【スポンサーシップ論】第2回 プロジェクトスポンサーの活動とその方法
◆プロジェクトスポンサーの3つの仕事
前回、プロジェクトスポンサーの3つの仕事として、
(1)チームをインスパイアすること
(2)プロジェクトの環境を整えること
(3)プロジェクトの成果を上位組織に売り込むこと
があるという話をした。今回は、これを活動にブレークダウンしてみよう。
◆チームのインスパイア
まず、チームをインスパイアするための活動には
・思考を促進する
・励ます
の2つの活動がある。「思考を促進する」活動の具体的な方法としては、
・プロジェクトリーダーへ思考や展望を促す
・仮説に挑戦する
・プロジェクトリーダーに考えさせるために突き放す
などである。また、「励ます」活動の具体的な方法は
・プロジェクトリーダーがミッションの達成動機を維持し、また、チームの問題に関与するように励ます。
・プロジェクトリーダーやチームにミッションの重要性を思い出させる
などである。前回も述べたが、プロジェクトスポンサーの余人を以って代えがたい仕事は、WHYを示すことである。その意味で、この2つの活動がスポンサーとしてもっとも重要な活動だといっても過言ではない。
◆プロジェクトの環境整備
ただし、それはプロジェクト側から見た場合の話であって、組織側から見ると、プロジェクトの環境を整えることがもっとも重要な役割だと認識されていることが多い。ある会社で、初期計画通りに進まなかったプロジェクトにおいて、誰に責任があると思うかという経営層の意識調査をやったことがある。調査方法は公開できないが、概念的な話ではなく、個別の失敗プロジェクトに対して、バイネームを伏せてインタビューをするという方法をとった。
すると、プロジェクトマネジャーに責任があるというプロジェクトが2割強だったのに対して、プロジェクトスポンサーに責任があるというプロジェクトは5割を超えていた(残り2割がPMO他)。組織(経営層)はプロジェクトスポンサーに全権委譲しているといってもよいだろう。
何を期待しているかというと、プロジェクトマネジャーがうまくプロジェクトを進めてくれるための支援を期待している。つまり、
・障害を取り除く
・境界を管理する
・指導する
といった活動である。具体的には、「障害と取り除く」では、
・プロジェクトリーダーやチームメンバーのコントロールできない障害を取り除く
(メンバーをサポートしないマネジャー、リソースの問題、チームメンバーの可用性、ツールや設備の不足など)
というのが圧倒的に多い。「境界を管理する」では、
・チームの進行に対する役員、マネジャー、専門家の干渉や衝突を防ぐ
・これらのステークホルダとの不必要なやり取り、不必要な報告からチームを守る
・チームが合意したミッションや契約に基づきチームに活動させる
といったことが考えられる。さらに、「指導する」では、
・プロジェクトリーダーの信用を高める
・プロジェクトリーダーがプロジェクトが関連するビジネス全体の情況を理解することを支援する
・プロジェクトリーダーのリーダーシップと問題解決のスキルを改善する
などが考えられる。
◆上位組織への売り込み
三番目はプロジェクトの活動を上位組織に売り込むことである。売り込むといっても、プロジェクトがしっかりと実施されていることをアピールすることであり、中でも、制約をきちんと理解してもらう、自分自身でコントロールできない問題をエスカレーションするなどすることによって、上位組織を巻き込み、理解させ、実績を売り込むスタンスが重要である。
・チーム結成の前に、部長会に計画されたミッション、メンバーへの要望、プロジェクトへの制約を説明する
・プロジェクト開始後は、定期的にプロジェクトの状況を報告し、自身のコントロールできない問題の解決を依頼する
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