledge」の中に以下のような調査があります。
・プロジェクトから教訓を感じる 75%
・プロジェクトの教訓を覚えている 62%
・教訓を誰かに伝える 55%
・教訓を別のプロジェクトに適用する 25%
簡単にいえば、プロジェクトマネジャーの4人に3人はプロジェクトで何かの教訓を感じているのに、教訓を別のプロジェクトに適用する人は4人に1人にすぎません。つまり、半分のプロジェクトマネジャーは何か教訓を感じても、何もしていないということになります。
これはナレッジギャップの問題と呼ばれますが、なぜ、こんなことが起こるのでしょうか?いろいろな原因があると思われますが、根本的な問題として
別のプロジェクトへ適用しようとしたときにできない
という問題があります。
この問題の本質は、そのプロジェクトで起こった事象をそのまま伝えていることにあります。
◆ある失敗プロジェクト事例
たとえば、あるITのプロジェクトで顧客A社の責任者のKさんが自分の忙しくて動いてくれなかったため、ユーザの要求の取りまとめが計画より1ヶ月遅れて、プロジェクトスケジュールが遅れました。あとで聞いたところ、プロジェクトの計画段階でKさんにはすでに要求取りまとめの時期に忙しくなることが分かっていたそうです。
そのリカバリーをする中でメンバーに残業、休日出勤をお願いしたところ、終盤でミスが増え、品質検査に計画の倍近くの時間を要し、テスト工程が予定の3倍、最終的に3カ月のスケジュール遅れになってしまいました。
◆教訓には適度な一般化(抽象化)が必要
あなたなら、このプロジェクトの出来事をどのように教訓として残しますか。
この情報をそのまま残しても、あまり、役には立ちません。でも、実際にはそこで止まっているケースがたくさんあります。今度、A社のKさんと仕事をするときにはきちんと予定を聞いてからスケジュールを立てようといった感じです。
では、「顧客も自分の仕事があって忙しいので、要求分析の期間は余裕をとろう」というのはどうでしょうか?実際にこういう教訓を残しているケースも少なくありません。
これは一般化のし過ぎです。どの会社も、あるいはA社のKさん以外の人もそうだとは限りません。いわゆる熱さに懲りてなますを吹くというやつで、これも使える教訓にはなりません。
この場合、
「「要求分析」のスケジュールは相手の意向を確認してから、実施可能なように決めよう」
というあたりが妥当な一般化だと思われます。
◆結果ではなく、思考過程が重要
それから使えないケース教訓としてもう一点あるのは、結果(現象)だけを情報として残しているケースです。
たとえば、上のケースで(Aさんは)自分の仕事に忙しくて動いてくれなかったわけですが、そのまま放っておいたわけではないでしょう。Aさんと交渉することはもちろん、支援を申し出るとか、しかるべき人にAさんの業務スケジュールの調整をお願いしてみるとか、いろいろやっているはずです。
実は教訓として重要なのは、問題の原因ではなく、問題に対してどういう行動をとり、その結果どうなったかです。もちろん、ここにも一般化は必要になりますが、他のプロジェクトにしてみれば、この情報にこそ値打ちがあるわです。
◆まとめ
以上のように、教訓を他のプロジェクトに応用できるようにするためには、
・思考過程をきちんと記録しておくこと
・学んだことを一般化しておくこと
が必要なのです。ぜひ、そういう振返りをするようにしましょう!
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