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2014年5月13日 (火)

【プロデューサーの本棚】パラダイムの魔力~成功を約束する創造的未来の発見法

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ジョエル・バーカー(内田 和成序文、仁平 和夫訳)「【新装版】パラダイムの魔力~成功を約束する創造的未来の発見法」、日経BP社(2014)

21世紀のキーワードは

・先見性
・イノベーション
・卓越

だとし、それを実現するために、トーマス・クーンが科学分野で考えた概念「パラダイム」をビジネス分野に拡張し、パラダイムの可能性を追求した名著。原著は1992年、翻訳は1995年に刊行されたが、今年、新装版が出た。すでに21世紀になっているが、今でも新鮮である。

パラダイムは非常に分かりにくい概念であるが、この本では

ルールと規範であり、境界を明確にし、成功するためには境界の中でどのように行動すればよいかを教えてくれるもの

と定義し、パラダイムの変化により、新しいトレンドが生み出されたり、すでに起こっているトレンドを決定的に変えるので目が離せないものと位置づけている。

さて、この本ではパラダイムを4つの視点から考えている。

(1)新しいパラダイムはいつ現れるのか
(2)どんな人がパラダイムを変えるのか
(3)パラダイムを変える人のあとを最初に追うのはだれか。なぜ、そうするのか
(4)パラダイム・シフトは、その渦中にいる人にどんな影響を与えるのか

(1)に関しては、3つのフェーズで説明している。最初のフェーズ(A)は問題解決のルールを手直ししていく段階で、新しいルールを理解できるまで問題解決のペースは大きく変わらない。ルールが理解されるとフェーズBに入り、新しいパラダイムを使って解決できる問題を急激に見つけ、素早く解決できるようになる。その時期が終わると、フェーズCに入り、難しい問題ばかり残り、解決のペースが落ちる。

ジョエル・バーカーはこれを「パラダイム曲線」と呼んで、パラダイムの寿命を考える上での参考になるとしている。次のパラダイムは、A、B、Cのいずれでも起こるとしている。これは興味深い点である。

次にパラダイムを変えるのは「アウトサイダー」だとし、次の4つがあるとする。

・研修を終えたばかりの新人
・違う分野から来た経験豊富な人
・一匹狼
・よろずいじくりまわし屋

上の3つは、いわゆる、新人、よそ者、変り者というカテゴリーだ。最後のカテゴリーはクーンは気が付かなかったとしているが、棚上げされた問題に積極的に手を出す人のことだ。このカテゴリーは重要で、棚上げされていることを知らずに問題に取り組むがたいてい失敗する。ところが稀に成功すると前提が変わるので、それまでできなかった問題が一挙に解決する。

この例で挙げられているのが、電話を自動化したアーモンド・ストロージャーという葬儀屋だ。彼は電話の普及とともに注文が減ったことの原因を電話にあると考え、オペレーターの研修をしているのがライバルの葬儀屋の妻であることを突き止めた。そこで、自分のところにも電話を回してくれと申し出るが拒否され、自分のところにも電話がかかってくるための方策を考え、自動交換機と回転式ダイヤルの特許を取った。

(3)はパラダイムの開拓者。古いパラダイムでは解決できないことがたくさんあっても、なかなか論理的に考えると新しいパラダイムにも飛びつけない。新しいパラダイムを開拓する人は、直観で判断する。パソコンを開拓したIBM、TQCを開拓したフォードなど、みんな直観で、勇気をもって開拓している。

ここで重要なことは、パラダイムを作り出し、開拓すると鬼に金棒である。たとえば、ソニーのウォークマンがそうだった。パラダイムの開拓者はTQMの考え方に従い、たゆまぬ改善を行うので、開拓者の後を追っても永久に追いつけない。実際にソニーもそうだった。ウォークマンがトップの座から落ちたのは、アップルが新しいパラダイムを発明したからだ。その意味で、TQMを20世紀最大のパラダイムシフトだとしている。

最後の問いは、パラダイムシフトがその渦中の人にどのような影響を与えるかという問いだ。パラダイムには、自分のパラダイム以外のものは目に入らないという特性がある。したがって、古いパラダイムを支配している人は誤った判断をする。これが、クリステンセンのいう「イノベーションのジレンマ」の原因である。

まとめとしてパラダイムには

・パラダイムはどこにもある
・パラダイムは役に立つ
・パラダイム効果とは「見ると信じる」の常識的な関係をくつがえす
・ほとんどの場合、正しい答えは2つ以上ある
・あまりに深く根付いたパラダイムの中にいると、パラダイムの麻痺を起す。これは確信という名の疫病である
・激動の時代には、パラダイムのしなやかさが最善の戦略になる
・人間は自分のパラダイムを変えることができる

という特徴があるとしている。なんとも示唆に富んだ話である。

さらに、パラダイムシフトにうまく対応するマネジメントのについても言及している。それによると

・パラダイムのしなやかさを部下に求めるなら、自ら模範を示さなくてはならない
・クロストークの場を設け、活発に意見が交換される環境を作らなくてはならない
・馬鹿げた考えに耳を傾ければ、イノベーションの大きな力を手に入れることができる

といった考え方が必要だとしている。また、リーダーの役割は、

誰もが行きたがらない場所に人々を導く

ことだとしている。併せると

パラダイムの中で行うのが管理
パラダイムの間を導くのがリーダー

とのこと。名言である。

なお、この本でも何度も出てくるクーンのパラダイムについて知りたい人には、こちらの本をお勧めする。

トーマス・クーン(中山 茂訳)「科学革命の構造」、みすず書房(1971)

野家 啓一「パラダイムとは何か クーンの科学史革命 (講談社学術文庫 1879) 」、講談社(2008)

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