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2014年10月28日 (火)

【イノベーション戦略ノート:057】質的効率を追求し、イノベーションを行う

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◆量的効率化

Situ

効率というと一般的には量的な効率をイメージすると思う。高度成長期から、生産量とか、売上などをいかに効率よく大きくするかに注力をしてきた。そして、この追求の中で、品質の高いものを、大量に少しでも安く提供するという価値観が定着してきた。これが量的効率化である。

量的効率の追求においては多くの改善が行われたが、一方で、イノベーションと呼べるものはあまり生まれてこなかった。正確にいえば、生産方式や流通方式などにおいては多くのイノベーションが生まれたが、製品イノベーションはあまり見られなかった。

今の日本は量の効率化を追いかけ、疲弊している。

このような状況に対して、国際政治学者の中西輝政先生は、「質的効率」という概念を提唱され、今必要なのは、量的効率ではなく、質的効率であるといわれている。

今回は質的効率という概念を使って、効率とイノベーションについて考えてみたい。


◆質的効率化

質的効率化とは、誰も(他者が)作っていないものを効率的に作ることである。ただ、ここでいう効率は量の効率とは方向性が違う。量の効率化がコストでの競争を目指すものであるのに対して、質の効率化は差異の大きさでの競争を目指しているといえる。

ただし、この議論は必ずしも「オンリーワン」の議論ではない。あくまでも効率の議論であり、最終的に利益に結びつく議論である。あけすけにいえば、量的効率はたくさん売って利益を生み出すのに対して、質的効率はできるだけ高く売って利益を生み出すことだといってもよい。

分かりやすい例をあげると、量的効率化を追求しているのがサムスンで、質的効率化を追求しているのがアップルである。

かつて、日本には匠の技と呼ばれるものがあった。ところが、高度成長期が終わり、どちらの方向に向かうかというところで、さらなる量の効率化を目指すようになったところで、「非効率」だという理由で廃れていった。


◆質的効率化を実現するアップル

これに対してジョブズがMacBook Airでやったことを考えてみてほしい。「ユニボディ」と呼ばれる技術で、本体のパーツをひとつのパーツで構成し、継ぎ目を設けない構成で、アルミ削り出しで実現している。これはなどは、匠の技以外の何物でもない。

そして、一見、同じようなデザイン、同じような操作性でも、他のPCやスマートフォンとは一線を画した製品に仕上がっている。このこだわりがアップル製品の他を圧倒する質感やクオリティを創り出していることは間違いないだろう。

ただ、アップルの本当にすごいところは、これを工業化してしまったことだ。アルミ削り出しでユニボティを実現することはできる。日本でもそんな商品は結構ある。しかし、それだけでは競争力にならない。低コストの大量生産製品と競合しないからだ。競争力にするには質的な効率化が必要であり、ジョブズは中国のEMS企業などをうまく活用してこれを見事にやってしまったわけだ。


◆デザイン思考の目指すところは質的効率化である

ただし、アップルの例は質的な効率化の特別な例かもしれない。少なくとも外野から見ている分にはジョブズという存在があって実現されたように見えるからだ。

もっと一般的にいえば、質的効率化を実現するのは真の意味でのデザイン思考である。真の意味だとわざわざ書いたのは、デザインにこだわることではないという意味だ。

ジョブズがデザインにこだわり、会社全体をそれにフォーカスした活動にしたように、デザイン思考のためには技術力だけではなく、いろいろなものが必要である。

たとえば、

・新しいことを重視する価値観
・差別化を重視する組織文化
・卓越したマネジメント
・バランスのよい財務体質

といったものは不可欠だろう。抽象的にいえば、よい会社であることが必要である。

そして、質的効率を求めていけば、自然とイノベーションは実現される。


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【参考文献】

中西輝政「本質を見抜く「考え方」」、サンマーク出版(2007)

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。