PMstyle 2024年5月~7月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

カテゴリ

Powered by Six Apart

« 【PMスタイル考】第6話:プロジェクトガバナンスとテイラーリズム | メイン | 【コンセプチュアルスキル講座】第1講 ロジカルシンキング(2)隠れた前提を探せ! »

2010年7月 5日 (月)

【PMスタイル考】第7話:プロジェクトの成功要因は奥が深い

◆プロジェクトKSF
Style
ちょっと機会があって、プロジェクトの成功要因(KSF)の研究について調べています。プロジェクトの成功はプロジェクトマネジメントの成功と異なり、ある意味での歴史的検証が必要です。たとえば、商品開発のプロジェクトで、スケジュール内、予算内で商品を開発したとしても即座にプロジェクトは成功だったとはいえません。ITのプロジェクトで、スケジュール内、予算内で顧客の要望するシステムを作っても成功だとはいえません。商品であれば売れるかどうかが問題であり、システムであればそのシステムがライフサイクルを終えるときに満足しているかどうかが問題だからです。

もっといえば、プロジェクト終了から10年くらいたった後で、そのプロジェクトの実施にどのような意味があったが問題になります。実は、この問題は、ピーター・センゲ博士が、「学習する組織」の中で、大きな問題だと指摘している問題で、結構、根の深い問題でもあります。

調べた範囲でいえば、プロジェクトの成功要因として出てくるのは

(1)ステークホルダとの良好なコミュニケーション関係の構築
(2)プロジェクトチームやプロジェクトマネジャーの問題解決能力

の2つに加えて、もう一つあります。なんだかおわかりでしょうか?

(3)プロジェクトの明確な定義がされていること

です。

 
◆正しいプロジェクトマネジメントは、プロジェクト成功の必要条件

Practice このようなベストプラクティスは、テンプレートやプロセスに反映されています。たとえば、PMBOK(R)はこのようなベストプラクティスの実現をするためのマネジメントのプロセスや手法をまとめたものになっています。

そのため、PMBOKのプロセスや手法を忠実に実行していくとうまく行くと思っている人たちが多いと思われますが、実際に、PMBOKのプロセスを忠実に実行していくと、プロジェクトマネジメントはうまく行きます。

しかし、プロジェクトがうまくいくというものではありません。上に述べたとおりです。

たとえば、コミュニケーションマネジメントを忠実にやっていると、情報共有はできるでしょう。しかし、良好なコミュニケーション関係が構築できるとは限りません。たとえば、組織内のコミュニケーションはうまくできますが、顧客とのコミュニケーションがうまく行かないというのはそういうケースが多いようです。

二番目の問題解決については、形式化すらあまりできていないところです。変更管理などで、問題解決のプロセスは形式化されていますが、実際にどのような考え方で問題を解決すればよいかは、プロジェクトマネジメントの問題ではありません。

このようにプロジェクトマネジメントをきちんと行うことは、プロジェクトを成功させるための必要条件であっても、十分条件ではないのです。ひょっとすると、必要条件ですらない可能性すらあります。プロジェクトは現場のマネジメントであり、与件の問題解決だと割り切るのであればプロジェクトマネジメントをきちんとすればよいわけですが、経営に貢献しようと思っているのであれば、それでは不十分だと言えます。


◆プロジェクトの定義が根源的な成功要因

この点に関して、3つ目の成功要因であるプロジェクトの定義はきわめて興味深いところです。たとえば、フォードがトーラスを開発したときの文献を見ると、プロジェクト定義の「客観性」を問題にしてしています。客観的なプロジェクト定義とは、プロジェクトの目的とその完成に必要な諸活動の内容・必要性・スケジュールについて、メンバーとの間で合意をし、ドキュメント化することです。

いろいろな成功要因があっても、最終的にプロジェクトの成功はここに立ち返ることになります。

もう一つ、考えておきたいことは、プロジェクトを定義する際に、プロジェクトマネジメントの成功とプロジェクトの成功では、考えるべき深さが違ってくることです。

プロジェクトマネジメントの成功を追い求めたいのであれば、プロジェクト定義として、成果物を中心にして考えれば十分です。商品開発であれば、ある機能を持つ商品の開発そのものを目的だとすればよいわけですし、ITだとシステム開発そのものを目的だと考えればよいわけです。

ところが上に述べたように、この目的が達成できてもプロジェクトが成功したといえるとは限りません。プロジェクトは思い通りにいかないことが多いことを考えると、プロジェクトにとっては、商品を開発したり、システムを開発することは、手段(あるいは一つの目標)であって、目的ではないことの方が圧倒的に多いと言えます。

プロジェクトの目的とは、何のためにその商品を開発するのか、何のためにそのシステムを開発するかです。

現場が強い企業とはそこを的確に設定できる現場を持つ企業です。いくらものづくりがうまくても、そこができない企業が現場が強い企業とはいえなくなってきました。現場が強い企業になるには、プロジェクトの成功要因を深いレベルで理解し、実践していかねばならない時代だといえるでしょう。


◆関連セミナー

このような観点からのベストプラクティスを整理して解説するセミナーを開催します。

━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆プロジェクトを成功させる10のベストプラクティス    ◆14PDU's
日時:2011年10月5日(水)─6日(木)
場所:ヴィラフォンテーヌカンファレンスセンター汐留(東京都港区)
講師:好川哲人(株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、MBA)
詳細・お申込 http://www.pmstyle.biz/smn/practice10.htm
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【カリキュラム】
1.イントロダクション
2.経営に貢献するプロジェクトの企画
BP1:戦略に整合するプロジェクトゴールを設定する
演習:ゴール設定演習
3.ゴール実現を可能にするプロジェクト計画の策定
BP2:メンバーがゴールへの道筋をイメージできる計画を策定する
BP3:ステークホルダーをゴールのイメージを共有する
演習:プロジェクト計画評価演習
4.トラブルを未然に防ぐマネジメント
BP4:問題を早期発見し、ベースラインを死守する
BP5:リスクの変化を管理する
演習:リスクトラッキングベンチマーキング演習
5.プロジェクトパフォーマンスを高めるリーダーシップ
BP6:チームの生産性を向上させる
BP7:プロアクティブなコミュニケーションルールを策定し、実行する
BP8:メンバーを動機付け、個人の生産性を向上させる
演習:プロジェクトリーダーシップベンチマーキング演習
6.プロジェクトをやり遂げる
BP9:プロジェクトのガバナンスを計画し、コントロールする
BP10:目的をマネジメントし、プロジェクトの品質を高める
討議:プロジェクトをやり遂げるために必要なものは
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

コメント

コメントを投稿