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イノベーションリーダーの質問力のシリーズが途中で止まってしまっているが、このような質問を生み出すときに欠かせないのがコンセプチュアルスキルである。
そこで並行してコンセプチュアルスキルについて考えてみたい。一部の議論はイノベーティブリーダーの思考法の中でしているが、改めて別の枠組みで考えてみる。第14話で、
第14話 イノベーティブ・リーダーの思考法(6)~抽象と具象の行き来
という記事を書いたが、この記事に拡張と深掘りだと考えて戴ければよい。
この記事では抽象と具象の行き来から、経験を新しい場面に活用するという趣旨であった。この場合のコンセプチュアルスキルは抽象と具象の行き来ということになる。
これも含めてコンセプチュアルスキルは以下の5つの要素について、両極を行き来するスキルである。
(1)抽象的/具象的
(2)主観的/客観的
(3)直観的/論理的
(4)大局的/分析的
(5)長期的/短期的
それぞれの軸の意味は以下の通りである。
◆5つの軸の意味
(1)抽象的/具象的
現実の現象を抽象化し、抽象的に思考(問題解決や意思決定)を行い、その結果を複数の具体的な事象や行動に落とし込むことにより、現象からは直接得にくい結論を得ることができる。
(2)主観的/客観的
自身の価値感に基づき思考を行い、その結果について第三者的な視点から妥当性を検証・調整する。この繰り返しにより、誰もが共感できる結論を得ることができる。
(3)直観的/論理的
直観的に判断をした結果に対して論理的根拠を構成し、論理で得られた結果の妥当性を直感的に判断する。この繰り返しにより、不確実性のある中で合理性のある結論を得ることができる。
(4)大局的/分析的
イメージで大雑把に物事を捉えた上で、そのイメージを定量的に説明することによりイメージを明確にする。これを繰り返しながら、イメージレベルの思考を行い、結論を出すことができる。
(5)長期的/短期的
長期スパンの思考と短期スパンの思考を相互に繰り返し、それぞれの結果を統合し、短長期のいずれにおいても最適な結論を得ることができる。
◆電話を抽象化し、必要な機能を組み合わせる
では、なぜ、この5つなのか。iPhoneを例にとって説明してみよう。
iPhoneが発表されるときにジョブズが宣言したのは電話を再発明したということだった。これはどういうことか。電話は声によるコミュニケーションのツールであり、加えて、携帯電話ではメールによるコミュニケーションのツールだった。
ジョブズが創ろうとしたものはこれらを超えるコミュニケーションのツールだった。このため、新しい電話の在り方を考えるのに、パーソナルコミュニケーションのルーツまで抽象化した。これがコンセプトになる。
そして、このコンセプトに必要な具体的な機能をいろいろと模索した。その結果、一つ一つの機能をみればiPhoneが最初というものはほとんどないがが、全体(機能の組み合わせ)としては画期的なものになった。
◆主観と直観で他社が追従できないデザインを生み出す
ここで注目されるのは発売後7年近く経っているのに未だに他社が追従できないようなデザイン、アプリケーションをすべて切り離したスタイルなどのiPhoneの画期的特徴がどうして生まれたかという点だ。
ジョブスものやアップルものをから分かる範囲だが、まず、デザインについては自分の主張を徹底的にエンジニアにぶつけている。エンジニアが作ったものに対して、自分で使ってみて、要求を突き付ける。この繰り返しだった。これは、ジョブズの主観による要求をエンジニアの客観的に評価し、それにジョブズがまた主観をぶつけることにより、主観と客観の行き来をしていると解釈できる。
この中でジョブズは直観的で欲しいものを考えており、エンジニアはそれを論理的に考え、合理性があるものを実現していった。これによりジョブズの直観をエンジニアが論理的に実現するということをしていたわけだ。
◆ジョブズのイメージを分析し、製品の方向性を決める
全体を通じて言えるは、ジョブズのイメージをエンジニアが分析し、製品の形を作っていたことだ。
つまり、パーソナルコミュニケーションのツールはどうあるべきだというイメージがあり、エンジニアがその実現方法を考えながら、イメージを徐々に明確にしていったものと思われる。ここでは大局と分析の行き来をしている。
その中で、上に述べたようなジョブズの要求や直観的な良し悪しを取り入れているのだ。
◆OSとアプリを分け、長期的な環境の進化を吸収する
さらに興味深いのは、なぜOSとアプリという形をとったかだ。そこには通信を始めとするいくつかのコア技術のロードマップがあったものと思われる。ジョブズの頭の中には全体のイメージ(ビジョン)があり、それを何世代かで実現するロードマップもあったのだろう。
その中で、では直近のバージョンで最高のものを提供しようとすると、OSのアップグレードはメーカーがコントロールすればよいが、アプリケーションは解放し、ベンダーが自由なタイミングで提供できるようにした方が合理的である。これがアプリケーションにした理由だと思われる。
つまり、短期的視点と長期的視点で考えて、両方で最高のものを提供する方法としてアプリという方法を選んだものと思われる。
同時にインタフェースなどのデザインを決め、全体のイメージをつくり、開発者と共有した上で、アプリを作らせるというところでも大局と分析の行き来をしているわけだ。
このようにジョブズは自身とエンジニアのチームをうまく使って、5つの軸の行き来を実行し、iPhoneという画期的なイノベーションを実現した。
◆あなたのコンセプチュアルスキルは
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◆はじめに
前回は、製品の感情的な問題についての質問を考えた。これまでに製品について考えた質問は
(1)新しいトレンドをどうすれば利用できるか
(2)顧客の煩わしさを取り除き、ユニークなベネフィットを与えるにはどうすればよいか
(3)私たちの製品によって顧客はどのような感情的、精神的、立場的なベネフィットが得られるか
(4)私の製品のどんな機能が顧客の情熱をかきたてているのか
の4つだ。
今回は、イノベーションについてもっとも本質な組み合せの問題について考えてみよう。
◆製品と流通の関係を変える
イノベーションに関する思いこみで意外と気づかないが、気づくとインパクトがあるのは流通に関する思い込みだろう。製品の単位は意外と流通に制約されていることが多いからだ。
たとえば、アップルがスティーブ・ジョブズが復帰して、復活ののろしとなったのは、その使命を終えて終了が宣言されたiPodという音楽プレイヤーだ。iPodの成功要因の中で必ずでてくるのが、iTunesという音楽ストアである。
それまで音楽はCDなどのメディアに、複数の楽曲を入れて販売されていた。流通やライセンスを考える限り、この方法しか方法はないと考えられていた。
ところが、ジョブズは複数の有力レーベルを説得し、楽曲をオンラインで、しかも1曲単位で売ることに成功した。それによって、これまでCDで購入したり、レンタルで借りて、好きな曲だけを録音していたユーザをiPodの世界に取り込むことに成功した。
そしてそのユーザは、それからずっとiTunesから音楽を買い続けるので、コンテンツがアップルの収益源の一つになった。
この成功はジョブズの成功ストーリーの中でもっともインパクトのあるものだと思う。
同じ発想で、ついにはコンピュータ(スマートフォン)の売り方も変えてしまった。ハードウエアとアプリケーションをバラバラにして、アプリケーションはネットから買うようにしてしまった。
◆組み合わせに関する質問
この事例から分かるように、イノベーションにおいて、製品についてすべき質問の一つは、
(5)製品の構成要素を組み替えることによって、新しい顧客を生む製品を創れるか
という質問である。
今のところこのようなイノベーションに取り組んでいるのは、iTunesのようにコンテンツビジネスが圧倒的に多いが、モノでもないわけではない。一つ例を挙げれば、自転車がある。
自転車は比較的標準化が進んでいる業界で、アセットメーカとパーツメーカが対等な関係にある業界だが、自社で開発したブリジストンのようにアセットもパーツもやり、それぞれに別の顧客価値を生み出している企業もある。
このような発想を得ようと思えば、(5)の質問が有効で、具体的には
・あなたは製品をまるごと販売すべきだと思っていないか
・あなたの製品の部品、あるいは部品の組み合わせで提供できないか
といった質問を考えてみるといいだろう。
◆関連セミナー
PMstyleでは、イノベーティブ・リーダーの質問力を向上させる目的のセミナーを実施します。
━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆イノベーティブ・リーダーの質問力
~問いから始まるイノベーションの生み出し方 ◆7PDU's
日時:2014年 08月 26日(火) 10:00-18:00(9:40受付開始)
場所:国際ファッションセンター(東京都墨田区)
講師:好川哲人(エムアンドティ・コンサルティング)
詳細・お申込 http://pmstyle.biz/smn/inquiry.htm
主催 プロジェクトマネジメントオフィス
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【カリキュラム】
1.質問がイノベーションを生む
2.誰に質問するのか
3.質問の構造と技術
4.イノベーションを生む質問
(1)思い込みや常識を覆す質問をする
(2)挑発的な質問をする
(3)破壊的な質問をする
(4)コンセプトを革新する質問をする
5.質問力を養うには
6.質問を行う場のデザイン
7.質問ストーミング(ワークショップ)
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◆機能によるユニークなベネフィットは現実的には難しい
前回に続き、製品に関する質問について考えていく。前回は、
(1)新しいトレンドをどうすれば利用できるか
(2)顧客の煩わしさを取り除き、ユニークなベネフィットを与えるにはどうすればよいか
の2つの質問について考えた。3つ目の質問は
(3)私たちの製品によって顧客はどのような感情的、精神的、立場的なベネフィットが得られるか
というものだ。多くの製品は前回の(2)の質問に答えられなくては存在意義がない。だた、(2)だけでは不十分であることも確かだ。多くの競合製品は(2)において同等な答えを準備しているからだ。
◆iPhoneにみる感情的なベネフィット
この場合に(3)の質問の意味が出てくる。このもっとも典型的なパターンはiPhoneであろう。iPhoneは初期において(2)に質問に対してすばらしい答えを提供したのはいうまでもない。しかし、発売より5年経った今、(2)だけで突出した存在であるとは言い難くなっている。しかし、いまだにスマートフォンの代名詞になってるのは、単に「元祖」というだけの理由ではなく、(3)の質問に対してすばらしい答えを提供しているからに他ならない。
たとえば、発売日の1週間前からアップルストアに並ぶ客がいる。これは、iPhoneを持つことによって誇らしい気分になると同時に、それが一種のステータスシンボルになるからだ。とくに今回のゴールドカラーのように、見た目が新しい機種を持つというのはステータスシンボルになる。iPhoneのユーザーはこのようなことをベネフィットと感じるというわけだ。
◆顧客とのつながりを創造する
実際に(3)がイノベーションにとって有効な切り口になることは多い。具体的にいえば、アップルがそうであるように顧客とのつながりを創造しているわけだ。このつながりの創造というのがビジネスモデルとして新しいビジネスモデルで、多くの一流企業が取り組んでいるイノベーションである。
もっと重要なことは、そのつながりを通じて顧客のニーズや要望を反映できる形にあることだ。
さらには感情的な結びつきが顧客と製品の間にあるかどうかも重要である。企業のファンの第一歩は顧客と製品の感情的な結びつきである。
◆顧客の情熱をかきたてる
もう一つ、考えるべき質問を示しておく。それは、感情的な結びつきに近いものだが、
(4)私の製品のどんな機能が顧客の情熱をかきたてているのか
と言う質問である。これはイノベーションを考えるに当たって極めて重要な質問である。
◆Thinkpadという製品
著者はレノボのThinkpadというパソコンのユーザーである。Windows98が登場するまではMacintoshを使っていたが、仕事で使いにくくなったので、Windowsパソコンに乗り換え、Thinkpadを使っているので、ファンといってよいと思う。Thinkpadでならなくてはならない理由がある。それは、トラックポイントというキーボードの中にあるポインティングデバイスである。これを使い出すと、トラックパッドは不自由でしかたない。この機能がThinkpadというパソコンへの情熱をかきたてている。
ちなみにThinkpadというのはコンサルタントなど、プロフェッショナルな仕事をする人のステータスシンボル的な製品でもあり、感情的、立場的なベネフィットをもたらしている製品でもある。
IBMからパソコン事業を買ったレノボは非常に創造的な展開をしている。自由な姿勢をとれるPCとか、20インチのタブレットとか、さまざまな可能性を提案しているが、Thinkpadのラインは触っておらず、従来のプロ仕様というコンセプトの中で発展をさせている。レノボは顧客の情熱をかきたてる機能は宝であり、それを将来的の製品に残していくことの重要性をよく分かっているといえよう。
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◆「誰に」の次に「何を」
第22話から第24話まで「誰に」に関する質問について考えた。一番最初に述べたようにイノベーションにおいてこの質問がもっとも重要な質問である。
イノベーションではついつい、製品を決めてからどこに売るかを決めているケースが多いが、これではうまく行かないというのが共通認識になりつつある。
最近有効性が注目されるようになってきた「リーン・スタートアップ」でも、まず、最初に顧客発見のステップがあることからも分かるように、まず、「誰に」なのだ。そして、それらの顧客が「何を」、つまりどのような製品を求めるかを考えていく。
ということで、今回からは「何を」に関する質問について考えていきたい。
◆中核価値を固定しない
「何を」を考える際の一番のポイントは製品の価値にある。
第22話でマスキング テープのユーザーイノベーションの事例を紹介したが、マスキングテープは枯れた製品であり、塗装において余計なところに色を付けないことに価値があった。 しかし、雑貨の梱包用のリボンとして20億の市場ができた。このように枯れた製品ですら、その中核価値が変わる可能性がある。そして、中核的価値を決め打 ちしていたマスキングテープのメーカーは商機を逃した。
イノベーションのように新しい製品を生み出す際には、中核的な価値を決め打ちすることは決して賢いことではない。上に述べたまず、製品を考えると同じ誘惑から生じる落とし穴である。
イノベーションにおいては、むしろ、製品をライフサイクルの中でどのような価値を持つものに進化、発展さえていくかという発想を持つ必要がある。
「何を」に関する質問を考えるに当たってはこの点をよく認識しておかなくてはならない。以上のような前提で、「何を」に関する質問を考えていく。
◆新しいトレンドを利用する方法を考える質問
まず、最初の質問は、自分たちの製品やサービスに新しいトレンドを取り入れ、新しいものにするという観点からの質問である。
(1)新しいトレンドをどうすれば利用できるか
こ の質問を考えるには、まず、製品のイノベーション、技術のイノベーション、顧客行動の変化の予兆としてどのような傾向を掴んでいたかということを考えてみ るとよい。大きな変化は目につきやすいが、その変化が本質的にどのようなものであるかは変化の予兆に現れることが多い。
ここで重要なこと は、製品そのものや技術の変化についてはその分野の問題であるが、トレンドについては必ずしもその分野で現れるとは限らない。たとえば、この10年くらい のトレンドの一つにデザインのシンプル化というトレンドがあるが、これはもともと、家電で生まれた動きがさまざまな分野に広まっていったものである。イノ ベーションのアイデアを求めてトレンドに注目する際には、他の分野のトレンドに注目し、複数の分野で見られるトレンドは自分たちの分野にもやってくると考 えるのがよいだろう。
◆顧客の煩わしさを取り除く
次に、顧客視点からの製品に関する質問である。これは、顧客の煩わしさを取り除くことと新しい価値を提供することに集約される。つまり、
(2)顧客の煩わしさを取り除き、ユニークな恩恵を与えるにはどうすればよいか
といった質問をかんがえてみるのがよい。よく顧客の声を聞くといってユーザーの望むものを聞きだし、それを製品に組み込んでいくことがある。このやり方の中で欠かしてはならないことは、顧客の具体的な要求を聞くだけではなく、顧客の要求を抽象化することである。
たとえば、テレビの録画予約の機能の本質を考えてみてほしい。録画して自由な時間に見れること、保管しておいて繰り返し見れること、といったことが思い浮かぶ。後者は予約機能がなくでもできるが、前者のニーズが生まれたときに、どのようなことが起こったのだろうか。
働き方が多様化し、同じ時間にテレビを見ることが難しくなったのか。テレビ以外の娯楽が増え、テレビの優先順位が下がり、テレビに合せて行動することが少なくなったのかもしれない。
いずれにしてもこの問題の本質はテレビの放送と、視聴を非同期にしたいところにあるようだ。
つまり、テレビの放映時間に合せてテレビを見ることが煩わしいわけだ。そこで、その煩わしさを取り除くために考えられたのが予約録画という機能である。もちろん、背景には録画媒体のコストイノベーションがあるわけだ。
このままでは、コスト競争にまっしぐらになる。そこで、考えるべきことは「ユニーク」さである。この煩わしさを取り除く、ユニークは方法はないか。そこで生まれたのが、予約ではなく、放送をそのまま録画してしまうとうイノベーションである。
こ のイノベーションが画期的なのは、これまではリアルタイムで見るにしろ、録画してみるにしろ、事前に何を見るかを決めておかなくてはならないことだった。 ところが、すべての放送をそのまま録画する方式だと、あとで見る番組を決めることができる。たとえば、会社で話題になったので、見てみようといったことが できるわけだ。
つまり、事前に見る番組を決めるという煩わしさからもユーザーを解放している。
このようなユニークさによって、差別化し、競合に勝つことができるイノベーションになる。
◆シンプルというユニークさ
この点についてもう一つ考えておくべきなのは、ではそのようなアイデアに対して競合はどのように反応するかだ。ここまで織り込んだ製品のデザインによって、競争力のある製品を開発することができる。
こ の点で一つ考えてみてほしいことがある。それは、シンプルにするという対応である。競合は対応しにくくするということを考えた場合、シンプルにすることに 勝る戦略はない。新しい機能をどんどんつけていってもそれはいたちごっこで、すぐに競合はもっとユーザに訴求できる機能を持つ製品を出してくる。ユーザー もそれを求める。
しかし、シンプルを打ち出すと、競合はマネができない。この点をよく考えてみる必要がある。
◆連載関連セミナー
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◆将来の顧客
前回は現在の顧客に焦点を当て、求めているものを考え、イノベーションに結び付けていく質問について述べた。今回は、「未来の顧客」について考える。つまり、
【2】将来購入する可能性のある人(見込み客、ファン)
である。
◆顧客セグメントに関する質問
まずは、セグメントに対する質問である。こんな質問を考えてみるといいだろう。
(1)今は存在しないが、今後5年以内に新しく生まれそうなセグメントはどのようなものか?
こ の質問について考えるには、まず、あなたが製品やサービスを提供している分野で過去5年にセグメントがどう変わったかを考えてみると有効である。たとえ ば、嘘みたいな話だが、5年前に携帯電話をPCの代わりにしたいと考える顧客セグメントはなかった。スマートフォンの発展で急速に生まれてきたセグメント だ。
次に、あなたの会社の顧客層はこれから5年でどう変わるかを考えてみよう。新しく顧客になってくれそうな人たちはどのような人たちか。去っていくだろう顧客層はどんな人たちかを考えてみる。
さらに、そのように考えてみたときに、5年後に顧客になってくれそうな人たちは、いま、どのようなものに夢中になっているかを考えてみる。すると、新しいセグメントが見えてくる。
◆5年後の顧客の特定と確保
ここまで来たら、次に考えるべき質問は
(2)どのようにして5年後の顧客を特定し、確保するか
という質問だ。この質問は難しいが、ヒントになるのは顧客の行動である。まず、あなたの新しい顧客がこれから5年間、何に時間を使うかを考えてみてほしい。
また、どのようなメディアによって生活や仕事に必要な情報を手にいれようとするか。
例えば、5年前に戻ってfacebookを考えてみてほしい。当時、大学生の玩具だと言われたシステムに夢中になり、コミュニケーションの中心に置いている人は多い。facebookに変わるものを見つければいいわけだ。
◆イノベーションの方向性
そして、最後は彼らに何を提供すればよいかが分かれば、イノベーションの方向性は決まる。つまり、
(3)将来の顧客は何を基準にしてあなたから製品を購入するか
という質問を考えればよい。この質問を考えるには、以下のようなことを考えると効果的だろう。
・あなたの将来の顧客の生活や仕事はどのように変化していくのだろう
・生活や仕事の変化により購入するものやサービスはどのように変わっていくのだろう
・逆に生活や仕事の変化により購入しなくなるものはどのようなものだろうか
◆もう一つの質問
で終わりにしようと思っていたのだが、この問題にはもう少し、別の側面があることに気付いた。それは、提供者がすべての顧客に対して自分たちの商品を売りたいとは思わないということだ。
たとえば、研修を例に挙げると、先方は研修の効果で自分たちの問題が解決すると考える。確かにそれは適切な判断なのだが、その前に別のことをしなくては研修の効果がでないだろうと思うことが時々ある。
そうすると、こんな質問も考えてみた方がよい。
(4)今は私たちの製品を買ってほしくないが、将来的に買って欲しい人は誰か
という質問だ。
◆顧客の方が正しいこともある
なぜ、これがイノベーションに結び付くかというとユーザーイノベーションの例と同様に、、顧客の方が正しいことがあるからだ。
具 体的な例を一つ上げると、ある会社は全然社内コミュニケーションが取れず、社内の規律もなく、それがしばしば問題を引き起こしていた。それでコミュニケー ションマネジメントの手法があるPMBOK(R)という手法の導入をしようと考えた。規律のないところに標準手法を入れても効果はないだろうと思って断ろ うとしたが、彼らは手法の導入プロセスを使って社内の規律を確立していきたいと言い出した。手法そのものが自分たちの組織に合うとは思わないというのだ。
それでこのチャレンジは成功したのだが、PMBOK(R)を導入することによって社内の規律とコミュニケーションを向上させるというのは新しいサービスになった。
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◆キラー質問研究会
イノベーションイニシアティブでは、良い質問を集める
「キラークエスション研究会」
を発足します。これまでの経験の中で、良い質問だったなと思うものを出し合い、共有しようというオンライン研究会です。
趣旨に賛同戴ける方は、ぜひ、ご参加ください。こちらのfacebookグループです。
https://www.facebook.com/groups/607965929242093/
◆参考資料
フィル・マッキニー(小坂恵理訳)「キラー・クエスチョン 常識の壁を超え、イノベーションを生み出す質問のシステム」、阪急コミュニケーションズ(2013)
◆前回の復習
前回はユーザを
【1】購入している人(顧客)
【2】将来購入する可能性のある人(見込み客、ファン)
【3】購入できるが、購入していない人(見込み客、ファン、など)
の3つに分け、【1】に対する質問として、
(1)私には思いもよらなかった方法で製品を使っているのは誰か。それはどういう使い方か。
という質問を取り上げた。この質問の本質は、顧客にとって製品の本質は問題解決であるということである。
◆製品を選ぶ基準
そこで、【1】の二番目の質問として次の質問を考えてみる。
(2)顧客が私たちの製品を選ぶときの基準はなにか
この質問のポイントは、
・あなたの基準と顧客の基準が合致しているか
・あなたはどちらの基準で製品を設計しているか
・顧客の言動は一致しているか
などである。これらのポイントを考えることは、イノベーションにどのように取り組めばよいかのヒントになるだろう。
◆顧客のニーズへのこだわり
次の質問に移ろう。次は、顧客の欲しいものについてどう考えているかを問う質問で、
(3)顧客が欲しいとあなたが信じているものはどのようなものか
で ある。この質問も重要だ。仮にあなたが顧客が欲しいものを理解していても、それをどのように実現したいかは別の話である。たとえば、顧客が業務の生産性を 上げたいとする。これが欲しいものだ。これに対して、あなたがITベンダーだったとすると、ITを活動した生産性の向上をイメージするし、提案するだろ う。
しかし、実際には違うかもしれない。顧客は従業員の生産性を画期的に向上するパフォーマンス向上のトレーニングをしたいと思っている かもしれない。このように自分たちにこだわりがあるところではしばしば思い込みが発生するが、思い込みを捨てるとそこに、自分たちの今やっていることを顧 客のニーズに併せていくイノベーションのテーマがあるかもしれない。たとえば、ITを活用した画期的なワークプレースラーニングを行うなど。
も う一つこの質問から気づくべきことがある。それは、顧客は誰かという問題だ。顧客が一人の場合と複数の場合では、「欲しいもの」の意味が違ってくる。複数 の場合には、複数の顧客が同じニーズを持っているかが問題になるし、実現方法の選択プロセスも考慮しなくてはならない。
また、複数の顧客に対しては、ニーズの優先度のつけ方が問題になってくる。これらの問題はイノベーションのテーマの選定に大きな影響を与えるだろう。
◆感情に関する質問
さらに、既存の顧客に対しては、あと2つ考えるべき質問がある。感情に関する質問である。
(4)自分たちの製品に熱中してくれているのは誰か
(5)自分たちの製品に不満を持っているのは誰か
どんなイノベーションにも共通していえることは、成功に感情的要因が絡むことである。感情的に受け入れられない製品やサービスはおそらくそれが画期的なものであってもうまくいかない。画期的であることに気づかず、やがて埋もれているだろう。
したがって、感情に関する要素、たとえばこの製品がないと生きていけないとか、この製品は便利であるを超えて感謝するといった感情の芽生えを知ることはイノベーションを成功させるために大きな意味があることだ。逆に、マイナスの感情について知ることも意味がある。
以上の5つが、イノベーションのために、【1】のすでに購入している人に対する質問として効果的な質問である。
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◆イノベーションにとってもっとも重要な質問は?
一昔前ならイノベーションは、
「この技術で何ができるか」
「この技術がもたらすインパクトは何か」
といった質問から始まっていた。技術が主役だったわけだが、今はイノベーションの主役は技術ではない。では、技術に変わる主役は何か。顧客であり、ユーザーである。その意味で、イノベーションにとってもっとも重要な質問は「誰」という質問だ。
ここで言っているユーザーとは、顧客だけはなく
顧客、見込み客、ブランドのファン、パートナー、従業員、インフルエンサー
など自分たちとの交流を持つ人すべてを指している。これはアーロン・シャピロによる定義である。
アーロン・シャピロ(萩原 雅之監訳、梶原 健司、伊藤 富雄訳)「USERS 顧客主義の終焉と企業の命運を左右する7つの戦略」、翔泳社(2013)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798130923/opc-22/ref=nosim
◆質問の対象を分ける
質問の方法はいろいろあるが、もっともシンプルな方法は、ユーザーを
【1】購入している人(顧客)
【2】将来購入する可能性のある人(見込み客、ファン)
【3】購入できるが、購入していない人(見込み客、ファン、など)
の3つに分けて考えることである。
◆リードユーザーを発見する質問
まず、【1】から考えてみよう。【1】からイノベーションのヒントを得るということは、リードユーザーとして機能してもらうということで、まず、考えられる質問は
(1)私には思いもよらなかった方法で製品を使っているのは誰か。それはどういう使い方か。
という質問である。この質問から以下のようなアイデアが得られる可能性がある。
・顧客の問題に対する思い込みがないか
・顧客に用途など一切の制約なしに製品を提供する方法はないか
・製品の使い方を観察する方法はないか
などだ。
◆マスキングテープの事例
こ の質問からイノベーションが起こった代表的な例に、マスキングテープを日用品に使った例がある。マスキングテープは建設現場などで塗装を行うときに色を塗 らない部分を保護するために使われるテープである。塗装が終わればはがさなくてはならないため、目立つような色には目立つものが使われていることが特徴 だ。
これに目をつけて別の用途を考えた消費者がいた。カフェをやっている女性が、カフェで顧客が購入した本や小物を紙の袋にいれて、マス キングテープで留めるようにした。顧客の中には、購入し、お茶を飲みながら開封し、また片づけて持ち帰るという人もおり、きれいに剥がし、再び張ることが できる点でも便利だった。他にも店内にポップなどを張ったりするにも色の豊富さを活かして楽しさが演出できた。
このような人が集まり、 「Masking Tape Guide Book」という本をつくり、マスキングテープのメーカに送ったが、どの会社も無視する中で興味を持った会社がかも井という会社だった。そして、かも井は 雑貨としてのマスキング事業を始め、20億の市場を独占している。このあたりから、テレビなどでも話題として取り上げられているので、ご存じの方も多いと 思う。
雑貨用のマスキングテープの20億の市場は、顧客ニーズの思い込みを捨てたことによって生まれたわけだ。まさに、質問の威力である。
※かも井の事例は以下の本を参考にしています。
小川 進「ユーザーイノベーション: 消費者から始まるものづくりの未来」、東洋経済新報社(2013)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492533354/opc-22/ref=nosim
◆イノベーティブ・リーダーとしての質問力をつけるセミナー
PMstyleでは、イノベーティブ・リーダーの質問力を向上させる目的のセミナーを実施します。
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◆イノベーティブ・リーダーの質問力
~問いから始まるイノベーションの生み出し方◆(7PDU's)
日時:2014年2月21日(土)10:00-18:00(9:40受付開始)
場所:ヴィラフォンテーヌ汐留コンファレンスセンター(東京都港区)
講師:好川哲人(エム・アンド・ティ コンサルティング代表)
詳細・お申込 http://pmstyle.biz/smn/inquiry.htm
主催: 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
【カリキュラム】
1.質問がイノベーションを生む
2.誰に質問するのか
3.質問の構造と技術
4.イノベーションを生む質問
(1)思い込みや常識を覆す質問をする
(2)挑発的な質問をする
(3)破壊的な質問をする
(4)コンセプトを革新する質問をする
5.質問力を養うには
6.質問を行う場のデザイン
7.質問ストーミング(ワークショップ)
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◆創造性を解放する
前回は、思い込みや暗黙の前提を打ち破る質問について考えてみた。
スタンフォード大学で、プロダクトデザインの名物講座を持つジェイムズ・アダムス教授は、人間は生まれつき創造力を持っているが発揮できない。その理由は、知覚、感情、文化、環境、知性、表現などのさまざまな心理的障壁であり、それを取り除いてやれば創造力は自然に発揮されるようになるということで、障壁を取り除くさまざまな方法を紹介した本を書いた。
「メンタル・ブロックバスター―知覚、感情、文化、環境、知性、表現」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4833420430/opc-22/ref=nosim
という本だ。この中でも質問が使われている。興味がある人はぜひ、読んでみてほしい。
イノベーションに質問を使う基本的な目的の2つ目は問題発見だ。
◆メンタリング的質問
ということで、今回から問題発見によりイノベーションを生み出すことをテーマに質問を考えてみたいと思う。問題は自分や自組織がバリアになっているわけではないが、意外と簡単に気づきに結びつくことがある。
コンサルタントはこのような質問を発する立場になることが多いが、ポイントは徹底的に突っ込むことである。前回の思い込みや暗黙の前提を破ることは最終的には本人や組織としての気づきの問題であるので、コーチング的な気づきを誘発する質問アプローチが効果的である。
これに対して、イノベーションのための問題発見は問題の視点を質問で与えることが重要である。コーチングとの対比でいえば、メンタリング的な質問が効果的である
◆イノベーションに結びつく問題のカテゴリー
最初にイノベーションに結び付く問題のカテゴリーを考えてみよう。思いつくままに上げていくと、
・動向(技術、業界、経済)
・製品やサービス
・価格
・顧客や市場
・物流などのプロセス
・マネジメント
といったものが考えられる。それぞれについて問題をあぶりだす質問を考えてみよう。
◆動向に対する質問
動向にはいろいろとある。以前であればイノベーションのチャンスになるのは圧倒的に技術動向が多かったが、今は、むしろ、業界の動向がチャンスになることが多い。特に、ビジネスモデルである。
そこで、動向を背景にした問題に対する質問としては例えば以下のようなものが考えられる。
・我々のビジネスモデルを根本的に崩壊させる業界動向はどのようなものか
・我々のビジネスモデルを根本的に崩壊させる経済動向はどのようなものか
・我々のビジネスモデルを根本的に崩壊させる技術動向はどのようなものか
◆回答のシミュレーション
質問のイメージを掴んでもらうために、回答のシミュレーションをしてみよう。
時 計を巻き戻し10年前の書籍販売(本屋)のビジネスを考えてみると、本屋以外の競合の増加と、ネットワーク販売の増加だ。特に雑誌とコミックスはコンビニ が競合になってきた。経済的な動向としてはデフレで、本が売れなくなってきた。技術的な動向としては、ネットワーク販売の技術が確立されてきたことと、電 子書籍が出てきたことがあげられるだろう。
このような質問への答えを切り口にして、では、本屋がネットワーク販売に勝つにはどのようなビジネスモデルを作ればよいのかという問題解決のテーマが決まる。あるいは、電子書籍に対してどのような取り組みをするかという課題としてテーマが見つかる場合もある。
◆別の質問
あるいは、こんな質問も考えられる。
・1年後に自分たちが新しい動きに乗っていないとすれば、その原因はなんだろう
こ の質問に答えることによって、自分たちが抱えている問題が明確になる。例えば、ネットワーク販売に勝つには、自らがネットワーク販売を手掛けるしかないと 考えたとしよう。新しい動きにのっていくわけだ。ところが、この方向性が取りにくいのは物流費にある。この問題をどうするか。
たとえば、地場の書店同士のアライアンスを組んではどうだろう。ということで、イノベーションのための課題が絞り込まれてくる。
このような思考や活動の切り口になり、かつ、触媒になるのは質問である。
製品やサービス以降の質問については次回にする。
◆イノベーティブ・リーダーとしての質問力をつけるセミナー
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◆イノベーティブ・リーダーの質問力
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1.質問がイノベーションを生む
2.誰に質問するのか
3.質問の構造と技術
4.イノベーションを生む質問
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(2)挑発的な質問をする
(3)破壊的な質問をする
(4)コンセプトを革新する質問をする
5.質問力を養うには
6.質問を行う場のデザイン
7.質問ストーミング(ワークショップ)
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◆どんな思い込みに支配されているか
イノベーティブ・リーダーの思考法の中で、「前提を疑う」という話をしたが、前提がやっかいなのは、思い込みになっているケースが多く、前提があることすら疑わないことだ。このような状況を打ち破り、イノベーションにつなげていくには、質問は非常に有効な手段である。
【イノベーション・リーダーシップ】第8話
イノベーティブリーダーの思考法(1)~前提を疑う
まず、次の2つの質問を考えてみてほしい。
・私の業界はどんな思い込みに支配されているか
・私の会社はどんな思い込みに支配されているか
もし、質問が抽象的だと感じたら、次のような思考をしてみてほしい。
・業界で常識だと思っていることをいくつか取り上げ、その根拠を説明する
・会社で常識だと思っていることをいくつか取り上げ、その根拠を説明する
この質問に対して、根拠が説明できないものはほぼ、思い込みである。
たとえば、ITの業界には、発注者の事情で発生したスケジュール遅れはベンダーが始末しなくてはならないという常識がある。この根拠を合理的に説明するのは難しい。もし、あるとすれば、契約書の中で、ベンダーの履行義務は期限付きで謳われていても、発注者の義務は期限付きでは謳われていないことが多いくらいだろか。
◆イノベーションを起こす質問
これ以外にも思い込みを壊し、イノベーションを起こす質問としては、
・あなたの業界はなぜそのような構造になっているのか
・あなたの業界ではステークホルダーとの取引についてどのようなルールがあるか
・ルールはあなたの会社にどのような影響を与えているか。どのようにルールを変えればあなたの会社の立場は変わるか
などだ。たとえば、あなたがITの業界で二次受け、三次受けの企業であれば、ぜひ、この質問に答えてみてほしい。新しい事業展開のヒントが見つかるだろう。
◆組織の思い込み
組 織についても同様だ。たとえば、日本の企業の多くは、自分たちの強みが品質であり、BRICなどの発展途上国の追従を許さないと思っている。ところが、外 国は日本製品の品質が高いという認識は必ずしもなくなってきている。家電のように韓国や中国と同水準であり、価格だけが高いようなイメージを持たれている 分野が少なくない。調べてみればすぐに分かる。要するに思い込みである。
組織についても、
・あなたの組織はなぜ、現在のような構造をとっているのか
・あなたの組織の不文律は何か
・あなたの組織の運営はどう変わってきたか
・あなたの組織の製品やサービスに関する思い込みは何か
といった質問を考えてみると、思い込みがはがれ、イノベーションのヒントが見つかることが多いだろう。
◆関連セミナー
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2.誰に質問するのか
3.質問の構造と技術
4.イノベーションを生む質問
(1)思い込みや常識を覆す質問をする
(2)挑発的な質問をする
(3)破壊的な質問をする
(4)コンセプトを革新する質問をする
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◆キラー質問研究会
イノベーションイニシアティブでは、良い質問を集める
「キラークエスション研究会」
を発足します。これまでの経験の中で、良い質問だったなと思うものを出し合い、共
有しようというオンライン研究会です。
趣旨に賛同戴ける方は、ぜひ、ご参加ください。こちらのfacebookグループです。
https://www.facebook.com/groups/607965929242093/
◆参考資料
フィル・マッキニー(小坂恵理訳)「キラー・クエスチョン 常識の壁を超え、イノベーションを生み出す質問のシステム」、阪急コミュニケーションズ(2013)
◆誘導質問
質問の効果は一般的に認められるようになってきているが、認知が逆に悪い質問を生み出しているケースがある。任せる、自立させるという観点から、指示はよくないが、質問で気づきを与えることは好ましいと考えている。しかし、質問にも良い質問と悪い質問があり、悪い質問では質問でコミュニケーションを取る意味がない。その一つが「誘導質問」と呼ばれるものである。
これが弁護士が誘導に使う質問のタイプの一つである。たとえば、あなたが新しい製品の開発を任され、やる気満々なときに、上司から
次の製品はコンセプト変えないよね。
と言われた状況を考えてみてほしい。
あなたは一応、上司から質問を受けている。しかし、この質問に対して、同意する以外にはない。これは質問の形をとった宣言なので。さらに質が悪いのは、この質問をステークホルダーの前で発することだ。イエスと答えたら、あなたが決めた(決めていた)ように解釈される。
このように誘導質問は新しいことに取り組むエネルギーを削ぐもので、イノベーションにとっては悪い質問だといえる。誘導質問で気をつけたいのは、普段、部下と対等に付き合うように心がけていても、つい、こういう形で本音のところが出ることがあることだ。
誘導質問に限らず、すでに答えは決まっており、質問の形でそれを相手に言わせるという質問は最悪である。そんなことをするくらいなら、きっぱりと宣言をした方がよい。
◆良い質問とは
では、イノベーションにとって良い質問とはどういうものか。抽象的にいえば、斬新で新しい事実の発見や、アイデアの創出やにつながる質問である。
前回紹介した、「キラー・クエスション」を書いたフィル・マッキーニは長年の研究の結果、よい質問には2つの種類があるとこの本の中で述べている。
それは
・事実を確認するための質問
・調査を伴う質問
の2つだという。
◆2つのタイプの質問
事実を確認するための質問は、情報の収集を目的としている。たとえば、
・ドコモとソフトバンクのどちらでiPhoneを買いますか
・ドコモとソフトバンクはどちらがiPhoneの価格は安いですか
といった質問である。最初の質問は自身の意思を答えればよく、二番目は両方のショップに電話をして価格を確認すればよい。このような質問は答え以上の発見はないが、情報交換としては意味がある。
調査を伴う質問は、よりイノベーションに貢献できる可能性がある。たとえば、新しいスマートフォンを開発するときに
・1年後にドコモとソフトバンクはどちらがたくさんのiPhoneを販売しているか
・顧客がソフトバンクを選ぶ理由は何か
といった質問が出てもおそらくすぐには答えられない。調査が必要である。もっといえば、調査をしても正しい答えが得られるとは限らない。しかし、その過程を通じて、新しいスマートフォンの機能や販売方法に関するアイデアが得られるかもしれない。
◆質問力はまずは良い質問と悪い質問を見分けるところから
イノベーティブ・リーダーの質問力は、まず、良い質問と悪い質問を見分けるところから始まる。
よ い質問の方法に関して大きな影響を与えているのが、ロースクールでよく使われるソクラテス・メソッドである。ソクラテスメソッドは、質問により、弟子の考 えや信念の核心に迫っていった。その上で、外の世界に引き出し、自分がどの程度のことを知っているかを自覚させた。この方法はテレビで法廷ものを見ている と弁護人や検察官がよく使っている手法だ。
イノベーションも同じで、自分が知っていることが不十分であることを認識した上で、外の世界に目を向け、新しい情報を探していく必要がある。言い換えると、自分が知っていることがすべてであると思っている限り、今を超えることはできず、イノベーションは起こらない。
このような気づきと活動を引き起こすのが良い質問である。
◆関連セミナー
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◆イノベーティブ・リーダーの質問力
~問いから始まるイノベーションの生み出し方◆(7PDU's)
日時:2014年2月21日(土)10:00-18:00(9:40受付開始)
場所:ヴィラフォンテーヌ汐留コンファレンスセンター(東京都港区)
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1.質問がイノベーションを生む
2.誰に質問するのか
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4.イノベーションを生む質問
(1)思い込みや常識を覆す質問をする
(2)挑発的な質問をする
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◆キラー質問研究会
イノベーションイニシアティブでは、良い質問を集める
「キラークエスション研究会」
を発足します。これまでの経験の中で、良い質問だったなと思うものを出し合い、共
有しようというオンライン研究会です。
趣旨に賛同戴ける方は、ぜひ、ご参加ください。こちらのfacebookグループです。
https://www.facebook.com/groups/607965929242093/
◆参考資料
フィル・マッキニー(小坂恵理訳)「キラー・クエスチョン 常識の壁を超え、イノベーションを生み出す質問のシステム」、阪急コミュニケーションズ(2013)