【PMスタイル考】第50話:プロジェクトリーダーとして何をもたらしたいのか
◆プロジェクトリーダーは割にあわない
PMスタイルプラスも今回で50回になります。小さな節目ですので、今回は少し大きな問題として、リーダーのあり方を考えてみたいと思います。
プロジェクトリーダーを引き受けると、割に合わないという話があります。
権限がない割には苦労が多く、成果を上げるのが当たり前だとされ、報われず、プロジェクトが終わったら疲れ果てている。
このような先輩の苦労を見ている部下たちは、自分はプロジェクトリーダーなどやりたくないと思うようになるとも言われます。なぜ、そのように考えてしまうのでしょうか?
◆「プロジェクトリーダーを引き受けることによって何を得たいのか」
この問題を考えるにあたっては、プロジェクトリーダーを引き受ける際に、どのようなことを考えるかが深く関係してきます。
多くの人はプロジェクトリーダーを引き受ける際には、まず、「プロジェクトリーダーを引き受けることによって何を得たいのか」を考えます。「理由」です。多くの人が理由とするのは、
・新しいことに挑戦したい
・仕事における影響力を増したい
・部下に対する権威を増したい
・インセンティブを得たい
といったものです。プロジェクトリーダーが権限が与えられない、報われないという不満は主に、このような理由は考えている場合に、生じるものと思われます。
◆「プロジェクトリーダーを引き受けることによって何をもたらしたいのか」
さて、プロジェクトリーダーを引き受ける際に、考えるべきことにはもう一つあります。
それは、「プロジェクトリーダーを引き受けることによって何をもたらしたいのか」です。理由に対して、リーダーを引き受ける「目的」になります。
目的を明確に持っているプロジェクトリーダーはそんなに多くありませんが、理由より、目的の方が重要なのはいうまでもありません。何事も目的が不明確だと、満足のいく活動はできませんが、プロジェクトリーダーについても例外ではありません。ここがはっきりしていないプロジェクトリーダーは途中でプロジェクト方針が変わったりとか、メンバーに対する接し方に一貫性がないとか、中途半端な活動をしている傾向があります。
そこで、考えてみてくださいというと、
・経営に貢献する
といった答えを返す人が多いですが、これでは不十分です。プロジェクトリーダーを引き受けようと、引き受けまいと、経営に貢献することは当たり前の話だからです。より踏み込んで、「プロジェクトリーダー」としてどのように経営に貢献するかを考える必要があります。
◆目的は内発的なもの
経営に貢献するのであれば
収益面で貢献するのか、技術面で貢献するのか、人材面で貢献するのか、顧客関係の面で貢献するのか。
自社の戦略と自分の思いを重ね合わせて考えてみる必要があります。もちろん、経営に貢献することだけが答えではありません。
たとえば、
技術者の社内的な地位を向上させ、技術者としての社会的責任を自覚させる
という目的を書いた人がいます。この目的は一つのプロジェクトだけで達成できるようなものではありませんが、彼はこの目的を持ち続けています。あるいは、プロジェクトリーダーを引き受けるたびに
マネジメントや意思決定の方法を変革し、プロジェクトにふさわしい文化を会社に定着させていく
という目的を掲げている人がいます。
もうお分かりだと思いますが、理由など不要だといっているわけではありません。理由は外発的な動機になります。これに対して、目的は内発的な動機になるわけです。このように、プロジェクトリーダーを引き受ける目的を明確にすると、冒頭に述べたようには、見えず、
リーダーとしての目的を持ち、イキイキとしながら、プロジェクトの難問を解決し、プロジェクトを成し遂げている
ように見えるでしょう。
◆顧客への貢献をどうとらえるか
ここでもう一つ考えてみてほしいことがあります。それは、「顧客への貢献」です。理由にする人もいますし、目的にする人もいます。
顧客への貢献はリーダーにとって、理由なのでしょうか、それとも目的なのでしょうか?この問題はオープンプロブレムとして残しておきたいと思います。深い問題だと思いますので、じっくりと考えてみてください。
プロジェクト・リーダーに権限がないという設定に無理がある気がします。リーダーに選ばれたことは責任を与えられたことです。責任を果たす義務を受けたら、責任を果たすために実施する障害に対し、上司・部下に対し、要請する権限があります。この障害に対し、アイデアを出し、上司の同意を求めます。上司が同意しなかった場合は2つの方法があります。上司に別のアイデアを求めます。上司は反対に対し、代案を出す責任があります。これは嫌われるやり方です。方法は顧客に言わせる方法です。
私が言いたかったのはそのことではなく。リーダーとは責任をもってことに当たるという仕事を与えられた喜びと結果として付いてくる実力の向上です。これに優る生きがいはないと思います。
投稿: 渡辺 貢成 | 2012年7月27日 (金) 10:18
僕自身は渡辺さんの言われていることはよく分かります。ただ、それは、他者が強要するものではありません。たとえば、渡辺さんのような上司につけば、薫陶を受けてそのような考え方をするようになるのでしょうが、現実にはそんな上司はめったにいない。つまるところ、自分で考えてもらうしかないわけですが、考えるヒントは、何をもたらしたいかという内発的な動機にあると考えています。
投稿: 好川哲人 | 2012年7月27日 (金) 20:28