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2015年12月11日 (金)

【イノベーターのためのコンセプチュアル思考術(10)】コンセプチュアル思考とイノベーション(6)~抽象/具象の軸で見えないものと見えるものを組み合せる

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◆システム化には見えないものがある

第8回でイノベーションとは新しいシステムを創ることであると述べたが、今回はこの点をもう少し深堀してみたい。第8回でも述べたように、日本人は大局的にシステムを考えることが得意ではなく、コンセプトを考えることができないため、イノベーションで遅れを取っている部分が少なくない。これはなぜなのだろうか?

この問題に対して大きな影響を与えているのは、システムには見えないものと見えるものがあり、その組み合わせでシステムは構成されていることではないかと思う。日本人の見える化の能力は高いと思われるが、逆に高いがゆえにすべてを見える化しようとする。

しかし、一般的にすべての見える化することは非常に難しく、見える化できる範囲で製品を作ったり、プロセスを考えたりするために、システムにならない。特に、システムとなるとつなぎの部分はほとんど見える化できないので、見える化できるものだけでシステムを作ろうとすると、システムとしては非常に稚拙なものになる。


◆iPodとウォークマン

第8回に書いたアップルのiPodを考えてみるとよく分かる。日本のポータブルオーディオの代表であったウォークマンは単体としてみれば、iPodを凌駕している。機能性、音質、操作性など、基本的な部分ではウォークマンが優れているように思う。ところが、拡張性になると、圧倒的にiPodが優れている。音楽を取り込むシステムだけではなく、機能性を補完する製品も圧倒的に多い。

興味深いのは音質に関してだ。イヤホンでウォークマンの音質を超えるものがある。つまり、iPodは音質についてもシステム化している。言い換えると、音質を見えないものとしてシステムに組み入れている。これに対してウォークマンは音質を自分たちの見えるものにしているのだ。同じように、音楽の取り込み、機能についても同様である。


◆製品とはすべてを見える化したもの

製品化するということはそこに含まれるものはすべてを見える化するということである。これに対して、システムとして結びつけるということは見えないままにするということである。

ウォークマンはほとんどシステム化されていない。というのは言い過ぎだが、あくまでも製品ありきで、外部の製品はそこに接続してくれという方式であり、システムとして考えられていない。

これに対して、iPodはシステムとしてビジョンがあり、そのシステムができるには、自分たちの製品はどうあればよいかを考えているように見える。


◆デザインとはシステムをデザインすること

デザイン思考のデザインとはシステムをデザインすることに他ならない。筐体のデザイン自体を比較すればiPodとウォークマンは好き嫌いの問題だろう。しかし、製品としてのデザインはiPodの圧勝だといわざるを得ない。

この問題を回避するには、iPodのように見えないものは見えないままでシステムとして見えるものと組み合わせることが不可欠である。そのためには、抽象と具象の軸を活用すればよいだろう。抽象的な要素を組み合わせることによって大局/分析の軸をもっとうまく使え、システムとしてのコンセプトが生まれ、システム化ができていくものと思われる。

ただし、この問題が難しいのは、結局日本人が見えないものをシステム化するのが苦手なのは、メンタル的にオープンな場を信用しないという要素があるからではないかと思われる。そうすると、論理的に解決する問題ではないのかもしれない。


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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。