【プロデューサーの本棚】アイデアが枯れない頭のつくり方
高橋晋平「アイデアが枯れない頭のつくり方」、阪急コミュニケーションズ(2014)
「∞プチプチ」で知られるおもちゃクリエイター高橋晋平さんさんが、自身のアイデアマネジメントを紹介する一冊。本書はあらかじめ、Kindle版を出版し、その結果をフィードバックし、茂木健一郎さんとの対談も追加して、紙の書籍になったらしい。
また、高橋さんは2013年にTEDxTokyoに登壇し、「新しいアイデアのつくり方」というプレゼンが話題になり、この分野でも注目の存在である。
本を読みながら、あるセミナーのアイデア出しをやってみたのだが、使えそうな感じだ。本でも薦めているが、アイデア出しをしながら読んでみるといいと思う。
高橋さんのアイデア出しの方法はシンプルで、ジェームス・ヤングが「アイデアのつくり方」で述べているように、アイデアは既存の要素の組み合わせであるという前提で
(1)A×B=C
(2)アイデアは「量より質」ではなく「質より量」
(3)まずダメなアイデアから出し始める
という「アイデア発想の3大原則」に基づいて行われる。
「∞プチプチ」でいえば
(1)キーチェーン玩具×プチプチ=「∞プチプチ」
(2)単なる思い付きで偶然でたアイデア
(3)データや前例を完全に無視し、「質」を全く考えていないアイデア
ということだったそうだ。
まず、(1)であるが、
A:考えたいテーマ(問題)
B:この世のあらゆる要素万物
C:アイデア
というもの。
高橋さんがこの本で紹介している方法は、まず、Aは決まる。そこで、Bを出し、連想をしていくという。
たとえば、新しいビールを開発するとすれば、Aはビールになる。Bに様々な言葉を入れていく。ここで面白いのはこれをしりとりてつないでいくそうだ。
リンゴ→ゴリラ→ラジオ→・・・
ここはアイデア出しの方法として理に適っているということを対談の中で茂木先生が述べられている。
そして、ビールとリンゴというように一つ一つについてアイデアを考えていく。たとえば、リンゴ味のビール。
Bの連想でアイデアに詰まったら、今後はAを少し広げてみる。
この方法の背景にある思想が(2)の質より量についてであるが、高橋さんは経験的にいいアイデアを一つ出すには1000個のアイデアが必要であるという。そのためには、(1)の方程式が威力を発揮する。
(1)の方程式に従って、BとAの連想を繰り返し、100個を一単位として1000個だす。これがアイデア出しの基本である。
また、進め方として(3)がある。だめなアイデアから出していくことによって
・すぐに2個目、3個目のアイデアが出てくる
・ダメなアイデアが踏み台になる
というメリットがある。
この3つの原則で実際に「仕事のストレス解消本」のアイデア出しをやっている例が掲載されているのでぜひ本を手にとって見てほしい。
このようにして多数のアイデアを出し、次に選ぶ。アイデア出しは一人でやった方が色が出てよいが、選ぶときのポイントは誰かと一緒に選ぶことだ。
選ぶときには感性と理屈を使う。それぞれ、以下のような基準で選ぶそうだ。
【理屈】
・過去の事例で似たようなものが成功しているというデータがある
・多数決をすれば多くの票を集めそうだと想像できる
・経験上、上司やクライアントが好きそうな案である
・失敗する可能性が低い
・多くの人が思いつきそうで、成功しそうな「王道」である
【感性】
・自分自身がそのアイデアが大好きで、絶対やりたいと思う
・提案したら笑いが起きそうだと感じる
・前例がなく、聞いたこともないアイデアで、新しいと感じる
・自分の好きな人がそのアイデアを喜びそうに感じる
・他の人とかぶらなさそうなアイデアだと感じる
さらに選んだアイデアは実行しなくてはならない。このために上司を説得するテクニックを紹介している。
最後にまとめてとして、アイデアが出続ける方法を紹介している。
アイデアの出し方の本はたくさんあるが、非常にシンプルで、広がりがあるのがこの本で紹介されている高橋流アイデア出しの特徴だと言える。
また、アイデアは組み合わせだという発想は、イノベーションは組み合わせだという発想にもつながる。ここで、非常に面白いのは、Bをしりとりでランダムに選んだ上でアイデアを出していくことである。ここが斬新なアイデアを生み出している。
普通にA×B=Cを考えると、BはAに引きずられて、つまらないアイデアしか出てこない。ここを断ち切っている。
イノベーションの方法を考えるときにも同じやり方で、Bをブレストのような方法で考えてみて、Aに引きずられて改善案しか出てこないのが普通だ。ランダムにBを決めることがイノベーションを起こすことになるように思う。
また、アイデアの選び方も理に適っている。これもイノベーションで使えるだろう。
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