【プロデューサーの本棚】エスケープ・ベロシティ(2011)
ジェフリー・ムーア(栗原 潔訳)「エスケープ・ベロシティ キャズムを埋める成長戦略」、翔泳社(2011)
ハイテクの商品開発を支配するキャズム理論を考案したジェフリー・ムーア氏のエスケープ・ベロシティの翻訳が出版された。原書が出てそんなに経過していないので、ちょっとびっくりした。この記事では、少し、大局的な解説をしてみたい。
ジェフリー・ムーア氏の「キャズム」やクレイトン・クリステンセン博士の「イノベーションのジレンマ」は、とにかく、その著書を読んだときに、強烈なインパクトがあった。そして、それはイノベーションのマネジメントが特別なものであるような印象を受けた。
そしていくつかの段階を経て、イノベーションのジレンマは、「イノベーションへの解」が示され、さらに、それを人材のスキルレベルに落とした「イノベーションのDNA」も示された(翻訳も来年早々に出る)。
キャズムについても、「トルネード」を経て、昨年、「エスケープ・ベロシティ」が示された。エスケープ・ベロシティとは、第二宇宙速度と呼ばれるもので、ロケットが大気圏外に出た時点で地球に平行に飛ぶとき、地球の重力を振り切るのに必要最小限の初速度のことだ。
これらの本を読んでいてつくづく感じることは、マネジメントに近道はないということだ。キャズムは産業そのもののライフサイクルの問題が絡むのであまり感じなかったが、イノベーションのジレンマは読んだときに、古くて新しい問題だと感じたのを覚えている。
マネジメントにおいて起こる問題は常に新しい。新しいから問題になるわけだが、それに対して、対処療法として新しい方法が考案され、それはある程度、効果を発揮するだろう。もちろん、その対処療法こそが、重要なビジネスがあるわけで、それがもっとも顕著なのがハイテクビジネスである。
ただし、対処療法は対処療法で、対処療法を続けている限り、事業として安定した収益を上げることはできない。キャズムは乗り越えても、失速している事業は少なくない。だから、エスケープ・ベロシティが必要だという話になる。
ところが、エスケープ・ベロシティを得るためにしなくてはならないことは、マネジメントの王道的なことである。奇しくもこの本に、ハイテクビジネスで成功したアドビのロブ・ターコフが
そしていくつかの段階を経て、イノベーションのジレンマは、「イノベーションへの解」が示され、さらに、それを人材のスキルレベルに落とした「イノベーションのDNA」も示された(翻訳も来年早々に出る)。
キャズムについても、「トルネード」を経て、昨年、「エスケープ・ベロシティ」が示された。エスケープ・ベロシティとは、第二宇宙速度と呼ばれるもので、ロケットが大気圏外に出た時点で地球に平行に飛ぶとき、地球の重力を振り切るのに必要最小限の初速度のことだ。
これらの本を読んでいてつくづく感じることは、マネジメントに近道はないということだ。キャズムは産業そのもののライフサイクルの問題が絡むのであまり感じなかったが、イノベーションのジレンマは読んだときに、古くて新しい問題だと感じたのを覚えている。
マネジメントにおいて起こる問題は常に新しい。新しいから問題になるわけだが、それに対して、対処療法として新しい方法が考案され、それはある程度、効果を発揮するだろう。もちろん、その対処療法こそが、重要なビジネスがあるわけで、それがもっとも顕著なのがハイテクビジネスである。
ただし、対処療法は対処療法で、対処療法を続けている限り、事業として安定した収益を上げることはできない。キャズムは乗り越えても、失速している事業は少なくない。だから、エスケープ・ベロシティが必要だという話になる。
ところが、エスケープ・ベロシティを得るためにしなくてはならないことは、マネジメントの王道的なことである。奇しくもこの本に、ハイテクビジネスで成功したアドビのロブ・ターコフが
「マイケル・ポーターとピーター・ドラッカーの融合ともいえる本書は画期的だ」
とコメントしている。
実は、こういう問題は多い。プロジェクトマネジメントでいえば、オフショアがそうだ。中国人は日本人とは違うというところから始まるので、特別な問題として認識され、どうするかという大騒ぎになるのだが、そもそも、日本人がきちんとマネジメントできているわけではない。日本人をプロジェクトマネジメント的に、つまりダイバーシティーを活かすようなマネジメントをしていれば、オフショアは微調整の範囲である。
そう考えると、キャズムの問題にしても、最初から王道を行くというのは険しいが一つのアプローチではないかと思う。そのようなアプローチで、なおかつ、ビジネスのライフサイクルに対応しようというのが「学習する組織」的なアプローチで、今後は、どんどん、重要になってくるだろう。
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