ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ(斎藤 栄一郎訳)「ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える」、講談社 (2013)
お奨め度:★★★★★+α
ビックデータについて論じた唯一の本だと言われている「Big Data: A Revolution That Will Transform How We Live, Work, and Think」の翻訳。ビックデータについて、その本質を知りたい人は、必読。最近、JR東日本がSuicaのデータの販売を始めて話題になっている。これが何を意味しているかをきちんと理解できていないのであれば、自分のためにも読んでおくことをお奨めしたい一冊。
まず、注目してほしいことはビックデータというのは、概論が300ページ強の本になるくらい、深い話だということ。
ビックデータ自体は単純な話である。これまでの統計が標本の世界であったが、ビックデータは全体の世界である。この本ではN=全部の世界だと表現している。これが如何に画期的な3つの変化を起こす。
一 つ目はあるテーマに関して一部のデータや統計的なサンプルでは済まさず、すべてのデータを分析できるようになったこと。二つ目は、正確さにこだわり続ける のではなく、現実世界の乱雑なデータにまっすぐ向き合おうとする意欲が生まれたこと。三つ目は、つかみどころのない因果関係を追い求めるよりも、相関関係 を積極的に受け入れる発想の転換が起こったこと。この3つだ。
まず、一番目。Nが部分の場合には、目の前に起こっていることが説明がつかないと、部分の取り方がおかしいということになる。あるいは、よほど仮説に自信があれば、もう少しNを増やしてもう一度分析する。これをどんどんやっていくとN=全体の世界になっていく。
N= 全体の世界では、発想が逆である。目の前に起こっていることが意味がある。すべてのデータで相関をとってみて、その結果がまったく説明できなかったとすれ ば、それは発見である。この本でも出てくるが、「マネーボール」という映画にもなった小説がある。これはスカウトマンがデータを使ってトレードや作戦を決 め、見事に優勝するというストーリーだ。そこで出てくる結果は、職人の勘や経験をことごとく覆すものであった。
統計ではこういうことは難 しい。観察や経験をベースにして仮説を作り、仮説を検証するためにデータが使われるからだ。「データに語らせる」という言葉が出てくるが、先入観を持たず に、データを見て、法則を発見するのが、N=全体の世界である。ビックデータに世間の関心を集めたのは、グーグルが検索データから新型インフルエンザの流 行を予想したことである。グーグルは米国人が検索時の入力した言葉の上位5000万件を抽出し、2003年から2008年までの季節性インフルエンザの流 行に関するCDFのデータと相関を調べた。つまり、検索の内容とインフルエンザの感染には相関関係があると考えたわけであるが、見事に相関がでてきたわけ だ。
ビックデータの活用が有名になったもうひとつの事例はクレジットカードの不正防止である。クレジットカードの不正防止では、「利用パターンの変則性」を見つけることによって、不正を発見する。まさに、データに埋もれていたものごとが浮かび上がってくるわけだ。
二番目の正確さに拘らないというのも大きな変化だ。統計を使うときには、いかに正確さを実現するかがポイントになる。サンプリング、データの取捨選択などを慎重に行い、正確さになるようにする。なぜならば、統制の結果はどこまでいっても推論であり、納得性が重要だからだ。
僕 はシステム工学を学び、そののち、経営学部で経営学を学んだ。その意味で、統計的は発想は前提であったし、その中で、いかにデータをうまくサンプリング し、いかに正確な結果を得るかにこだわりがある。そして、その背景にあるのが因果関係である。統計として部分を扱っている限り、得られた結果が説明できる ことが極めて重要である。説明できなければサンプリングが不適切だということになる。
人間は考える葦であるという言葉があるが、人間は考 えるのに因果に引っ張られる。実はここが二つの意味で、ビックデータの一番難しいところではないかと思われる。ひとつは、どこに相関がありそうかを見つけ なくてはならない。クレジットカードの不正や、野球というのは比較的考えやすいと思うが、衝撃的な発見には非常に創造性が必要である。もう一つは説明でき ないことを信じてもらわなくてはならないことだ。
たとえば、オレンジ色のクルマは欠陥が少ないということを信じられるかという話だ。
こ のようなデータの活用をしようとすると、基本的な視座が重要になる。その視座として、本書は「データフィケーション」という概念を提唱している。かつて海 図が航海を一変させたように、すべてのものがデータ化されることによってビジネスが一変するというものだ。この議論の中では、データ化が如何に進んできた かという歴史に触れており、ビックデータの本質を理解する上で役立つ。さらには、非常に難しい問題であるデータの価値についても論じている。
後半はデータをうまく活用している事例を紹介している。事例そのものは本で確認してほしいが、この中で使われているフレームワークが面白いので紹介しておく。ビックデータをうまくつかっている企業には3タイプあるそうだ。
・データを保有しているデータ型
・分析ノウハウを持ち、業務として分析サービスを提供するスキル型
・データから新しい価値を引き出すことができるアイデア型
の3つで、これまではデータ型、スキル型がビジネスとなっているが、今後はアイデア型のビジネスが増えてくるだろうと予測している。
また、ビックデータのリスクについても論じている。ビックデータには、
・プライバシーのリスク
・傾向/習性のリスク
・データ独裁の犠牲になるリスク
の3つのリスクがある。ビジネスとしては非常に有望な手段であると同時に、個人としてみれば、かなり怖い世界があるということになる。このバランスは重要なのだろう。
実 はこの本、発売直後に購入して、3~4回、読んだ。読めば読むほど、思考が深まり、非常によい本である。かつてのインターネットと同じくらい、ビックデー タというのはビジネスを変えるインパクトがあるように思える。その全貌を掴むには、評判どおりこの本とお奨めできる一冊である。
日経コンピュータ「開発・改良の切り札 システム内製を極める」、日経BP社(2011)
お奨め度:★★★★1/2
情報システムにおいて、「ユーザ主体」とはどういうことかを、さまざまな事例を分析しながら、考察した一冊。専門ベンダーが主体になって行うシステム開発で、要件定義や柔軟な対応の難しさが指摘される今、ビジネスに役立つ情報システムを獲得するために、一度、読んで考えてみる価値がある一冊だ。
業務システムのユーザ主体開発の目的はいくつかに分けることができる。
増田 宗昭「はじめて語られる企画の「虎の巻」 」、毎日新聞社(2010)
お奨め度:★★★★
プロフェッショナルファームとしての「企画企業」のあり方について、25年にわたり、CCC(カルチャーコンビニエンスクラブ)グループを率いてきた増田宗昭さんが持論を展開した本。CCCのプロモーション本みたいな気もするが、僕はTポイントカードは凄いと思っているので、素直に読める。もし、TUTAYAや、Tポイントカードを評価していなければ、宣伝本以外のなものでもないので、要注意。
まず、最初にTポイントカードについて説明しておこう。本書でも、5章をまるまる割き、説明されている。Tポイントカードはもともと、TUTAYAのハウスポイントカードだったが、2006年より、オープン化している。つまり、複数の企業が自社のポイントカードとして使えるものになっている。ハウスカードであるので、ポイントがたまったり、イベントに参加したりできる、また、クレジットカードをつけることもできる。
Tカードの面白いのは、上に述べたようにオープン化していることだ。つまり、TUTAYAのポイントカードとしても使えるし、ファミマのポイントカードとしても使える。ネット企業も参加している。
つまり、Tポイントカードは一般的なポイントカードとはコンセプトが違う。ハウスカードは顧客の抱え込みが目的である。そのために百貨店のように過剰サービスを行い、収益を圧迫しているケースすらある。Tカードは企業間ネットワークにより、顧客価値を生み出すと同時に、企業同士の収益向上を実現することが目的である。この違いが企画力だということになる。
増田さんの企画の定義は、いくつかの表現で書かれているが、
企業が求めている「どういうモノを作るか」、「どういう売り方をするか」、「どういう仕事をするか」ということであり、「どういう」の部分が企画だという。そして、これは企業の収益に直結するものだ
というのがもっとも本質的な定義だと思われる。この定義に基づき、増田さんはこれからのビジネスについて、マーケットインから、プロダクトアウトに変わっていくべきだという。
モノが余っている時代には、顧客のニーズを取り込んでモノを作っても、売れるとは限らない。一方で、、企業は前年度比ばかりを意識している。増田さんは、日本のビジネスの問題の一つだと断言する。つまり、前年度比という結果を追いかけるために企業の目線はどんどん顧客から社内に向く。そして、てっとり早く結果を得るために市場のニーズに合致した商品やサービスを作り、売上げを立てようとする。しかし、実際にはモノは余っているのでこの手法では売上げは述べないというのが増田さんの考えだ。
そこで、プロダクトアウトが重要になってくる。ちょっと補足すると、マーケティング的には高度成長期のプロダクトアウトからマーケットインに移行していった経緯があるが、実はその当時のプロダクトアウトと増田さんのいうプロダクトアウトは違う。当時のプロダクトアウトは「できるものを作って売る」という意味のプロダクトアウトであった。つまり、企業の能力ありきの考え方だ。もちろん、市場の方向性(というか行政の示す方向性)に従って、企業能力の向上には取り組んだいたわけだが、本質的にできることで商売をすることに本質があった。
しかし、今、増田さんが求められていると主張するプロダクトアウトは、「企業サイドがこの商品こそ世の中の人々が求めているものだ」と開発した商品を顧客に届けるビジネススタイルである。言い換えると、「企画ありき」で、企業能力はそこに焦点を当てて開発していかなくてはならない、もし追いつかなければ調達が必要になる。言い換えると、戦略マネジメントなのだ。
では、そのような企画力を持つにはどうすればよいか。企画人間を作らなければならない。増田さんの考える企画人間は
・情報を組み合わせることができる
・お金を出したくなる企画を作る
・好感度が高く、人から好かれる
ことが3つのポイントであるという。
僕は門外漢なので、プロフェッショナルとして企画を提供する人にとってこの本に書かれているCCCの実態がどの程度のレベルのものかよく分からない。特に、最後にある企画セオリー20カ条がどのくらいのレベルのものか分からない。
しかし、Tポイントカードの例を見ると、これからの企画の本質はインフラのアイデアの提供にあるように思う。つまり、ソーシャルイノベーションの要素があり、ソーシャルネットワークに参加することによって企業が利益を上げることができることが求められているように思える。
ホームページで見る限り、Tポイントカードはまだ、成功だとは言えないような状況だと思う。ただ、この企業は増田さんが経営している限り、ソニーがフェリカで失敗したような欲を出して、インフラとサービスを両方やるような失敗はしないと思う。その意味で、これから楽しみである。
同時に、もっと重要なことは、これからは一般のビジネスパーソンが企画力を求められる時代にである。そのために企画のハウツー本を読むよりは、まず、企画とは何か、企画の目的は何かという哲学をしっかりと持つべきだと思う。そのためには、CCCの宣伝臭さを我慢しながらでも(笑)読む価値のある本だ。
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長尾 一洋、小関 由佳「見える化コミュニケーション」、中経出版(2009)
お奨め度:★★★★1/2
見える化といえば、
トヨタ 管理 改善
という連想ゲームが長く続いていたが、最近、かなり、風向きが変わってきた。マネジメントの手段になってきたのだ。そのきっかけになったのが、NIコンサルティングの長尾 一洋さんが、自分たちのメソッドを書籍化されたこの本。
長尾 一洋「仕事の見える化」、中経出版(2009)
長尾さんの本は、新幹線においている雑誌「WEDGE」の連載を読めば内容が分かるので購入することは少ないが、この本あたりから、購入するようになった。このあと、「営業の見える化」、本書とだんだん、マネジメント色が強くなってきている。
その意味で、集大成になっている一冊。
この本が唱える。「見える化コミュニケーション」は、心理学でいうところの「ストローク」をコミュニケーションの中心においたコミュニケーションを「見える化日報」と8つの仕掛けで実現することを基本としている。
ストロークとは、相手を認めたり、声をかけたりする、働きかけで「心の栄養」とも呼ばれる。ストロークには、プラスのストロークとマイナスのストロークがあり、日報を使った日報ストロークを出し、ストロークバンクにストロークがなくならないようにしていくことを基本行動をする。
見える化日報の目的は、「社員一人一人の心が元気になり、仕事に対して前向きに取り組みことで、そのための見える化日報の導入目標は
・会社と社員の間でビジョンの共有ができている
・会社と個人は対等な立場である「全員一如」という考え方がある
・自己の重要性を感じ他者から承認が得られる
である。この目標のために、以下の8つのしかけを作る
(1)「考える社員を作る」しかけ
(2)「社員の頭の中を見える化する」しかけ
(3)「よい仕事を見える化する」しかけ
(4)「企業戦略を現場に落とし込む」しかけ
(5)「経営をリアルタイムでモニタリングする」しかけ
(6)「顧客を取り込む釣り堀をつくる」しかけ
(7)「社員の顧客志向を高める」しかけ
(8)「顧客情報をさらに集める」しかけ
それぞれのしかけにおいて、以下のような工夫をするとよい。まず、(1)については、
・考えなくてはかけない日報にする
・自分で計画を立て、計画に基づく報告をする計画書日報にする
といったところがポイントになる。(2)については、
・Plan → See → Do → See のPSCSサイクルを作る
が重要である。(3)については、
・グッドジョブポイントでストロークを見える化する
・地味な仕事にスポットライトを当てるグリーンカードの導入
などが考えられる。(4)では
・ビジョン、戦略とのずれを見える化日報でコミュニケーションする
・コックピットに見える化日報の情報をリアルタイムで反映する
などの工夫が考えられる。(5)では、ITの活用がポイントになる。その際に、経営数値という過去のデータから、未来を見通すことが求めら、そのためには、結果指標と先行指標を明確に区別し、見える化をしていくことが重要である。
(6)においては、
・過去のデータを顧客カードにする
・失注も情報とする
・常に次のチャンスのことを考える
といった考え方で、データを釣り堀にためていくとよいだろう。(7)においては、
・顧客情報を営業部門だけのものにしない
・伝えるのではなく、毎日、何度も見せる
ことが重要だ。(8)においては、
・営業部門が諜報部員になる
・営業がとってきた情報を、みんなが活かす
といった工夫が必要である。
マネジメントの教科書を見れば、真っ先に、ビジョンを作り、それを全社員に浸透していくことが何よりも大切だと書いてある。口でいうのは、極めて簡単だが、対話をしましょう、質問会議をしましょうといってみても、なかなか、できるものではない。その点、「日報」というハードルの低いコミュニケーション手段に工夫を凝らすことにより、ビジョン浸透をはじめとするマネジメントを行っていくという考え方は現実的であるし、効果的であるように思える。2000社以上の企業に導入されているというのも伊達ではないといったところだろう。
ちなみに、このようなマネジメント分野はソフトマネジメントと呼ばれ、ある程度、体系化されている。たとえば、僕がよく参考にする本に
ロッシェル カップ「ソフト・マネジメントスキル―こころをつかむ部下指導法」、日本経団連出版(2003)
という本があるが、本書はこの範囲をほぼ、カバーしているように思う。見える化でできることは思っているより多いのかもしれない。
この本では、日報に
・成功
・問題
・対策
・報連相
・GOOD&NEWS
を書くことを前提にしているが、実際に提案されているしかけを作るには、日報に工夫をする必要があるように思う。そのためのヒントになる書籍を紹介しておこう。
松井 順一、 石谷 慎、佐久間 陽子、小嶋 美佳「仕事の「見える化」99のしかけ」、日本能率協会マネジメントセンター(2009)
である。この本は、ありそうでなかった本。見える化のしかけを
・組織・体制を「見える化」するしかけ
・プロセスを「見える化」するしかけ
・仕事環境を「見える化」するしかけ
・仕事を「見える化」するしかけ
・管理・改善を「見える化」するしかけ
の5つのカテゴリーに分け、具体的な99のフォーマットでしかけを紹介している。それを使った見える化のステップとして
ステップ1:めざす姿を定義する
ステップ2:行動を明確化する
ステップ3:みるべきものをきめる
ステップ4:日常的に見える工夫をする
ステップ5:見える化を実践するツールを準備する
という5ステップを提唱している。日報を使った見える化を実現していくのに、この5ステップや99のツールは有用である。併用するとよいだろう。
中村 文彦「ITプロジェクトを失敗させる方法―失敗要因分析と成功への鍵」、ソフトリサーチセンター(2008)
お薦め度:★★★★1/2
著者の中村さんとは、日本プロジェクトマネジメント協会の研究会で、PMコンピテンシーの開発方法の研究に一緒に取り組んだことがある。そのときは、習慣化という方向にまとめていったが、こういう方法もあるんだなということを認識させてもらった一冊。
プロジェクトを提案・受注、立ち上げ・計画、実行、終了に分け、あとから振り返ると、分岐点だったなというようなプロジェクトの場面を切り出し、そこで、失敗の原因になるような意思決定や行動を「対話」の形で描いている。
そして、それに対して、どうすればよいかを簡潔に説明した上で、今度は、よい意思決定や行動を「対話」の形で描いている。
対話はテンポがよく、言外のニュアンスもうまく描いてあり、参考になる。解説は簡潔で読みやすく、ポイントも適切だと思うので、全体としてコンパクトなのだが、かなりのことが伝えられる一冊である。
また、これ以外にコラムがあり、コラムでは比較的トピックス的な話題をこれまた、簡潔に説明している。
読み方としては、まず、悪い事例で、どこが問題かを考え、その上で、著者の考えを書いた解説を読んで確認する。そして、自分ならどう行動修正するかを考えてみて、よい事例を読んで確認するという手順で読んでいける。
考えながら、気づきながら読んでいくことで、かなりのコンピテンシーの開発ができると思う。
また、対話することそのものへの暗黙知も描かれているように思う。これが結構重要ではないかと思わせる本である。読んでいるうちに、仮に、悪い対話であったとしても、対話をすることが重要だと思ったのだ。うまくいかなければ、なぜ、うまくいかないかを考え、そこからさらにうまくいく方法を模索していくという行動学習が行われる第一歩は対話である。その意味で、悪い事例からよい事例へどのように推移していけるかというのがポイントかもしれない。
最後に、この本と直接関係ないが、僕の経験でよい使い方があるので、提案しておく。プロジェクトチームでのチーム育成やチームビルディングのエクスサイズに使うと有益である。1回のミーティングで1例取り上げ、悪い事例をプロジェクトチームで読んでチームで議論する。それで、よい事例を配る。そこでどこが違うかを議論し、そのあと、プロジェクトマネジャーが著者の言っているポイントを中心にしてこういう風にしようとまとめると有効である。
目次
1 ITプロジェクトは、なぜ失敗するのか(失敗プロジェクトの類型;ITプロジェクトの失敗要因分析)
2 提案・受注段階での失敗(提案・受注段階での失敗とは;提案・受注段階での失敗事例 ほか)
3 立ち上げ・計画段階での失敗(立ち上げ・計画段階での失敗とは;立ち上げ・計画段階での失敗事例 ほか)
4 実行段階での失敗(実行段階での失敗とは;実行段階での失敗事例 ほか)
5 終了段階での失敗(終了段階での失敗とは;終了段階での失敗事例 ほか)
KPMGビジネスアシュアランス「ユーザーのためのプロジェクトマネジメント実践講座―計画からベンダー選定、進捗管理、本番移行、評価まで全33講座」、日経BP社(2007)
お奨め度:★★★1/2
情報システム導入プロジェクトのポイントを33の講座の形で解説した一冊。情報技術に関わる話から、プロジェクトマネジメントの方法、プロジェクトマネジャーの育成、PMOまで網羅的にポイントを抑えており、ユーザ企業には待望の一冊。
どのようなポイントについて解説されているかは、目次を見て欲しい。
ただし、全般的にベンダー側の視点から、ユーザが個のような対応をすればプロジェクトがうまく行くという色合いが濃い。情報化プランの策定についても、コンサルティングベンダーの考え方が色濃くでているように思う。
一般的に情報化プロジェクトは、ビジネスプログラムの一プロジェクトとして実際されることが多いが、プログラム中のプロジェクトのマネジメントとは若干ずれがある。
その点をよく理解した上でよめば、まさに待望の一冊になるだろう。
目次
第1回 ユーザーが陥りやすい誤解はこれだ
●CULUMN 1● はじめてPMになるあなたへ
第2回 システム案件を効果的に絞り込む
第3回 システム案件と経営戦略の整合性を確保する
第4回 システム稼働後の体制を企画段階で決める
第5回 5W2Hとルールを決めて計画を立案する
第6回 ベンダー選定に失敗しないコツ
●CULUMN 2● PMの最初の仕事は何か?
第7回 チームを適切に編成してプロジェクトを立ち上げる
第8回 経営層の積極的な参画が成功につながる
第9回 “悪い”情報の収集で運営を円滑に進める
第10回 要件の膨張や誤解を防ぐための注意点
第11回 進捗マネジメントで遅延を未然に防ぐ
第12回 コストの超過を最低限に抑える
第13回 品質を確保するには主体的な関与が不可欠
●CULUMN 3● プロジェクト計画書に何を記載しているか
第14回 マネジャに欠かせないリーダーとしての資質
第15回 目標達成に不可欠な組織マネジメント
第16回 エンドユーザーに協力を働きかける
第17回 チーム・メンバーの心・技・体を管理する
第18回 ベンダーに任せきりの態度は禁物
第19回 内部統制を意識して情報を管理する
第20回 工程の終了/開始を適切に判定する
●CULUMN 4● プロジェクトの半分は失敗する
第21回 本稼働後の体制を早期に決めておく
第22回 システム構築段階で運用の品質を確保する
第23回 システム本番移行には細心の注意を払う
第24回 本番移行後にシステムを安定稼働させる
第25回 システム稼働直後にプロジェクトを評価する
第26回 定常運用・保守体制に移行しプロジェクトを解散する
●CULUMN 5● 失敗につながる最大の要因は「所有期間」
第27回 内部統制を意識して要件定義を進める
第28回 プロジェクト全体を通じて全般統制を意識する
第29回 事業継続を意識してシステム構築を進める
第30回 要件定義の段階で個人情報保護策を講じる
第31回 システム運用の外部委託を早めに考慮する
第32回 PMOを活用してマネジメントを高度化する
●CULUMN 6● プロジェクトの成功に向け組織的に取り組む
第33回 PMの最大の役割はステークホルダー管理
石川昭、辻本 篤編「新製品・新事業開発の創造的マーケティング―開発情報探索のマネジメント」、生産性出版(2006)
お奨め度:★★★★
編著であるが、研究開発から製品開発、事業開発までバランスよくまとめられており、初心者が読むにも適した製品開発、事業開発のテキスト。
第2章では、戦略実行のための研究開発のあり方について解説されている。特に、マーケティングのさまざまな活動と研究開発活動をどのように関係付けていくかを丁寧に解説している。
第3章では、研究開発における意思決定について解説されている。テーマの選定および、継続中止などの評価と判断をどのように行うかを解説している。
第4章では、マーケティングにおける情報活動について解説している。
第5章では、研究開発活動における情報活動について解説している。
6章以下は、これらの解説を事例によって解説している。「からだ巡礼(TM)」、Webリコメンデーションシステム「教えて!家電」、ロボットの開発などの特徴のある事例を取り上げて解説しているので、とても面白い。
最後に9章では最近注目されている、クレームベースの製品開発について解説している。
経営戦略と研究開発、研究開発と製品開発のギャップに悩んでいる人にはとても参考になる一冊である。
目次
概論編(戦略計画と研究開発管理
研究開発プロジェクトの計画、選択及び評価法
情報の新しい体系化と戦力化
研究開発の進め方と考慮すべき要件)
新製品・新事業開発における実例編(『からだ巡茶』の開発における情報探索
Webリコメンデーション・エンジンを搭載した商品お勧めサイト『教えて!家電』の開発
ロボットの開発事例―感性と機能からのアプローチ
製品事故における企業組織内外コミュニケーションとマネジメント―M社、P社の一酸化炭素中毒事故を事例に)
デイブ・サットン、トム・クライン(高宮治、千葉尚志、博報堂ブランドソリューションマーケティングセンター訳)「利益を創出する統合マーケティング・マネジメント」、英治出版(2006)
お奨め度:★★★★1/2
マーケティングという概念は分かりにくい部分があるが、それは、製品を企画し、開発し、販売するまでの一連の活動すべてであるにも関わらず、それらを体系的に取り扱う手法がないためである。
このため、ステージ間の連携においては、ヒューリスティック頼りの側面が強く、これがマーケティングはアートとサイエンスが混在しているといわれる一因になっている。
この本で提案されているEMM(エンタープライズ・マーケティング・マネジメント)は、これらの活動を統合的に扱うために考えられた手法である。統合的に使おうとするために、マーケティングのさまざまなステージにおける活動はすべて必然性と論理性が求められるようになり、これにより、マーケティングはサイエンスになる。
コトラーはこの本で紹介されているサットンとクラインの仕事を、「ERP、CRM、SCMと並ぶ効果効率の高い収益力のある事業運営のプラットホーム構成要素のひとつ」だと称している。
製品開発に関わる人は必読の一冊である。
目次
Introduction エンタープライズ・マーケティング・マネジメント
1 ブランドを、キャンペーンではなくビジネスとして運営しよう(マーケティングはアートではなく科学である
ブランド・アーキテクチャー ほか)
2 顧客ではなくブランドを管理しよう(ブランド・エクスペリエンスの主導権を握れ
マーケティングをCRMにつなげよう ほか)
3 コミュニケーションだけでなく、自分のビジネスを再構成する(ビジネスモデルの再構成
マーケティング投資収益率を測る ほか)
Conclusion マーケティングの新時代