【働き方を変え、生産性を向上させる:3】~コミュニケーションスキルと組織文化
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◆生産性を向上する2つのアプローチ
生産性を向上するには
・コストを削減する
・付加価値を向上する
の2つのアプローチがあります。伊賀泰代さんが著書「生産性」の中で指摘しているように日本では生産性向上のアプローチとして後者のアプローチはほとんど用いられていませんので、一般的なイメージとしてはコスト削減、つまり、「効率化」の方が圧倒的に強く、そのための重要な要素の一つがコミュニケーションだと考えられています。
プロジェクトマネジメントにコミュニケーションマネジメントという概念がありますが、効率化のためのコミュニケーションはほぼこれで足ります。簡単にいえば、コミュニケーション(情報共有や伝達)が必要な場合を事前に洗い出し、どのようなスタイルでコミュニケーションするかを計画しておき、その計画に乗っ取って、コミュニケーションを実践するという方法です。コミュニケーションのルール決めですね。
◆付加価値を向上させるコミュニケーションとは
しかし、生産性に対しては付加価値の向上も手段となりうるわけで、そのためには「創造性」を高めることが重要になります。つまり、コミュニケーションのあり方は効率化とともに、創造性を高めるためにどうあるべきかを考える必要があります。
しかし、コミュニケーションマネジメントのような方法では創造性の向上には十分ではありません。では、創造性の向上にはどのようなコミュニケーションの方法が求められるのでしょう?
この議論はマネジメントとリーダーシップはどう違うのかという議論に通じるものがあります。マネジメントはマネジャーが行います。目的は現在のシステムを機能させ続けることで、そのために複雑さに対処する活動を行います。
これに対してリーダーシップは、現在のシステムをよりよくすることを目的とし、そのために変革を推し進める活動を行います。
つまり、コストを削減し生産性を向上することはマネジメントのアプローチであり、創造性を向上し付加価値を増やすことによって生産性を向することはリーダーシップのアプローチだといえます。
◆自発的なコミュニケーションのために必要なこと
そのように考えると、コミュニケーションのあり方として最も重要なことは、自発性です。
自発的にコミュニケーションの必要性を判断し、プル、プッシュのいずれの方向のコミュニケーションを行っていくスキルが必要になります。そして、そのようなコミュニケーションをとるには、いわゆるコミュニケーションのスキル以外に、
・自らの意思で業務に関わっていくこと
・全体を見て、自分の立ち位置を把握すること
2つが不可欠です。前者は第1回で述べた全員によるリーダーシップですし、後者は第2回で述べたコンセプチュアルスキルに他なりません。
◆コミュニケーションのインフラストラクチャー
ただ、コミュニケーションにおいてはもう一つ、重要なポイントがあります。
それは、個々のスキルやリーダーシップに加えてインフラストラクチャーがあることです。たとえば、顧客対応においてコミュニケーションを満足にしようとすると、顧客の情報を共有している以外に。どのような顧客にはどのように対応するということがある程度、ルール化されていることが重要です。
このような行動の源泉になるルールは明文化することが難しいものも多く、規則やコミュニケーションの問題というよりは組織文化の問題で、組織文化として共有されていることが重要です。そもそもをいえば、第1回で述べたようなリーダーシップの取り方についても組織文化として共有できて初めて実現できるものだといえます。
◆組織文化とコンセプチュアルスキル
組織文化をうまく機能させるためにもコンセプチュアルスキルが重要です。組織文化は文化である限り、かなり抽象度が高いものです。例えば、個々人ができる限りリーダーシップをとるという文化を定着させようとすれば、人によってできる範囲も自発性も違うので具体的にこういう場合はこうしなさいというルールにすることはできません。
そこで、できる限りのリーダーシップという概念をそれぞれの人が自分なりに解釈し、具体的な行動に落としていく必要があります。さらにそれだけではなく、他の人が行っている行動を観察し、自分の活動の中の行動に応用していくことも必要です。そのためには、他の人の具体的な行動を一旦抽象化し、さらに自分の活動の中では具体的にどういう行動になるのかを考えることが必須です。
これは一種の組織学習ですが、これから分かりますようにそこでは、コンセプチュアルスキルが不可欠なのです。この問題については、次回以降に改めて説明したいと思います。
さて、このようにコミュニケーションを生産性を高めるように行うには、リーダーシップやコンセプチュアルスキルといった個々人の資質とともに、そのインフラストラクチャーとなる組織文化が必要だといえます。
◆参考文献
伊賀 泰代「生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの」、ダイヤモンド社(2016)
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