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◆ルーヴル美術館照明改修プロジェクト
今年から、PMI(R)がアジャイルPMPの認定制度の試行を開始した。米国のPMIでは、この4~5年、アジャイルに関連する活動が年々盛んになっている感があるが、今年はアジャイル元年だといってもよいだろう。ということで、今年最後の戦略ノートはアジャイルの話題。
「はやぶさ」ほど注目されることはないが、ある意味ではやぶさより示唆に富み、今年、アジャイル元年にふさわしいプロジェクトが大きな成果を上げた。
そのプロジェクトは東芝が実施した「ルーヴル美術館照明改修プロジェクト」である。ルーヴル美術館といえば美しいライトアップでも有名だが、このプロジェクトは、ルーヴル美術館のピラミッド及びナポレオン広場、奥のクールカレの外観ライトアップに用いる器具を、LED照明にすべて改修するものだ。目的はいうまでもなく、環境保全である。
東芝は日本で初めて、白熱電球の製造に成功した企業であるにも関わらず、昨年、いち早く、白熱電球の事業から撤退し、LED照明に特化した。ルーヴル美術館のプロジェクトのパートナー選定においては、この点が評価されたらしい。
◆「センスのよいプロジェクトマネジャーになるための6つのスタイル」
PM養成マガジンの10周年記念セミナーのタイトルを
「プロジェクトマネジメントを深化させるもの
~センスのよいプロジェクトマネジャーになるための6つのスタイル」
としたら、さっそく、突っ込みがあった。「センス」って何。来年は、この話題をしようと思っているので、とりあえず、前説。
「センスのあるプロジェクトマネジャー」と「センスのないプロジェクトマネジャー」がいることに異存がある人はそんなにいないだろう。
PM養成マガジン編集長の好川哲人です。
今回は、10周年記念セミナーの企画についてご紹介をしたいと思います。
PM養成マガジンでは、10月に1000号を迎えるにあたって、アンケートを行いました。その中で、PM養成マガジンのこれからの方向性や10周年記念セミナーについてもお尋ねしました。10周年記念セミナーは、その意見をかなり参考にして企画しました。
まず、グランドテーマは、「深化」としました。これはアンケートの意見の中で、「深掘り」というのが一つのキーワードになっているように感じたためです。
また、このキーワードに対して、「内省」というテーマを準備しました。PM養成マガジンの創刊当初からの好川の持論は、プロジェクトマネジメントはスキルではなく、キャリアに立脚するものであるというものです。
要望の中に、「はやぶさ」や「復興支援」などのプロジェクトの事例紹介を希望されている方がいらっしゃいましたが、まさにこういうテーマのプロジェクトはスキルでどうにかなるものではありません。
職業という意味よりもっと広く、人生という意味でのキャリアに立脚して、覚悟を持って取り組むものでしょう。この点において、プロジェクトマネジャーにスキルの指導をしてくれる人はいても、キャリアは自分で深く考えるしかありません。そのためのキーワードが内省(リフレクション)です。
また、「包括的」、「チーム」というキーワードも目立ちました。これらも、深化のキーワードの一つだと思います。話題性も考え、チームについては「ゲームストーミング」、包括については「システム思考」というテーマを準備しました。システム思考については、要望の中にあった、好川とのコラボトークというアイデアを採用させていただきました。希望されていたのは、PM実践者とのコラボでしたが、実はシステム思考の講師をお願いしました小田理一郎さんはMBA取得後外資系の企業で、バリバリのプロジェクトマネジャーだった方で、システム思考をテーマにして、PMの実践トークができるのではないかと楽しみにしています。
さらに、やっぱり多かったのは上のような社会的プロジェクトも含めた「事例紹介」への要望です。全体テーマを「深化」と決めた上で、事例を紹介するテーマということで、今回は、深化に不可欠な
・ユーザイニシャティブ
という切り口を取り上げることにしました。「なんだ、ITの話か」と思われるかもしれませんが、僕はITプロジェクトという切り口はナンセンスだと思っています。どんなプロジェクトにも成果の利用者はいるわけで、プロジェクトの成功のためには、そこで利用者が主体性を持つことが極めて大切だと思います。
たとえば、地域開発の話を聞いてくると、ユーザが主体的に動かないプロジェクトはきれいな技術を駆使して、スバラシイハコモノを作っておしまいです。住民参加というのが成功のポイントになっています。もちろん、ITも同じです。イニシャティブということで、事例をふんだんにお話して戴くセミナーを企画しました。
最後の1テーマは、PM養成マガジンからのプレゼンステーマということで、いろいろと考えたのですが、
オープンリーダーシップ
を取り上げることにしました。スピーカーを探すのに苦労しましたが、結局、僕がこのテーマに関して影響をうけた阪本啓一さんにお願いしました。
以上がアンケートのフィードバックです。ということで、具体的な内容は以下のようにしました。皆様の積極的なご参加を期待しています!
PM養成マガジン編集長の好川哲人です。
先日12月10日には、1000号感謝のイベントを行い、たくさんの方に来ていただきました。ありがとうございました。
メルマガセミナーは他のセミナーとは一味違い、メルマガでコンテクストの共有をしているもの同士の「深い」ダイアログを楽しむことができる、心地よい場だと改めて感じた次第です。
このイベントは10周年前夜祭という位置づけで行わせていただきましたが、いよいよ、PM養成マガジン10周年記念セミナーの受付を開始します。
グランドテーマは
「プロジェクトマネジメントを深化させるもの
~センスのよいプロジェクトマネジャーになるための6つのスタイル」
で、「進化」ならぬ、「深化」をテーマに6セッション行います。6回のセッションテーマと講師、日程は以下の通りです。
◆小さくて大きいこと
プロジェクトイニシエータはプロジェクトを起こすときに何に着眼するのだろうか?
・戦略
・ビジネス
・顧客・市場
など、いくつかのポイントがあると思われる。もちろん、このような視点は大切なのだが、もっと重要なのはインパクトである。プロジェクトイニシエータは
小さくて大きい
ことに関心を示す。
プロジェクトイニシエータのイメージは、組織の中で画策して、大きな予算のプロジェクトを立ち上げたり、顧客に対してうまく立ち回り大きな受託業務を取ったりするようなイメージではない(もちろん、これらも立派なイニシエーションであるが、イニシエータらしい仕事とはいえないだろう)。
12月10日(土曜)に、汐留にあるヴィラフォンテーヌカンファレンスセンターで、PM養成マガジンの1000号感謝イベントを行いました。
参加者が22名でしたので、最初の3時間は好川が簡単なインプットをして、ほぼ、2時間半くらい、全員で議論をしました。基調テーマは
「リーダーとしてのプロジェクトマネジャー」
でした。この基調で、どのような議論をしようかと手探りの議論をしているうちに、
「PMBOK流のプロジェクトマネジャーから脱却するには、どうすればよいのか?」
といった感じになりました。議論の質が極めて高く、一般のイベントのパネルディスカッションのレベルだったように思います(それも上質の)。好川個人としても、いつものコンサルの立場を離れ、PM養成マガジン編集長としてのエッジを効かせた意見を言えたので、非常に楽しかったです。
議論で出てきたキーワードは以下のようなものです。
・期待以上
・コミュニケーションの活性化
・顧客のために
・プロジェクトマネジメントのスコープ拡大
・小さくて大きいこと、レバレッジ
・メンバーの想いをチームの想いとして実現していく
・メンバーに内発的な動機が生まれる
このキーワードのいくつかは、10周年記念セミナーのテーマになっています。
そのあと、近くのイタリア料理店で懇親会をしました。懇親会に参加されたのは12名で、好川が座っていたテーブルで印象に残ったのは
・人は必ず育つのか
・洞察力はどうすれば身につくのか
でした。洞察力の話はやっぱり、興味深いです。興味のある方、こんなセミナーがあります。
ということで、とりあえず、前夜祭は終わり、来年から10周年の本番になります。
◆プロジェクトイニシエータとは
PMBOKの5つのプロセスの最初「立上げプロセス群」と呼ばれるプロセスの英語名称は「initiating process」である。そして、プロジェクトを立ち上げる人をプロジェクトイニシエータと呼ぶ。
プロジェクトマネジメント的な説明としては、
(プロジェクト憲章を)プロジェクトのイニシエーターまたはスポンサーが承認し発行することで、プロジェクト・マネジャーは、人・モノ・金の資源をプロジェクトのために使う権限を持つことができる。
という話になる。プロジェクトマネジメントは現場を中心にものを見ているのでこの表現は間違いではないし、ガバナンス的にも大方の組織(大企業)ではこのような仕組みになっている。少なくともプロジェクトマネジメントの中ではあまり重視されておらず、スポットも当たっていない。
◆PMBOKの人間関係スキル
PMBOKの第4版を見て以来、プロジェクトマネジャーのインターパーソナルスキルについて整理したいと思っているのですが、来年10周年を迎えますので、10周年特別連載として、書いてみることにしました。
PMBOK第4版の付録Gでは、以下のような記述があります。
プロジェクトマネジャーはプロジェクトチームおよびステークホルダを介して業務を成し遂げる。有能はプロジェクトマネジャーは、技術的スキル(テクニカルスキル)、人間関係スキル(インターパーソナルスキル)、概念化スキル(コンセプチャルスキル)をバランスよく身につけており、状況を分析し、適切に対応するうえでそれらのスキルを役立てている。
テクニカルスキルはプロジェクトマネジメントやプログラムマネジメントの技術スキルです。コンセプチャルスキルは、マネジャーに不可欠なスキルで、抽象的な考えや物事の大枠を理解するスキルです。具体的には、洞察力、創造力、構想力、戦略力、問題解決力、意思決定力などがあります。
さて、問題のインターパーソナルスキルです。PMBOKの日本語版では「人間関係スキル」と翻訳されています。一般には対人関係スキル、ピープルスキルなどいろいろな言い方がされ、微妙にニュアンスが違うことと、「人間」という言葉には手垢がついているような印象があります。そこで、カタカナ英語で「インターパーソナルスキル」と呼ぶことにします。
PMBOKではプロジェクトマネジャーのインターパーソナルスキルとして、
・リーダーシップ
・チームビルディング
・動機づけ
・コミュニケーション
・影響力
・意思決定
・政治的風土と文化に対する認識
・交渉
の8つを取り上げています。ちょっと面白いのは、一般的にはコンセプチュアルスキルに位置づけられることの多い意思決定をインターパーソナルスキルに位置づけていることです。説明を見ると、「プロジェクトマネジャーが一般に用いる意思決定のスタイルには、命令、相談、合意、成り行き(無原則)の4つがある」とありますので、意思決定の中でも行動を重視しているためだと思われます。なお、PMstyleでは意思決定は、コンセプチュアルスキルに含めています。
◆はじめに
予定よりだいぶ遅れたが、やっとこの連載も復習モードから、新しい内容へと移っていく。
これまで、主に戦略整合など、ガバナンスの話をしてきたが、まず最初のテーマとして戦略的にプロジェクトを行うことの意味を考えてみたい。
◆問題提起
まず、最初に問題提起をしたい。あなたは、SIプロジェクトの収益責任者(プロジェクトスポンサー)だとしよう。入札により新規顧客のシステム開発の案件を受託した。顧客が契約の際に、RFPに提示した以上の仕様の実現を要求してきた。さて、あなたはどういう対応をするか。
(1)開発予算を変えないことを前提に要求を受け入れる
(2)見積もり提案を楯にとって、拒否する
(3)顧客の意向に沿う再見積を提案し、仕様に見合う契約額を求める
(4)事業責任者の意向に沿う
(5)事業戦略に沿う
講演・研修でよくやるショートエクスサイズなのだが、どこの企業でも(3)と(4)が多い。メーカの場合には、SIプロジェクトを商品開発に変える。
あなたは事業計画で承認されている新商品開発プロジェクトのプロダクトマネジャーである。事業計画では、商品の簡素化による新規市場の開拓を戦略として開発が承認されている。ところが、開発プロジェクトが始まると、営業部門が既存顧客への配慮を求めてきた。平たくいえば、既存顧客にも売りたいので、従来の機能を残したままで、新規の機能を追加した商品にすることを求めている。さて、あなたはどういう対応をするか?
(1)原価を変えないことを前提に営業の要求を受け入れる
(2)事業計画を楯にとって、拒否する
(3)営業の要求を聞き入れることを前提に予算の調整を行う
(4)事業責任の意向に沿う
(5)事業戦略に沿う
こちらの場合、(1)が多い。意図的には、SIプロジェクトの場合と対応しているのだが、(4)はある程度いるが、(3)はほとんどいない。現実的にそうはならないからだろう。
好川哲人
技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。
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