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2013年7月 2日 (火)

【プロデューサーの本棚】20%ドクトリン サイドプロジェクトで革新的ビジネスを生みだす法

4484131099_2 ライアン・テイト(田口未和訳)「20%ドクトリン サイドプロジェクトで革新的ビジネスを生みだす法」、阪急コミュニケーションズ (2013)


3Mが考案し、グーグルがシリコンバレーに広めたことで知られる20%ルール(3Mでは15%ルール)について、その成功の秘訣をさまざまな事例から分析し、まとめた本。イノベーションに二の足を踏んでいる企業のマネジャーにぜひ読んで欲しい。勇気が得られるだろう。




3Mといえばイノベーションで有名な会社である。その3Mの象徴商品であるスコッチマスキングテープは副社長が中止を指示した開発を、一人のエン ジニアが抵抗して行ったものだ。このため、この商品は密造テープと呼ばれたそうだ。そして、この事件が契機になり、15%の時間を自由に使えるという 15%ルールが生まれるきっかけになり、15%ルールはしばらく、ブートレッギング(密造酒作り)と呼ばれていたらしい。

3Mの15%ルールができたころにはまだ、起業すらしていなかったグーグルが、3Mの15%を応用し、20%ルールを創り上げる。そして、これに触発され、シリコンバレーには、独自に何かを創造する文化が開花し、他の業界にも広まっていった。

た だ、20%ルールを導入すれば、必ず、エンジニアは嬉々として自分のやりたいことに取り組み、組織としてイノベーションに取り組むネタが生まれてくるかと いうとそう甘くはない。20%ルールを導入しても効果がでないケースが多々あり、成果を出すにはマネジメントが必要であることははっきりしている。たとえ ば、3Mの例を上げれば、15%ルールと同時に、発売から1年以内の新商品が10%、4年以内の商品が30%という戦略ゴールを設定し、組織のイノベー ションをコントロールしている。

この本はこのような20%ルールプロジェクト事態の運営や、組織との連携のマネジメントについて書いたもので、グーグルの20%ルールになぞらえて、20%ドクトリンと呼んでいる。

20%ドクトリンには、

(1)創造性を発揮する自由を与える
(2)情熱を理解する
(3)製品は悪い方がよい
(4)再利用する
(5)すばやいイテレーションを繰り返す
(6)学んだ教訓を伝える
(7)部外者を取り込む

といったものがある。(3)~(7)は興味深い。リーンスタートアップにつながるものだ。

この本は、このドクトリンを探求した事例を紹介している。紹介されている事例には

・グーグル
・フリッカー
・ヤフー(ハックデイ)

などがある。いずれも、20%プロジェクト(サイドプロジェクト)を成功させたケースで、ここから20%ドクトリンから生まれてきたわけだが、これらの企業はイノベーティブな企業ばかりである。

最初のグーグルは言わずとしてた20%ルールを採用し、多くの革新的なソフトウエアを生み出している。この本で取り上げている例は、その原点ともいえるのが、コンテンツ連動型広告アドセンスとGメールである。

ア ドセンスは今では年間100億ドルを稼ぐ商品になっているが、開発時は副社長からストップがかかったような代物であった。しかし、ストップをかけられたソ フトウエアエンジニアのブックハイトは開発をやめず、なんとプロトタイプを一晩で作ってしまった。そして、副社長は見逃し、それが大成功を収める。

一方で、ブックハイトはメールへの不満を抱えていた。メールのインタフェースが悪く、社内のコミュニケーションの混乱の一因のなっていた。そこでGメールの開発に取り組んだ。

初 期のGメールは使いものにならないようなものだったが、徐々に改良され、実用レベルになってきた。そして、アドセンスとの連動ができるようになった。これ は20%ルールが確立される前の話で、2年半かかっている。その意味で会社から資金が出続けたのは例外的であるが、ブックハイツのとにかくリリースを繰り 返し、改善していくという行動は20%ルールプロジェクトの運営として非常に参考になるものだ。

次の例は、スタートアップに20%ルール を導入したという例である。ルディーコープというベンチャー企業は、ソーシャルネットワークゲーム「ゲーム・ネバーエンディング」にかけていた。しかし、 なかなか、思った通りに行かない中、開発チームはその中に組み込まれるインスタントメッセージのシステムのスピンアウトを考えるようになる。創業者はス タッフの意向を確かめた上で、そのサイドプロジェクトのプランを認めた。こうして生まれたのがフリッカーである。

3つ目の例は少し毛色が違う。ハックデイである。ハックデイはプログラマの祭典ともいえるもので、制限時間の中で好きなプログラムを作り、プレゼンを行うものだ。

ヤフーにハックデイを持ち込んだディッカーソンは、ヤフーの経営スタッフからストップがかかるようなハックデイを企画し、成功させた。そして、それをだんだん拡大していき、外部からの参加があるハックデイまで実施した。

このほか、この本では教育現場のサイドプロジェクト、ハフィントンポストの市民記者のサイドプロジェクト、トップシェフの家庭料理のサイドプロジェクトなどの例を紹介しながらドクトリンの妥当性を検証している。

その上で、まとめとして、サイドプロジェクトを初期段階、中間段階、最終段階に分けて整理している。非常に有用な知見である。

(1)初期段階―アイデンティティの構築
・自分が必要としているものをつくる
・意図的に人と違うことをする。
・感情的に人々と結びつく
・シンプルなものを素早く形にする
・制約を味方につける

(2)中間段階―サポートをつかみ取る
・バージョンアップを繰り返す
・何を評価するかを決め、ベンチマークとなる目標を定める
・飢餓感を持つ
・自信を持つ
・外部に目を向ける
・たとえ方向転換する必要があったとしても進み続ける

(3)最終段階―成長と決意
・後援者をみつけプロジェクトの味方にする
・すべての人に恩恵を与える投資だと強調する
・逆の発想をして既存のシステムで間に合わせる
・母船とのコミュニケーションを欠かさない

こ の本の著者のライアン・テイトのかつての上司で、昨年、「MAKERS」で注目されたクリス・アンダーソンが推薦している。本書で取り上げられている事例 はソフトウエアやサービス・飲食であるが、MAKERSによって、20%ルールが製造業でも実施可能になることは間違いない。あと3年もすれば、本書の製 造業版ができるのではないだろうかと思う。

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