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◆ロジカルシンキングの普及と限界
1990年代の後半から注目されるようになったロジカルシンキングは、今やビジネスマンの必須スキルになり、企業では比較的早い時期から取り組んでいます。会社によっては新入社員の時代から教育しているところもあります。
また、学生に教えている大学もあり、もはやビジネスマンンに限らず、非常に重要性の高いスキルで、社会人になってから取り組んだのでは遅いので、小学校、中学校くらいから教えてほしい思考法になっています。
一方でロジカルシンキングでは不十分だという議論もあります。例えば、「風が吹けば桶屋が儲かる」というロジックはロジカルシンキングの弱点を表しています。論理的に正しいことをつないでいってもこのような非論理的な答えしか得られないケースがあるのです。
このような問題が発生する原因はいくつかあるのだと思いますが、最も重要なのは正しいと思っていることの妥当さです。
「風が吹けば桶屋が儲かる」というロジックは
風が吹けば、砂埃が舞う。
→砂埃が舞えば、砂が目に入り、失明する人が増える。
→失明する人が増えれば、三味線弾きが増える。
→三味線弾きが増えれば猫が減る。
→猫が減れば鼠が増える。
→鼠が増えれば、風呂桶が齧られる。
→風呂桶が齧られれば修理が増える。
→修理が増えれば桶屋がもうかる
というものです。この中で、例えば「砂埃が舞えば、砂が目に入り、失明する人が増える」というロジックはかなり怪しいものですが、これを「風が吹けば、砂埃が舞う」と同じように扱っています。
これは認識の問題で、そう思っている人もいるかもしれません。結局、ロジックを立てている人は全体が見えているわけではありません。言い換えると、ロジックは全体を知っているという前提の上に成り立ちますが、現実にはそれは無理です。ここにロジカルシンキングの限界があります。