☆PMスタイル考 Feed

2015年1月23日 (金)

【戦略ノート315】ステークホルダーマネジメントについて考える

バックナンバー https://mat.lekumo.biz/ppf/cat9747307/━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

Stakeholder

◆ステークホルダーマネジメントが重視される時代

現行のPMBOK(R)である第5版から、ステークホルダーマネジメントが新しい知識エリアとして設定されている。戦略ノートでステークホルダーについては久しく書いていないので、これから時々、書いてみたいと思っている。

戦略ノートなので、あまりテクニカルな話は書く予定はないので、手法的なことを知りたい人は鈴木道代が書いている連載

ステークホルダーマネジメント

などを参考にして戴きたい。

ステークホルダーマネジメントはマネジメントの中心的なイシューである。ある意味で、計画やリスクマネジメントよりも重要なものであり、人で事業や組織を動かすことはステークホルダーマネジメントだといってもよい。

PMBOK(R)ではステークホルダーマネジメントの存在はだんだん大きくなっている。当初はコミュニケーションのプランを作るために、どのようなステークホルダーがいて、どのようなコミュニケーションが必要かを考えるための手段であり、知識エリアでいえばコミュニケーションの知識エリアの活動であった。

ここでお断りをしておくが、PMBOK(R)のステークホルダーという概念はプロジェクトを中心にして考えているのでプロジェクトの外部関係者だけではなくプロジェクトマネジャーやプロジェクトメンバーもステークホルダーという理屈になる。が、議論の中では特別に断らない限り、ステークホルダーはプロジェクトの外部関係者だけを指して議論を進めていくので、注意しておいてほしい。



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2010年5月 7日 (金)

【PMスタイル考】第17話:プロジェクトマネジャーのジレンマ

◆組織を一部だけ変えることはできない

組織というものはひとつのシステムであり、他の部分への影響を及ぼすことなく、システムの一部だけを変えることはできない。ある人が変化を試みているにもかかわらず、属しているシステムが同じ状態であった場合には、その人はジレンマに陥ってしまう。

この南カリフォルニア大学マーシャルビジネススクールのフレーズはモーガン・マッコール博士の

ハイ・フライヤー 次世代リーダーの育成法」(プレジデント社、2002)

の一フレーズです。この本は、マッコール博士が、リーダー育成機関として欧米No.1の評価を得るCenter for Creative Leadership(CCL)でリサーチ部門のトップだったときの調査結果を中心にまとめた本です。

人材育成、特に、リーダーの育成をする際には、この指摘は極めて本質的なものです。10年近く、プロジェクトマネジメントの普及の仕事をしてきて、改めて、マッコール博士の言葉の重さを痛感しています。

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2010年4月30日 (金)

【PMスタイル考】第16話:マネジメント過剰・リーダーシップ不足

◆「顧客満足」というミラクルワード

3月15日に開催したプライベートセミナーでは、MIRの浦正樹さんをお招きしてプロジェクトガバナンスのお話をして戴きました。参加者はざっと製造業が半分、IT系が半分という感じでした。このセミナーの中で、浦さんが何人かの方に、「御社にはどんな戦略がありますか?」と質問されていました。製造業の方は、それなりに答えが答えが返ってきましたが、IT系の方は、ほとんど「顧客満足」、「品質向上」でした。

「顧客満足」という言葉はミラクルワードで、「目標はなんですか」、「戦略はなんですか」、「経営理念はなんですか」など、どんな質問の答えでも、「顧客満足」と答えておけば一見もっともらしく思えます。

ところが、「その先に何があるのですか」と尋ねてみると、「継続的な取引」とか、「顧客の抱え込み」とか、あるいは、もっと情緒的に「お客様の喜ぶ顔が見たい」といった答えが返ってきます。

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2010年4月 7日 (水)

【PMスタイル考】第15話:目的と手段

◆組織の中の目的と手段の関係は「入れ子」になっている

「目的」と「手段」をはき違えないというのは、ビジネスマンであれば一度は言われたことがあるのではないかと思います。個人を中心にみれば、この議論はそんなに難しい議論ではありません。しかし、組織やチームの中で考えると、結構、複雑な議論になることがあります。

プロジェクトで新商品を開発するとしましょう。プロジェクトにとっては、商品を開発することは目的です。そのための手段として、技術やプロセス、あるいはスキルといったものがあります。

ところがマーケティング部門にとっては、商品を開発すること自体は目的ではありません。市場シェアを拡大するとか、競合に勝つといった目的があり、商品を開発することはそのための手段に過ぎません。

経営にとっても同じことです。顧客の役に立つ、社会の役に立つといったことが目的かもしれませんし、利益を上げて、従業員に報いる、株主に配当をするといったことが目的かもしれません。その手段として、市場シェアを拡大することや、競合に勝つといったことがあります。

このように組織の中では、現場の目的は事業部門の手段、事業部門の目的は経営の手段というように、目的と手段が入れ子になっていることがよくあります。これが目的と手段を考える難しさの原因です。

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2010年4月 6日 (火)

【PMスタイル考】第14話:リーダーシップはどこに

◆マネジメントとリーダーシップ

リーダーシップ研究の権威であり、日本でもよく知られているジョン・コッター博士によると、マネジメントとリーダーシップには以下のような違いがあるそうです。

マネジメント:現在のシステムを機能させ続けるために、複雑さに対処することリーダーシップ:現在のシステムをよりよくするために、変革を推し進めること

プロジェクトでいえば、マネジメントはまさに、プロジェクトの複雑性に対処することです。そのために、WBSによるスコープ管理、ベースライン管理や、リスク管理、コミュニケーションの活性化など、さまざまな取り組みをしているわけです。

では、プロジェクトでいうリーダーシップとはなんなのでしょうか?これは簡単なようで、なかなか難しい問題です。

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2010年4月 2日 (金)

【PMスタイル考】第13話:プロジェクトマネジメントのオーナーシップ

◆2人の上位管理者

プロジェクトの上位の管理者は2人います。分かりますか?

一人はプロジェクトスポンサーです。もう一人はプログラムマネジャーです。このようにいうと混乱してしまうかもしれませんね。

もう少し、具体的にいえば、

・ビジネスに関する上位管理者
・プロジェクトマネジメントに関する上位管理者

です。

10年近く前だと思いますが、米国のIBM社がプロジェクトマネジメント担当役員、いわゆるCPO(Chief Project Officer)を置いたことが日本でもニュースになったことがあります。日本のメディアの取り上げ方をみていると、キャリアの問題として取り上げていましたが、これはもっと重要な意味があります。「プロジェクトマネジメントのガバナンス」の問題で、プロジェクトマネジメントのオーナーシップを設置したことです。今でも、日本の企業で、CPOをおいている企業はほとんどみかけません。まれに、中堅企業で、役員がPMOのマネジャーを兼務している例をみることがあるくらいです。

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2010年3月31日 (水)

【PMスタイル考】第12話:プロジェクトインテグリティ

◆インテグリティとは何か

最近、プロジェクトにおいて「インテグリティ」という概念が注目されるようになってきました。この概念はたいへんに興味深い概念です。

まず、インテグリティという言葉はどういう意味かを紹介しておきましょう。オックスフォード英語辞典には

1.正直。強い道徳性をもっていること。高潔さ。
2.分断されていない全体性。(例)領土の保全と国家の主権を確保する
3.構造が損なわれず、統合された、健全な状態。(例)小説の統一性
4.電子データの内部の一貫性、損なわれていないこと

の4つくらいの意味が記されています。1.は主に人間性についてインテグリティという言葉が使われるときの意味です。また、4.は情報処理の世界では普通に使われている使い方です。マネジメントでは、主に、2.や3.の意味が重要になってきます。

インテグリティという言葉の根底にあるのは

全体が分断されずに統合されており、完全で、うまく機能している

というニュアンスです。キーワードは、統合、完全、ですね。

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2010年3月29日 (月)

【PMスタイル考】第11話:プロジェクトとアドミニストレーション

◆管理原則の父

「マネジメントの父」は、ピーター・ドラッカー博士、「科学的管理法の父」はフレデリック・テイラー博士です。では、「管理原則の父」と言われているフランス人がいます。誰か、ご存じでしょうか?

アンリ・ファヨール博士です。ファヨール博士は経営におけるアドミニストレーションのプロセスと原則を示したことで知られますが、そのプロセスとは、

・計画する
  将来を探求・吟味して、活動計画を作成する
・組織する
  原材料や設備、資本、人的資源などの計画実行に必要な資源を準備する
・命令する
  従業員が自分に求められる機能を遂行できるように指示・配慮する
・調整する
  すべての活動を結びつけ、統合し、調和させる
・統制する
  ルールや指示にしたがって物事が行われていることを監視する

というものです。1900年代の前半に管理原則は欧米を中心に受け入れられました。

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2010年3月26日 (金)

【PMスタイル考】第10話:リスクインテリジェンス

◆PMstyleリスクマネジメント成熟モデル

PMstyleでは、プロジェクトリスクマネジメントの5段階というモデル(PMstyleリスクマネジメント成熟度モデル)を開発し、活用しています。以下のようなモデルです。

【レベル1】場当たり
プロジェクトマネジャーが気づいた範囲でリスク対策を立てている

【レベル2】体系化
プロジェクトマネジャーがプロジェクトリスクマネジメントの手法を導入して、リスクマネジメントを行っている

レベル3:標準化
組織としてリスクマネジメント標準手法や標準リスク事象を導入し、プロジェクトマネジャーやリスクオーナーとなるメンバーが標準に則り、リスクマネジメントを行っている。

【レベル4】定着化
組織としてリスクマネジメントに取り組み、個別プロジェクトにおける失敗の経験などが標準リスク事象として反映されている

【レベル5】インテリジェンス化
プロジェクトマネジャーやリスクオーナーのリスクマインドが醸成され、リスクに対する効率的かつ、効果的な管理に向けた継続的な改善が行われている

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2010年3月25日 (木)

【PMスタイル考】第9話:アカウンタビリティを高めるために

◆レスポンシビリティとアカウンタビリティ

プロジェクトを成功させるためには、2つの責任を全うすることが必要です。一つは、レスポンシビリティ。これはRAM(Responsibility Assignment Matrix:責任分担表)としてプロジェクトマネジメントの手法の中に出てくるので、よく認識されています。「実行責任」ということで、プロジェクトチームのメンバーの一人一人が、自分の与えられた仕事を遂行する責任です。

もう一つ、アカウンタビリティという責任があります。これは日本語では、「説明責任」とか、「成果責任」と呼ばれる責任です。分かったようで、よく分からない言葉なのですが、もともとアカウンタビリティは経営の用語で、企業がステークホルダに対して持つ経営判断に対する説明の責任です。今、アカウンタビリティという言葉を使うときは、もっと広い意味で使われていて、組織や個人が影響を与えたことに対して、その意志決定の理由を合理的に説明する責任です。簡単にいえば、組織や個人がどうしてそのような行動をとったかを合理的に説明する責任ということです。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。