【プロデューサーの本棚】ブレイクスルー ひらめきはロジックから生まれる
木村 健太郎、磯部 光毅「ブレイクスルー ひらめきはロジックから生まれる」、宣伝会議(2013)
独自の発想法を街と森のメタファーを使って解説した一冊。
クリエイターの書いた本だけあって、表現が抜群にうまく、このメタファーに乗ると、うまくブレークスルーができそうな気がするとてもいい本だ。
まず、ブレークスルーの定義。
創造的な思考で、壁を突破し、結果、課題が解決すること
としている。その手順は、まずスルー(ゴール)をみつけて、ブレークすることだという。
この本の最大の特徴は、タイトルにあるようにロジックからひらめきが生まれてとしていること。その心はロジックとは思考のつながりであり、論理よりはるかに広い意味を持っている。この点は共感できる。
ブレークスルーにはあらゆる角度からの思考アプローチが必要である。この本では、8つの思考ロジックを紹介している。ひとつの思考ロジックでうまくいかなかったら、別のロジックを使う。
そうして生まれてきたアイデア。論理は感性で検証する。発想は論理で検証する。
思考には街の思考と森の思考がある。街の思考は、意識、論理、サイエンス、安全といった特徴があり、森の思考は、無意識、直感、アート、リスクといった特徴がある。そして、
街の思考で整理する
→森の思考でアイデアを見つける
→街の思考で検証し、磨く
というふうに街と森を行き来して、ブレークスルーは生まれる。
ブレークスルーは
・未来図
・突破口
・具体案
の3つの組み合わせで起こる。これをブレークスルースパイラルという。
未来図は未来にこうなっていたらいいというイメージ。突破口は未来図を実現するために障害となる壁を突破する解決アイデア。そして、具体案はアイデアの具体的な形。この3つの要素の関係は
・未来図を実現するために突破口を発見する
・突破口を具体化して具体案を作る
・具体案を検証して、未来図の実現可能性を判断する
というものである。3つはスパイラルであるので、どこから始めても構わない。本書では、イクメンをテーマにして、ブレークスルーのシミュレーションがされている。
さて、ここで街とブレークスルーの関係がある。
街の思考は分析ロジックで
・三段論法(演繹法)
・つみあげ(帰納法)
の2つがある。森の思考には
・連想(「といえば」)
・組み合わせ(「組み合わせてみたら」)
・アナロジー(「同じように」)
・アブダクション(「これが意味するところは」)
・仮想(「もしも」)
・逆転(「逆に」)
がある。それぞれについて、代表的な発想法を紹介している。そして、これらの思考で森と街を行き来するときには3つのスピリットが必要である。
・森にいく冒険心
・引き返す自制心
・言語化する執着心
そして、最後の章では、本書で紹介した考え方でブレークスルーを行うケーススタディーとして、ソニーリサイクルプロジェクトジーンズを取り上げて説明している。
表現がクリエイター的であるのですっと読んでしまうが、読み返してみると筋が通っている。このフレームワークはブレークスルーに使える。ただ、例を見ていると、本に書いている以上にセンスに依存するところがある。その意味では、クリエイターが使うフレームワークだと思う。
逆に、コンサルタントやエンジニアが使う場合、クリエイターの仕事術を学ぶという意識で使えばよいように思う。特に、マインドの中で、「言語化への執着心」というのは大いに学ぶことができるし、この本自体がその勉強になる。
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