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2014年11月 5日 (水)

【ブックレビュー】世界標準のNEMAWASHI(ネマワシ)の技術

4484142309新 将命「伝説の外資トップが公開する 世界標準のNEMAWASHI(ネマワシ)の技術」、CCCメディアハウス(2014)

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日本人は根回しがうまいと多くの人が思っている。実際に根回しなしには動かないので、根回しの巧拙が仕事の成果を決めるといっても過言ではない組織は多くある。根回しができる人は仕事もできるというのも現実である。

一方で、日本人はロビー活動が下手だ。東京オリンピック招致でこそ溜飲を下げたが、スポーツにしてもルール変更に常に泣かされているし、政治や経済活動でも、いいようにルールを決められ、ロビー活動は下手だという印象がついて回る。

このギャップは何だろうとずっと思っていたが、伝説の外資系経営者といわれる新さんのこの本を読んで、よく理由が分かった。やはり、ここでも日本でだけ通用するガラパゴス・ルールがあるらしい。この本は、グローバルに通用する根回し(日本的な根回しと区別する意味でNEMAWASHIと表記されている)とはどんなものかを解説している。

いきなりピンときたのは、NEMAWASHIとブランディングは通じるものがあり、目的もやっていることも同じだという指摘。マーケティングにはAIDMAという原則がある。

A:Attention、I:Interest、D:Desire、M:Memory、A:Action

の略である。つまり、価値を知ってもらい、好ましい商品であると感じてもらい、価値に共感してもらうというステップがNEMAWASHIのステップだという。

確かに、日本の根回しはこのような論理性なステップにはなっていない。一言でいえば、もっと情緒的な部分がある。白でも黒だということに目的がある(実際にはグレーばかりなので、そんなに単純ではないが)。

では具体的にどこが違うのか。

まず、ゴールが違う。根回しのゴールは、全員一致である。この背景には組織の秩序を崩さないために、論争を回避したいという考えや、公の場で一度否定されればその提案だけではなく、意思決定内容によっては提案者すらオワリになってしまうような失敗を許さない組織文化がある。この本によると、米国人のNEMAWASIはノーからダメ元で始まるという。
ゴールの違いがあるので、根回しではプロセスが極めて大切である。たとえば、根回しの順序を間違うと纏まる話もまとまらなくなる。NEMAWASHIはあくまでも結果重視で、利害調整のプロセスである。この違いが本質だとしている。

このようなことを含めて、NEMAWASHIは10の原則がある。この原則がこの本の最大の売りだろう。

1.NEMAWASHIは組織を泳ぐ必要悪ではなく、組織を動かす正当な必要技術である
2.義理人情型の根回しだけではグローバルビジネスで通用しない
3.NEMAWASHIは大義を負ったものが勝つ
4.NEMAWASHIの段取りは世界共通
5.嫌な相手のNEMAWASHIほど手間をかけて丁寧に
6.NEMAWASHIを説得だと考えるのは二流、NEMAWASHIの50%は相手の意向を聞き出すことに費やす。積極傾聴が基本
7.NEMAWASHIはマージナルな過半数をとっても勝ったと思うな
8.NEMAWASHIな一度成功すればそこがゴール...ではない
9.メールでNEMAWASHIするべからず
10.世界でも日本でもNEMAWASHIの切り札は人間力

本書の後半は、NEMAWASHIの方法について述べられている。大雑把にいえば

・キーパーソンを見抜く
・キーパーソンの落とし方
・手ごわいキーパーソンへの秘策

といったようなことを述べている。書かれていること自体はそんなに特別なことではないが、日本的な根回しの感覚でいえば、えっというようなことがいくつもあるだろう。

さらに具体的なスキルについても言及している。

・心構えと情報収集
・コミュニケーションの技術
・導入技術
・クロージング技術

などを説明している。こちらもステークホルダーマネジメントのスキルを持っている人には比較的よく知られているスキルが多いと思うが、足らない部分を取り込めばよい。

逆にステークホルダーマネジメントにあまり詳しくない人は、この本を枠組みにしてもいいのではないかと思う。そのようなクオリティの一冊。

コメント

良い本をご紹介いただきありがとうございました。

私も読んでみました。

外資系でも日本でも根回しはあるのですね。

ただ、若干論理と心理的なところの比率が違うらしい。

今日も根回しがんばります。

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好川哲人

技術士&MBA 技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。