« 【補助線セミナー】みんなのイノベーション | メイン | ≪サプリ380≫野心を持つ »

2013年10月 2日 (水)

【イノベーション・リーダーシップ】第18話 イノベーティブリーダーの質問力(1)~質問の重要性 

◆イノベーションにおける質問の重要性

Situmon第8話から8回、イノベーションリーダーの「思考法」というシリーズをお届けした。イノベーティブ・リーダーが必要なスキルの第2弾は

「質問力」

である。

イノベーションにおける質問(問い)の重要性はさまざまな識者が指摘している。もっとも分かりやすいのは、「前提や常識は正しいのか」という質問だと思うが、何人かのイノベーションに関する識者はもっと体系的にこの問題を捉えている。


◆発見力としての質問力

イノベーションのジレンマでおなじみのクレイトン・クリステンセン先生は、このシリーズの最後のなる「イノベー ションのDNA」の中で、イノベーターに重要な資質である「発見力」を構成する要素の2番目に質問力を挙げ、質問が創造的な洞察を生み出す可能性があるこ とを指摘している。

そして質問を変えれば世界を変えることができると言い切っている。その例として、ジョブズの有名な質問を挙げている。ジョブズはアップルに復帰した時に

「金が問題でなければ、何をする」

という問いかけをしたと言われる。まあ、ジョブズの一生を見ると、常にこの質問は自問していたのではないかと思うが、この質問のインパクトは強力である。実際にこの質問により、iPodやiTune、iPhone、iPadを創出したわけだ。

このジョブズの質問が生きていれば、アップルは今後もイノベーティブな企業であり続けるだろう。

このような、破壊的イノベーションの効果のある抽象度の高いいくつかの質問を提示するとともに、質問力を高めるヒントを示している。

これらについては、この連載の中でも取り上げたい。

クレイトン・クリステンセン、ジェフリー・ダイアー、ハル・グレガーセン(櫻井 祐子訳)「イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル」、翔泳社(2012)

◆関連セミナー

PMstyleでは、イノベーティブ・リーダーの質問力を向上させる目的のセミナーを実施します。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ◆イノベーティブ・リーダーの質問力
           ~問いから始まるイノベーションの生み出し方◆(7PDU's)
  日時:2014年2月21日(土)10:00-18:00(9:40受付開始)   
  場所:ヴィラフォンテーヌ汐留コンファレンスセンター(東京都港区)
  講師:好川哲人(エム・アンド・ティ コンサルティング代表)
  詳細・お申込 http://pmstyle.biz/smn/inquiry.htm
  主催:    株式会社プロジェクトマネジメントオフィス
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 【カリキュラム】
    1.質問がイノベーションを生む
    2.誰に質問するのか
    3.質問の構造と技術
    4.イノベーションを生む質問
    (1)思い込みや常識を覆す質問をする
    (2)挑発的な質問をする
    (3)破壊的な質問をする
    (4)コンセプトを革新する質問をする
    5.質問力を養うには
    6.質問を行う場のデザイン
    7.質問ストーミング(ワークショップ)
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



◆キラークエスチョン

もう一つ例を挙げよう。ニューヨークでイノベーション関連の調査や教育を手掛ける会社を経営するリサ・ボデルは、イノベーションにはキラークエスチョンがあると指摘している。キラークエスチョンとは未来に目を向けた挑発的とも思えるような質問である。

たとえば、「今年の利益率はいくらか」といった質問では未来に目が向けられることはない。ところが、「来年とりくみたいことを3つあげろ」と質問すると、嫌でも未来に目が向く。このような質問のことだ。彼女が気に入っている質問の一つは

結局われわれは何のビジネスをしているのだろうか

という質問だそうだ。この質問は企業が常に自分たちの価値を見直し、イノベーションを生み出していくのに、非常に効果的な質問である。

リサ・ボデル(穂坂 かほり訳)「会社をつぶせ―ゾンビ組織を考える組織に変えるイノベーション革命」、マグロウヒル・エディケーション(2013)


◆FIRE

フィ ル・マッキニーも、「Beyond the Obvious」で質問の効用について述べ、FIRE (Focus, Ideation, Rank, Execution) というイノベーションマネジメントのプロセスを提唱している。これは、前提を訊いたり、5年間使われている顧客の購買基準を訊くと言ったものだ。

この本はもうすぐ、翻訳が出版される。

フィル・マッキニー(小坂恵理訳)「キラー・クエスチョン 常識の壁を超え、イノベーションを生み出す質問のシステム」、阪急コミュニケーションズ(2013)

このようにイノベーションにとって質問は極めて重要な意味を持っている。質問は必ずしも対話やグループセッションの中で発せられるだけではない。自問をすることも非常に有効な方法である。

自問を考える場合には、クリティカルシンキングと呼ばれる思考法とセットにして身につけると効果的である。


◆質問と何を組み合わせるか

次回以降は、イノベーティブ・リーダーが身につけるべき質問力について、上に述べたような指摘を紹介しながら、具体的に考えてみたい。ただし、クリステンセンが指摘しているように、質問はイノベーションにとって必要条件であっても十分条件ではない。

た とえば、フューチャーセッションはイノベーションを起こす効果的な手段である。しかし、フューチャーセッションだけでは机上の議論にすぎない。たとえば、 そこに、エスノグラフィー(観察)が組み合わさって質問の質も変わるし、よりイノベーションが起こりやすくなる。質問と同時にこのような組み合わせとして 何を考えればよいかについても考えてみたいと思う。

◆お知らせ

キラークエスチョンを集め、共有する活動をしたいと思います。関心のある方は、こちらのfacebookグループにご参加ください。

「キラークエスション研究会」

https://www.facebook.com/groups/607965929242093/

コメント

コメントを投稿

PMstyle 2024年4月~6月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

カテゴリ

Googleメニュー

  • スポンサーリンク
  • サイト内検索
    Google

最近のトラックバック

Powered by Six Apart

プロフィール

フォトアルバム

好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。