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2015年2月18日 (水)

【PMstyle Column:006】プロセスからプロジェクトへ ~ プロジェクト・イニシアチブのススメ

Project1◆深澤直人さんの指摘

日経ビジネスオンラインにジャーナリストの林信夫さんがアップルのジョナサン・アイブのインタビューを元に、デザインについていろいろと想いを書かれている記事が掲載されている。

なぜ日本メーカーはアップルになれないのか デザインを殺すシステム、もう捨て去る時だ


その2月18日の記事に、深澤直人さんの指摘が紹介されている。深澤さんは、アイブと一緒に、「20th Anniversary Mac」のデザインを手がけた日本で数本の指に入るデザイナーだが、この指摘が非常に重要なので、意見を書いてみたい。

深澤さんの指摘とは、日本のインハウスデザイナーの仕事の仕方に対するもので、

「自ら何かを考え出さなくてもいい立場で、事業部が開発した技術などに対して最終的にデザインを『施す』ということが多い。つまり、プロジェクトを自ら作るのではなく、途中から参加するといった感じでしょうか。そこから発想できることは、非常に限られています」

だと指摘している。そして、

「そういうしがらみや決められたシステムがあるから、デザイナーにそんな力がなくても、システムに乗ってしまえば、ある程度の仕事ができる」

という。まさに、ここが大問題である。


◆クリエイティブなことをプロセス化する愚

日本人の良さでもあり、愚かさでもあるのは、何でもシステム化(プロセス化)しようとすることだ。これは高度成長期にリバースエンジニアにかけてきた名残ではないかと思うのだが、とにかく新しいものをみれば、じっくりと分析し、自分たちのものにする過程の中で、やり方なり、製法なりをプロセス化していく。日本人はこの能力に非常に長けている。

問題は、クリエイティブなものに対して同様なアプローチをすることだ。その典型がデザインだといえる。上の深澤さんの指摘にあるように、日本企業は事業部が開発した技術に最終的にデザインという化粧を施すことで製品が出来上がるシステムを定着させている企業が多い。

デザイン思考にしてみても、注目されるようになってかれこれ5年以上にはなるが、成功事例が少ないのはこの問題に尽きるように思える。現在のシステムの中でいくらデザイン思考を言ってみても、所詮、外形的な話にしかならない。製品のコンセプトは技術の開発とともに中で決まってしまっているからだ。


◆デザイン思考の本質は技術とデザインの統合

キャッチアップではそれでよかったわけだが、自ら新しいものを作ろうとすると、それではできない。技術も、デザインも統合して一から考えて製品を作っていくことが不可欠である。これがデザイン思考の本質だ。

デザイン思考が注目されるようになってきたのは、製品の成功には顧客価値の提案が必要だという考えが強くなってためだが、現在のシステムがある限り、現実にやっていることは100年前にT型フォードでヘンリー・フォードがやった手口「ボディが黒である限りどんな色でも選べる」というのに限りなく近い。

お客様の欲しいものを考えて提供していますよといいながら、本質的な問題解決はせず、デザインでごまかすことになる。言い換えると製品をデザインするのではなく、技術で製品が規定されている中でデザインで見かけ上の選択肢を与えているに過ぎない。

そこで意識の高い技術者は技術の開発過程でデザイン思考に興味を持つようになった。が、はやり、デザイン思考の本質は広い意味での意匠であり、なかなか技術者の発想でうまくいくものではないというのがデザイン思考が注目されている割には製品開発の成功例が少ないもう一つの理由だと思う。


◆プロジェクトを作ろう!~プロジェクトイニチアチブのすすめ

深澤さんは、さらに

「そういう環境の中で、突出したものを作ろうとすると、まずはそのシステムを捨て去ることから始めなければならないのです」

という。これが極めて大切なことだ。システムを捨て去って何をするのか。いうまでもなくプロジェクトである。都度、プロジェクトを作って一から考える。

20年くらいから日本でもプロジェクトで仕事をすることが注目されるようになった。プロジェクトで仕事をすることはプロジェクトを創って進めていくことだが、恐ろしいことに20年経った今、また、これをプロセスにしてしまっている。

これをもう一度考え直し、デザイナーやエンジニアは仕事をプロジェクトとして進めていくスキルを身につける必要がある。

つまり、プロジェクトイニシアチブ、プロジェクトとして仕事をすることが必要なのだ。

仕事の中にはシステム(プロセス)に乗せてしまった方がいいものと、そうではないものがある。クリエイティブが求めらる仕事は後者で、後者に関してはプロジェクトイニチアチブが不可欠である。


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【参考資料】

リーアンダー・ケイニ―(関 美和訳、林 信行序文)「ジョナサン・アイブ 偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー」、日経BP社(2015)

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