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2006年8月12日 (土)

【補助線】エンジニアはマネジメントの資質なしには良い仕事はできない

プロジェクトマネジメントのあり方について

プロジェクトマネジャーにとって技術や分野の専門知識は必要である

という命題がある。

この命題が真だという人は、プロジェクトの成功が技術リスクに強く依存しているため、技術の素養がないとプロジェクトはうまくマネジメントできないという意見が多い。特に、管理職とは違うという言い方をする人が多い。

逆に偽だという人は、プロジェクトは専門家を集めて、彼らに権限委譲して行うのだから、マネジメントスキルがあればよいという意見の人が多い。

この議論はキャリアの議論としては意味があると思うが、プロジェクトマネジャーの任命やプロジェクトマネジメントの中ではほとんど無意味な議論だと思う。神学論争である。

この命題よりもはるかに重要なのは、

一人の技術者が技術者としていい仕事をするためにはマネジメントの資質が必要

だという命題である。

僕自身のコンサルタントとしてのキャリアの中で15年間、多くのエンジニアに出会ってきたが、この命題を否定するような人材に出会っていない。この命題は明らかに真だと思う。

この理由は2つある。

一つは最近、エンジニアにもプロジェクトマネジメントのスキルが必要だという指摘の根拠になっている組織で仕事をしているからである。ただ、これはそんなに大きな問題ではないように思う。

もう一つは、自分が満足すればよい仕事だという人は別にして、はやり、自分が満足し、人からも評価されるためには、マネジメントの資質が必要になるという事実である。これは、組織に認められるからとかいったレベルではない。エンジニアの取り組む仕事で絶対的に価値のある仕事は残念ながら少ない。プロジェクトXのような大きな仕事を見ていてもそんな数はない。

すると、すばらしい発見やアイディアを出す以前の問題として、分野の選定が極めて重要である。シーズにさえならないような分野で何をやってもそんなに認められるものではない。ニーズだけではなく、シーズもある意味で市場である。つまり、市場の認めない仕事をしても意味がないということになる。

ここでいう市場を商品市場のような狭い意味で捉えないでほしい。例えば、社内で技術開発をする場合には、自分の所属する組織なり、企業なりが市場を持っている。この市場に適応できなくては話にならない。

もう一つ、僕が持っている命題がある。それは、マネジメントの資質がある人はセルフマネジメントがきちんとできる。自らの目標発見、動機の維持、タイムマネジメントなど。これはいずれも、マネジメントの基本である。

この命題は逆も真である。セルフマネジメントができている人はマネジメントの資質もある。

このように考えていくと、画期的な仕事をできる人は市場を見つける活動と、セルフマネジメントにおいて、マネジメントの資質を持った人であるといえる。

さすがに15年くらいの仕事をしているだけでは、イノベータに出会う機会はそんなになく、事例は少ない。それでも10人程度はイノベーッティブな仕事をしたと評価されている人に出会ったことがある。最近の例で言えば、ウィルコムのW-ZEROシリーズを開発したエンジニアは長い付き合いだが、抜群のマネジメントセンスを持っていた。

エンジニアがプロジェクトマネジメントのスキルが必要だから身につけるというよりは、エンジニアとして自らの仕事を大きく花を咲かせるためにどのようなマネジメントスキルが必要かを考えてほしい。

それがプロジェクトの成功にもつながるし、エンジニア自身の成功にもつながる。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。