プロジェクトの視座、視野、視点
(2009/12/02)
◆プロジェクトデザインにおける「プロジェクトの3つの見方」
プロジェクト活動を企業にとって有意義なものにするためには、デザインにおいてプ
ロジェクトに対して3つの見方をしてみる必要があります。その3つとは
(1)視座
(2)視野
(3)視点
です。
視座とは、誰がどのような目的を達成するために実施するプロジェクトかという見方
です。視野とは、そのプロジェクトをどのような範囲、どのような時間で捉えるかと
いう見方です。三番目の視点はよく使われるとおり、そのプロジェクトにどのように
アプローチしていくか、言い換えると目標をどのように設定するかです。
現場のプロジェクトマネジメントでは、視点が重視されています。しかし、視座や視
野も持ち込まないと、経営的な成果はあがりません。
◇プロジェクトに対する視点
それぞれについてもう少し、詳しく考えてみましょう。
視点については、目標設定ですので、その重要性はみなさんが理解されているとおり
です。プロジェクトの目的を達成するには、何を目標にとり、目標値をどのレベルに
設定すればよいかはプロジェクトマネジメントの肝要です。
一言付け加えるならば、SQCD(スコープ、品質、コスト、納期)だけの視点から
の目標だけで、プロジェクトをうまくマネジメントできるかどうかというのは大いに
考える必要があります。とりあえずベースラインとしてよく使われるものに人的資源
がありますが、それ以外にもリスクに対する目標、調達に対する目標など、さまざま
な視点からの目標を検討してみて、必要なものはどんどん取り入れていくという柔軟
性が必要です。
◇プロジェクトに対する視野
次に、視野です。多くの問題プロジェクトは視野についての考えが欠如しているケー
スが多いようです。素直に考えれば、視野というのはスコープです。これ自体は正し
いと思われます。問題はスコープという概念を矮小化して扱っていることだと思われ
ます。
上で触れましたように、視野には空間的な視野と時間的な視野があります。
まず、空間をみれば、どんな小さなプロジェクトでもプロジェクトチームの活動が単
独で行われることはまずありません。情報化でも商品開発でも投資でも、プロジェク
トチームを作って活動を始めた場合には、必ず、周囲でそれに関連する活動が発生し
ます。たとえば、情報化のプロジェクトですと、システム開発のプロジェクトに併せ
て、仕組みやルールの変更や、組織の変更などの活動をするのが一般的です。商品開
発ですと、商品そのものの開発に併せて、販売チャネルの開発や調整、プロモーショ
ン活動などを行うのが普通です。
また、その活動からプロジェクトが生まれているケースも少なくありません。たとえ
ば、ビジネスプロセスの革新の活動の中から、情報システムの開発プロジェクトが生
まれるといったケースです。
これらの活動のうち、プロジェクトに取り込むものとプロジェクト外で行うものの整
理をするのがスコープ定義(区分)です。
また、時間に関していえば、プロジェクトしてどこで終わるべきか、つまりプロジェ
クトライフサイクルを考える必要があります。ITのプロジェクトであれば運用後を
どのように位置づけるのか、商品開発のプロジェクトであれば発売後をどのように位
置づけるかといった視野からの検討が必要になります。
これらをプロジェクトのスコープに取り込むかどうかによって、プロジェクトの目的
はもちろんですが、アプローチそのものが変わってきます。たとえば、ITのプロジ
ェクトで、1年間でシステムを開発することがスコープの場合と、開発後10年間の
運用アウトソーシングを含めてプロジェクトとした場合には、開発スケジュールその
ものが変わってきます。
その意味で、プロジェクトをデザインする際に、視野を変えて検討することは、プロ
ジェクトの実施に当たってきわめて重要だといえます。
◇プロジェクトをデザインする視座
3つ目の見方は視座です。
プロジェクトには代表的な3つの視座があります。プロジェクト実施を指示する上位
組織(経営)、プロジェクトを実施するプロジェクトチーム(現場)、そして、プロ
ジェクトの成果を活用するステークホルダ(一般には顧客や市場、場合によっては営
業や流通)です。
プロジェクトをデザインする際には、現場の視座からだけではなく、経営の視座、顧
客の視座から十分に検討する必要があります。そこに現場の困難を乗り越えるヒント
があるからです。
◇プロジェクトの上位マネジャーの方へ
このように考えてみたときに、現場レベルで行き詰っているプロジェクトを成功に導
くためには、視座を上げる必要があります。これは特に、プロジェクトの上位マネジ
ャーに申し上げたいことなのですが、現場で短納期、低予算で苦しんでいるプロジェ
クトに対して、プロジェクトマネジャーに知恵を貸して問題を解決しようというのは
考えるべきではありません。確かに現場改善は重要なのですが、それは現場に任せ、
経営の視座でそのプロジェクトをどのように定義すればよいかを考えるべきです。
経営レベルで考えれば、長期の安定的な取引の構築とか、人材の育成とか、いろいろ
とそのプロジェクトを実施する理由は見つかるはずです。場合(戦略)によってはブ
ランド構築ような理由もあるかもしれません。
また、組織ですので、視座が変われば視野も変わります。たとえば、システム開発の
プロジェクトで開発部分だけでみれば採算が合わなくても、視野を広げて運用を取り
込んでいくとか、あるいは開発プロジェクトを生み出している顧客側の仕事を取り込
んでいくといったことで、問題を回避できる可能性もあります。
今もやっていることだと思いますが、視座、視野、視点というフレームを持ち込むこ
とによって、もっとうまい方法が見つかる可能性も大です。
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