【コンセプチュアルスタイル考】第32話:コンセプチュアル思考で、相手の立場で考える
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◆相手の立場で考えるとは相手の主観で考えること
ビジネスやマネジメントにおいてよく「相手の立場で考えよう」という言い方をします。なんとなくさわりのいい言葉であるので重要だと思う人は多いと思いますが、実践するのはそんなに簡単なことではありません。
相手の立場で考えるということは、相手の主観で考えるということです。ここを客観的なものだと思ってしまうとおかしなことになります。相手の意見を客観的に考えるだけなら、相手の立場で考える必要などあまりないからです。
ところが現実にはこの落とし穴に落ちているケースが多いように見受けられます。
どういうことかといいますと、大抵は自分の視点や価値観(つまり自分の主観)で、相手の都合のよいことはどういうことかと考えているのです。
たとえば、仕事のスケジュールが遅れてきたときに上司に報告した方がよいのか、しない方がよいのかと迷い、相手の立場で考えてみようとします。ここでよくあるのは、自分が相手の立場だったらどうするかと考えればいいと思ってしまうことです。そのように考え、「聞きたくない」だろうと考えてしまい、報告せずに怒られました。
こんな風にものごとを考えているケースは決してすくなくありません。
◆なぜ、相手の立場で考えられないのか
このように考える背景には、意見というのは立場に応じて客観的なものだから、自分の考えでも相手の考えでもあるいは別の人がその立場にいても、状況が同じなら同じだ、あるいは同じであるべきだと考えてしまうことがあります。これは日本人に独特の思考パターンかもしれません。
では、相手の主観で考えればよいという話になるわけですが、これがなかなか、難しいのです。難しい理由は2つあると思われます。
一つは上司という人間を理解していないこと。もう一つは、相手の立場で考える方法が分からないことです。
そして、この2つの根底にある問題が、人間を抽象化できていないことです。
まず相手を理解できないという点から考えてみましょう。
自分はどういう人間かというのを聞かれたときは、大抵の人はどういう価値観を持っているかとか、どういう性格だとか、好きなものや嫌いなものについてかなり抽象的なレベルで答えるでしょう。そこで、延々と自分はどういう体験をしたとか、どういう行動するとか、具体的なことを答える人は珍しいと思います。
◆相手を理解するとは相手を抽象的に捉えること
相手を理解するというのもそういうことです。たとえば、報告すべきかどうかという問題について考える場合には、相手が仕事の進め方についてどういう考えを持っているか、情報についてどういう考えを持っているかを知らなくてはなりません。「こういう場合はこうだ」という具体的な判断基準を考えることはほぼ不可能に近いと言えます(現実にはそれを要求する人が極めて多いのだが)。
このような抽象的な人間像の把握は、数多くの日常的な具体的な局面から抽象化され、生まれるものです。この抽象化ができない限り、相手を理解することはできないでしょう。
さらに抽象的な相手の人物像を具体的な場面に適用することができないケースがあります。たとえば、同僚から「あの上司は基本的に部下は自立して仕事をしてほしいと思っているので、あまり細かいことは報告しない方がよい」と聞いていたとします。
しかし、細かいこととはどういうことか判断ができないので、結局、相手の立場で考えることができません。
◆どうすれば相手の立場で考えることができるのか
では、どうすれば相手の立場で考えることができるようになるのでしょうか。
まずは、相手の人材像を抽象的に捉えることができ、かつ、その抽象像から自分がいま抱えている具体的な状況における判断をすることができるようになることです。
たとえば、「あの上司は基本的に部下は自立して仕事をしてほしいと思っているので、あまり細かいことは報告しない方がよい」ということであれば、細かいことを定義してほしいと考えるのではなく、なぜ、そういう風に考えているのかということを日常から考えてみることです。
仮に時間がないことが理由だろうと洞察できれば自分で解決できる問題かどうかを判断して、自分で解決できる問題であれば報告しない。何か助けが必要であれば問題を切り出して報告するといった判断をするわけです。
これはコンセプチュアル思考の抽象的/具象的の軸を使うことによって実践できます。
さらに、相手の価値観を把握することが必要です。そこでは、客観的/主観的の軸をうまく使えば実践できます。主観と客観を行き来することによって、自分と相手の違いを知り、相手の価値観を自分の価値観との相対で位置付けていけばいいのです。
このような対応ができて、初めて相手の立場で考えることができたと言えます。
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