プログラムマネジメントはまだ早い?
「うちではプログラムマネジメントはまだ早い。もう少し、プロジェクトマネジメントをしっかりやって足元を固めてからの話だ」
プログラムマネジメントセミナーの告知を始めて何人からかこの指摘をされた。
いわんとすることはもちろん、よく分かる。一方で、早いとか、遅いという問題かなとも思う。遅い、早いを言い出すと、おそらく「鶏が先か、卵が先か」という議論になる。
大切なことはこの2つは「似て非なるもの」であり、そして、「補完しあうもの」だということをしっかりと理解することだ。異なるものだという認識をすることだ。プログラムマネジメントやマルチプロジェクトマネジメントは一種の組織マネジメントであり、一種の組織マネジメントである。これに対して、プロジェクトマネジメントはオペレーションのマネジメントである。
これは失敗を考えてみるとよく分かる。商品は書くことができないが、技術コンサルティングをやっていた頃に、電子機器メーカX社で商品Aの開発プロジェクトの(開発マネジメント)コンサルティングの仕事をしたことがある。この商品はある事業(商品ラインナップ)の戦略商品であり、この商品で競合メーカY社とのカテゴリシェア(5%差)を逆転することを狙っていた。当然、組織としてもテコ入れをして進めていった。
ところが残念なことに設計の見通しが甘く、3ヶ月発売が遅れ、結果として競合商品に2ヶ月の遅れを取ると予想された。プロジェクトとしては完全に失敗である。
遅れが判明したころから、商品Aの投入後に販促を兼ねて投入する予定だったソリューションサービスの繰上げ開始を決定し、売り上げを維持するために旧商品を使ってソリューションビジネスを展開することにした。これが功を奏した。競合製品の登場から2ヶ月の間、旧商品はシェアを維持し続けた。結局、Y社の商品より4ヶ月遅れて商品Aは市場に投入され、時間をかけて練られた分、ユーザにとって魅力的な商品に仕上がり、1%であったがカテゴリシェアを逆転した。これはプログラムマネジメントとしては大成功である。
この問題は、プロジェクトマネジメントをきっちりとやれば済むと言い切れない部分がある。ここでプロジェクトマネジメントをきちんとやると、プログラムの目的を忘れて、プロジェクトを失敗させないために「スコープ削減」に出ることが多い。ここでプロジェクトが踏ん張り、納期を遅らせてもプログラム目標を達成できると信じる仕様を守りきれるかどうかが企業の製品開発力であり、そのためには、プログラムマネジメントが不可欠である。
逆にいえば、プログラムマネジメントができて初めて、プロジェクトマネジメントが上のような適切な判断ができるようになる。この関係をよく頭に入れて、プロジェクトマネジメントの強化の一方で、必ず、プログラムマネジメントの強化を行う必要がある。
プログラムマネジメントの導入に速すぎることはない。上の例のように、プログラムマネジメントでプロジェクトマネジメントスキルの不足を補うこともあるのだ。
プログラムマネジメントのスキルが最も必要なのは、プロジェクトスポンサーである。プロジェクトスポンサーの仕事はプログラムマネジャーの仕事だといってもよいくらいだ。もちろん、実質的にプロジェクトスポンサーをかねているような「プレイングプログラムマネジャー」のようなプロジェクトマネジャーにとっても重要なスキルだ。
〓【開催概要】〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
◆プログラムマネジメント
~複数のプロジェクトを同時に成功させる方法とそのポイント<7PDU>
日時:2006年09月21日 10:00-17:00
場所:全国農業共済会館3F テクノ研修センター(東京・千代田区)
講師:好川哲人(プロジェクトマネジメントオフィス)
詳細・お申込 http://www.pmstyle.biz/smn/mpm.htm
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【カリキュラム】
1.いかに複数のプロジェクトをマネジメントするか
2.マルチプロジェクトマネジメントに関するPMIの標準
3.プログラムマネジメントの概要
4.プログラムにおけるプロジェクト間のコンフリクトの解消
5.プログラムのプロジェクトのスケジュール管理とリソース管理
6.プログラムのリスク管理
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