プロジェクトを手の内に入れる(1)
◆キーワードは「手の内に入れる」
PMBOKのプロセスの中にControlというプロセスがある。日本語版では管理・統制と訳している。プロジェクトをコントロールするというのと、統制するというのは日本語とはちょっとニュアンスが異なっているように感じている。
プロジェクトがきちんとコントロールできているとは、日本語でいえば、「手の内に入る」というの表現が適切だと思う。手の内に入るというのはどういうことか?
手の内に入れるという言葉はいろいろな局面で使われる。もっともよく使うのは、競馬の世界かもしれない。競馬の世界では「馬」を手の内に入れるということが言われる。これは
馬の性格や脚質を熟知し、自由自在に御すことが出来るようになること
である。馬が道具だというと、競馬ファンはけしからんということになると思うが、道具を手の内に入れるというのもよく使われる。たとえば、センサーを手の内に入れるという言い方をすることもよくある。センサーの特性を熟知し、精度の高い計測を可能にすることだ。もう少し、規模の大きいところでは、自動車やプラントを手の内に入れるとかいう言い方をする。これもやはり、馬やセンサーと同じ意味合いである。ほかにもチームを手の内に入れるという使い方をすることもある。これはチームビルディングを意味していることが多い。
また、生殺与奪を手の内に入れるという表現もあるし、人を手の内に入れるという言い方をする人もいる。さらにいえば、企業の経営を手の内に入れている経営者もいる。
◆熟知し、自由自在に御する
このように対象は何であれ、対象を熟知し、自由自在に御すことができることを手の内に入れるという。ここで注意してほしいのは、馬にしても、センサーにしても、デジタルには動かない部分があることだ。その意味での不確実性を持っており、その不確実性を熟知し、自由自在に御すことができるようになることを手の内に入れると表現している。コントロールするとはそういうイメージである。
プロジェクトマネジメントでコントロールという言葉が真っ先に出てくるのは、リスクである。リスクをコントロールするとはどういうことか。以前、戦略ノートでも書いたことがあるが、アイスバーンの上を車をスリップを御しながら運転する。これがリスクをコントロールするという意味だ。つまり、リスクをコントロールするとは、さまざまな「リスク事象」について熟知し、自由自在に御すことであるといえる。
◆プロジェクトを手のうちに入れるとは
「プロジェクトをコントロールする」ことも同じように捉えることができる。プロジェクトについて熟知し、自由自在に御すことである。さて、これはどう解釈すればよいのだろうか?いくつかの側面があるだろう。
まずは、自由自在に納期やコストの設定を自由自在に行えることである。もちろん、トレードオフバランスの範囲内であるが、これは理屈の上では容易であるが、結構、難しい。たとえば、チームやメンバーの特性を把握していないとこんなことはまずできないし、パフォーマンスのマネジメントがうまくできないとやはりできない。
たとえば、こんなことを考えてみてほしい。あなたの担当する製品開発に対して、設計作業に入った後で、競合の動向がわかり、予算を50%増しするので、製品発売時期を3ヶ月前倒しにしてくれという指示があったとしよう。もし、50%と2ヶ月のバランスが取れているなら、このような要求に確信を持って応えられるだろうかという課題である。
プロジェクトマネジャーとしては、ぜひとも、プロジェクトを手の内に入れることができるだけのスキルを身につけていきたいものだ。
では、プロジェクトを手の内に入れるにはどうすればよいか?
(2)に続く。
by 好川哲人
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