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2011年4月11日 (月)

【PMstyle Kit No.5】プロジェクトの目標《一般》

【目的】組織としてのプロジェクトのゴール(目的)を熟議する

【用途】目的から計画への落とし込みの適切さの保証

【効用】プロジェクトの目標が適切に設定され、プロジェクトのシナリオが明確になる。また、チームビルディングの一助になる。

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◆プロジェクトの目標を述べた最高の例

第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディの行った有名な演説の一つに、1961年5月25日にアメリカ連邦議会特別両院合同会議で行った、

"I believe that this nation should commit itself to achieving the goal, before this decade is out, of landing a man on the moon and returning him safely to the Earth" (10年以内に人間を月に着陸させ、安全に地球に帰還させる)

という演説がある。アポロ11号による人類初の月面着陸のスタートとして、非常に有名な演説である。そして、この演説には、

"$531 million in fiscal '62 and $7 billion to $9 billion during the next five years"(62年は531千万ドル、5年間で70~90億ドル)

というくだりがある。このステートメントは、プロジェクトの目標を述べた最高の例としてプロジェクトマネジメントの話によく登場し、一般にもよく知られる。


◆プロジェクト目標の記述方法

プロジェクトの目標(オブジェクティブ、あるいは、ミッション)は、シンプルな、短いプロジェクトについて記載したステートメントである。プロジェクトスポンサー、顧客、ステークホルダによって草案され、プロジェクトリーダーがまとめるのが一般的である。

よく知られているように、プロジェクトの目標は、

・デリバブルズ(スコープ)
・デッドライン(スケジュール)
・投資(コスト)

の3つの要素からなる。

プロジェクトの目標を記載するに当たってはよく言われる注意点は以下のようなものである。

・25ワード程度に収めること(英語で、Twitterを例にとれば50文字くらいか?)
・情報を言葉に置き換えること
・プロジェクトの本質を簡潔に記述していること
・専門用語、略語、慣用表現などの誤解のもとになる言葉を使わないこと
・成果物をすべてのステークホルダが理解できる普通の言葉で書くこと
・明確な時期を示すこと
・可能な限り、リソースの特定をすること


◆プロジェクトの本質とは何か

ジョン・ケネディーの宇宙開発への演説は、これらの要素をクリアしている。この中で、もっとも、難しいのはプロジェクトの本質である。

ジョン・ケネディーの演説の背景には、当時、冷戦状態だったソ連との宇宙開発競争がある。

ソ連は、1957年10月4日の初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げ、さらに、1961年4月にはウ゛ォストーク1号で初の有人地球周回飛行を行います。いずれも米国に先駆けて行われたものだ。

冒頭のケネディーの演説は、ソ連の有人地球周回飛行の直後に行われたものだ。

このような状況で、プロジェクトの本質とは、ソ連に勝つという目的だ。

ソ連に勝つには、初の月面着陸しかない。そこで、簡潔、かつ、ストレートに、10年以内に月に降りるという目標を掲げている。

実際に、1969年7月20日、このスピーチからわずか8年後には、月面着陸を達成している。残念ながら、ジョン・ケネディは暗殺され、それを見届けることはなかったが、このような結果を伴ったことが、ジョン・ケネディの目標の提示が素晴らしいと言われる一因になっている。


◆プロジェクト目標の記述により、目的に対する熟考が行われる

プロジェクト目標は、単に上位組織からの指示の確認ではないことに注意しておく必要がある。たとえば、プロジェクト憲章に

・顧客満足を達成し、顧客ロイヤリティを獲得する

という目的が定義されているとしよう。そこで、

「顧客満足を達成する」

といった抽象的な目標を設定しているプロジェクトが少なくない。また、顧客満足度測定のシステム(仕組み)を整えている組織では、

「顧客満足度レベル4以上を獲得する」

という目標を設定したりする。

これは、いずれも好ましくない。まず、前者は論外だ。目標になっていないことは説明する必要もないだろう。問題は後者だ。

一見、合理的に目標設定がされているように見えるが、結果を言っているだけであって、目標だとはいえない。プロジェクトの本質とは、目的を実現するにはどのような目標を達成すればよいかというごく当たり前の話だ。

たとえば、

・スケジュール(納期)は顧客要望通りでいいのか
・要求の分析と取扱いは
・品質レベルは

といったことを目標として設定しなくてはならないわけだ。上位組織の目的から、このような目標を決める過程で、当然、その納期、品質レベルで顧客は満足するのかという議論になるし、また、そこにコストの議論も出でくる。

つまり、上位組織とプロジェクトの目的について熟議する過程がプロジェクトの目標を決める過程にほかならない。

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