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2011年8月 2日 (火)

【PMstyleコンセプト No.2】プロジェクトマネジャー2.0

◆プロジェクトマネジャー1.0

4年前から、日本プロジェクトマネジメント協会のSIG活動で、「ITプロジェクトマネジャーの成功条件」という研究を行っている。同協会から報告書が配布されており、無料で手に入るので関心のある方は、同協会に問い合わせて欲しい。

結論をいえば、

・業務スキル
・ヒューマンスキル(特に、コミュニケーションスキル)

が高い人ということで、まあ、プロジェクトマネジャーの育成に関わっている人が漠然と感じ、できるプロジェクトマネジャーが持論として持っているような感じの結論だった。

PMBOKの能力モデルをベースにした600以上のサンプル数のあるアンケートの分析なので、多くの人はこの結果に納得するのではないだろうか。

この調査は、リーマンショック前のプロジェクトマネジャーの人材像ではないかと思うことがある。リーマンショックを境に、米国のビジネスマンのスタイルが変わったという記事を時々、目にする。その変化は戦略スタイルに現れている。


◆戦略上のプロジェクトの位置づけが変わる

従来は、戦略計画に基づく経営が行われており、プロジェクトはその現場で、戦略計画から落とし込まれた目標達成をすることがミッションであるという考え方だった。

ところが、リーマンショック以降、ビジネスの流れを読むのが難しくなり、ミドル層での戦略整合が重視されるようになり、ミドルマネジメントを強化する企業が出てくるようになったという。これはミンツバーグの戦略の考え方であり、日本的なやり方でもある。

このような戦略観に立つと、プロジェクトの役割も変わってくる。プロジェクトは戦略計画から割り当てられた目標を達成するだけでは不十分である。むしろ、経営の意図や方針を読み取り、戦略を作成し、自らがその戦略を調整しながら実行していくという機能を求められる。

要するに、プロジェクトの目標を経営の意図を汲んで設定し、それを実現していくことが求められている。


◆プロジェクトマネジャーに必要なスキルの変化

このようになってくると、プロジェクトマネジャーに求められるスキルも変わってくる。

戦略計画に基づく経営では、戦略的に重要なプロジェクトに大きな投資がされるし、また、受注型プロジェクトにおいては規模が大きいプロジェクトが戦略的に重視された。従って、IT業界に代表されるように、プロジェクトマネジャーも経験を積んでくると、シニアプロジェクトマネジャーとして大規模なプロジェクトを行うような組織管理が行われていた。

しかし、プロジェクトの目標設定をプロジェクトが行うようになると、この構図は崩れる可能性がある。小さなプロジェクトが結果として戦略上、非常に重要な役割を果たすこともある。たとえば、IT企業でいえば、クラウドがそうだ。3年前はクラウドというのは重要性の低いテーマだった。したがって、比較的キャリアの浅い人がプロジェクトマネジャーをやっていた。この時点で、そのプロジェクトマネジャーが機能していたかどうかで、クラウドにおけるポジションが変わっている。

こういうことが起こり得る。プロジェクトマネジャーにとって重要なのは、経験ではなく、概念的にものごとを考え、それを企画(提案)にし、展開していくかである。これは、従来の発想でいえば、プロジェクトの目標を決定し、進めていくことに相当している。


◆プロジェクトマネジャー2.0

このように新しいタイプのプロジェクトマネジャー(プロジェクトリーダー)が求められている。PMstyleでは、このようなプロジェクトマネジャーをプロジェクトマネジャー2.0と呼んでいる。

プロジェクトマネジャー2.0のもう一つの見方は、マネジメントとリーダーシップのブレンド比率の違いである。これまでのプロジェクトマネジャーは目標達成をするマネジメントの役割の方が圧倒的に重要だったし、時間的にも多くを費やしてきた。しかし、プロジェクトマネジャー2.0はリーダーシップをより重視しなくてはならない。つまり、適切な目標を決めること、言い換えると「正しいプロジェクト」を作ることである。もちろん、マネジメントの絶対的な重要性が下がるわけではない。マネジメントはこれまでどおり、重要である。相対的にリーダーシップの重要性が高まるだけだ。

プロジェクトマネジメント1.0では、目標決定は上位管理者の役割だった。その意味で、プロジェクトマネジャーにも階級があった。これはマネジメントというのは本質的に、経験の多さに依存する部分があるからだ。

しかし、リーダーシップに経験の量は関係ない。その意味で、プロジェクトマネジャー2.0は、キャリアとは関係なく、実力勝負だといえる。


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