【プロデューサーの本棚】エッセンシャル思考
グレッグ・マキューン「エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする」、かんき出版 (2014)
「本質」にこだわるためには、無駄を捨てて、大切なことに集中しよう。こういう掛け声のライフハックは多い。
しかし、なかなか、できない。正確にいえば、気にいったり、できそうなハックは実行してみるが、あまり効果が出ない。
なぜかといえば、ハックはハックであって、ツール群でしかないからだ。無駄を捨てて、大切なことに集中するというのは、ループ図を書いて見るとすぐに分かるがシステムを変えることに他らない。したがって、ハックではできず、システム的なアプローチが必要である。しかし、なかなか、そんな本はなかった。
そこに出てきたのが全米で大ベストセラーになったこの本。そのタイトルも「Essentialism」だ。なぜ、わざわざ原題を紹介したかというと、邦題は「エッセンシャル思考」であるが、この本は思考法を書いた本ではなく、「本質」イズムの実現方法を書いた本だからだ。そのつもりで読んだ方がよい。
この本は、終始一貫して、エッセンシャル思考と非エッセンシャル思考の原則を比較しながら話を進めているが、そのもっとも基本的な違い、つまりエッセンシャル思考の原則は以下の通りだ。
・考え方
非エッセンシャル思考:みんな・すべて
エッセンシャル思考 :より少なく、しかしより良く
・行動
非エッセンシャル思考:やることをでたらめに増やす
エッセンシャル思考 :やることを計画的に減らす
・結果
非エッセンシャル思考:無力感
エッセンシャル思考 :充実感
エッセンシャル思考の基礎となるのは以下の3つの考え方である。これがエッセンシャリズムのシステムの要素ということになる。
(1)選択
(2)ノイズ
(3)トレードオフ
選択するとは時間とエネルギーの使い方を選び、トレードオフを引き受けることである。そして世の中のほとんどのものがノイズであると考える。だから何が必要かよく考えなくてはならない。
何か多くの問題があったときに、非エッセンシャル思考はすべてやろうとするが、エッセンシャル思考は何をやらないかを考える。
この3つを実行するために本書では、見極める技術、捨てる技術、仕組み化の技術と分けて技術を紹介している。
まず、見極める技術は以下の5つである。
・孤独:考えるためのスペースをつくる
・洞察:情報の本質をつかみとる
・遊ぶ:内なる子供の声を聴く
・睡眠:1時間の眠りが数時間分の成果を生む
・選抜: もっとも厳しい基準で決める
次に捨てる技術は以下の5つである。
・目標:最終形を明確にする
・拒否:断固として上手に断る
・キャンセル”過去の損失を切り捨てる
・編集:余剰を削り、本質を取り出す
・線引き:境界を決めると自由になれる
3つ目のしくみ化の技術は以下の5つである。
・バッファ:最悪の事態を想定する
・削減:仕事を減らし、成果を増やす
・前進:小さな一歩を積み重ねる
・習慣:本質的な行動を無意識化する
・集中:「今、何が重要か」を考える
それぞれについて、非エッセンシャル思考と、エッセンシャル思考の比較をポイントで挙げているので、それに目を通して、そのあと本文を読んでいくといいだろう。
最初にも述べたがこの本はライフハックではない。エッセンシャリズムのシステムとその要素、および、システムを動かす技術を紹介したものである。つまみ食いしないで、全体を実行するつもりで読んでほしい。
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