◆組織の掟
イノベーターの思考法として、重要だと言われながら、なかなか実行できないのが、「試行」や「失敗」に関する思考である。失敗への思考のむずかしさは、そもそも、失敗とは何かというところか始まる。
イノベーションは誰が行うのかという議論があるように、失敗というのは誰にとっての失敗かという話がある。組織というのは本質的に手柄は上司、失敗は部下という世界である。イノベーションはこの典型で、うまく行けば上司の手柄で、失敗すれば部下の失態になる(責任と書こうとしたのが、ちょっと違う)。
だからイノベーションは実態がどうれあれ、上司が知らないところで部下がやるという構図が美しいのだ。そして、うまく行きそうになれば上司が口を出してくる。悪いといっているわけではなく、スカンクワークでイノベーションを起こそうとしてもどこからかは組織が絡まないと日の目は見ない。その意味で組織とはそういうものなのだ。
現実には多くの場合、組織が絡んで、商品としての「コンセプト」ができることが多い。その意味で、上司の手柄というのもまんざら嘘ではない。順序の問題にすぎないともいえる。
◆「抽象的」な考えは机上の空論?!
7月24日に「リスクをとるリスクマネジメント」という公開講座を行った。創造的リスクマネジメントをしようというセミナーなのだが、受講者の方からアンケートで、「リスクが抽象的」、「具体的」とはどういうことかという指摘を受けたので、メルマガを使って補講してみる。公開講座に参加されていない方を念頭において書くので、受講者の方には被る内容があるのはご容赦戴きたい。
今年になって、コンセプチュアルスキルの強化を打ち出している。その活動の中での感触としては8割くらいの人(特に理系の人)はものごとを「抽象的」に考えても机上の空論にすぎない、「具体的」に考えるべきだと考えているようだ。ここについてはまだ、かみ合っていない感じなのでこれから時間をかけて抽象的なことも考えた方がいいよと伝えていこうと思っている。
この話を頭の中にどこかに残しておいてほしい。
◆「点と点をつなげる」
イノベーション・リーダーの思考法の中で、やはり、大切だと思うのは組合せである。組合せをいろいろと考えられる。これが大切だ。
スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式のスピーチ「ステイ・ハングリー、ステイ・フーリッシュ」で、真っ先に「点と点をつなげる」という話をしたのは有名だが、組合せの重要性を真っ先に言っているわけだ。実際に、アップルのiPodやiPhoneはいくつもの点と点をつないでできた商品である。
全文を読んでみたい方はこちらにある。
「ハングリーであれ。愚か者であれ」 ジョブズ氏スピーチ全訳 (日本経済新聞)
また、イノベーションという言葉を作ったシュンペーターもイノベーションは新結合、つまり、新しい組合せを見つけて、新しい価値を創り出すことであるといっている。
バックナンバー https://mat.lekumo.biz/ppf/cat9922971/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆3Mの15%ルール
ライアン・テイトというアワードのライターが「20%ドクトリン」と名付けた方法がある。勘のいい人はお気づきだと思うが、この命名は今ではすっかりと有名になった、勤務時間の20%は自由に使ってもよいというグーグルの20%に由来するものだ。イノベーティブな企業であり続けるための方策である。
ライアン・テイトの書いた本で紹介されているように、今や、大きな組織で20%ルールはそんなに奇異なものではなくなってきているし、スタートアップに20%ルールを使っている企業さえある。
グーグルが20%ルールをシリコンバレーに持ち込んだのだが、その元祖はポストイットで有名な3Mという会社である。3Mのポストイットと並ぶ代表商品の一つにスコッチマスキングテープがある。
この商品は副社長が中止を指示した開発を、一人のエンジニアが命令に抵抗して行ったものだ。このため、この商品は密造テープと呼ばれたそうだ。
◆視点は膠着する
人間は集中すればするほど、他のことが目に入らなくなってくる。そのため、常に目に入る範囲でしかものごとを考えることができなくなり、思い込みや固定観念に陥ってしまう。この問題のやっかいなことは、手ごわい問題に行き当たったときに、目に入る範囲には答えがないことがよくあることだ。
たとえば、あなたがアパレルの販売管理システムの開発をしているベンダーのプロマネだとしよう。顧客がどうしてもこの機能を追加してほしいと言ってきた。予算はない。このときに、あなたは一生懸命に
・もっと安く作る方法はないか
・仕様的に削れる部分はないか
・もう少し開発生産性を上げる方法はないか
といったことを考える。どうしてもアイデアがでなければ、顧客にどういう意向かを相談する。
このような症状はまさに、視点の膠着である。開発のことしか考えていない。このような状況に陥らないために、視点を変えることが大切である。
昨年1年は10周年記念のイベントにたくさんの方に参加していただき、ありがとございました。
PM養成マガジンは創刊2年目くらいから数年間セミナーを開催していましたが、PMstyleのセミナーに発展的に消滅しました。
昨年、1年間、改めてやってみてやはり、メルマガセミナーにはメルマガセミナーの良さがあると思い、復活させることにしました。
実は、10周年のクロージングでおこなった50分ほどのスピーチをセミナーにしてほしいという要望があり、4月に試験的に開催しました。なかなか、好評でしたので、このトライアルを発展させ、PM養成マガジンセミナーとして本格的に復活させることにしました。
メルマガセミナーの特徴は
・個人に受講できる価格
・個人で参加できる時間帯(土曜日か、平日夜)
・メルマガの内容とのある程度の関連性がある内容
・参加型
の4つです。
今年準備しているテーマは2テーマです。いずれも創刊以来、こだわり続けているテーマです。
好川哲人
技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。
最近のコメント