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2015年6月16日 (火)

【イノベーション戦略ノート:074】イノベーションとタレント

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Talent1

◆タレント

タレントというと多くの人は芸能人などのテレビタレントを連想するだろう。talentという単語は、才能、手腕、才能のある人、人材といった意味だが、カタカナ英語でタレントというと芸能人だ。

人材分野でタレントという概念が注目されるようになってきた。タレントの概念は大きく分けると2つのニュアンスがある。それは

・特別な才能を持つ人、あるいは特別な才能
・才能

という意味だ。タレントというと芸能人のイメージで前者の方を思い浮かべる人が多いが、人材分野でタレントという場合にはそれぞれの人が持つ才能というニュアンスが強い。



◆出る杭は打たれる

日本企業というか、日本の組織は突出した人材の存在を認めたがらない。つまり、前者の意味でのタレントを認めない。出る杭は打たれるというが、本質的な問題はそのような人材を活用することができないからだろうと思っていた。

ところが、この本を読んで認識が変わった。

酒井 崇男「「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論」、講談社(2015)

この本には、トヨタこそが世界の中でもタレントをうまく作って成長していう企業だと指摘している。そのタレントを養成するシステムとは「主査制度」(現在のチーフエンジニア制度)である。

米国流にいえば、主査制度はプロダクトマネジャー制度に近いが、プロダクトマネジャーはどちらかといえば、開発に重心があるのに対して、主査は企画、設計、開発、製造にまんべんなく責任を持つような仕組みである。また、マーケティングだけではなく、販売に対しても責任を持っている。

まさに、一つの車種に対して全責任を持っており、ある意味で自分の思い通りにできる。このような役割で売れる自動車を生み出すわけで、まさに、特別な才能を持つタレントだと言ってよいだろう。

ちなみに、主査になるまでに十数年、先輩の主査の下で主査としての修業をしてするような制度になっている。


◆イノベーションにはタレントが必要

さて話は変わるが、タレントというと多くの人が真っ先に思い浮かべるのはスティーブ・ジョブズではないかと思う。メディアへの露出が多いという意味でもタレントだ。

そのジョブズが成長させたアップルだが、ジョブズが若くして亡くなり、失速するのではないかとみられていたが、以前として成長を続けている。これはジョブズと同じような立場、つまり、トヨタでいうところの主査制度を導入して、まだ、機能しているからだという指摘がある。

もし、この指摘が正しいとすれば、タレントはジョブズのように先天的に特別な能力を持っている必要はなく、それなりの能力がある人をしかりべき立場にするとその才能を発揮してタレントとして機能するといえる。

イノベーションは特別な個人に依存するものではないというのはその通りだと思うが、一方でタレントとしての立場を与えないとイノベーションは生まれないともいえる。

ここが今、イノベーションを阻害している原因なのではないだろうか。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。