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2009年12月 8日 (火)

【補助線】プロジェクトマネジャーのフォロワーシップ

◆フォロワーシップという考え方

「フォロワーシップ」という概念がある。くどくど説明するより、リーダーシップの逆の概念だと思ってもらうのがいいだろう。この概念は、1980年代に、リーダーシップの研究者だったロバート・ケリーが提唱し、1992年に「The Power of Followership」という本にまとめた。この本がバイブル的な位置づけになっている。

2~3年前から、日本でも着目する人が増えてきた。

ただ、リーダーシップが普及の初期において、「上司力」だと限定的に考えられていたように、現在のところ、「部下力」であると限定的に考えている人が多い。ロバート・ケリーが指摘しているように、リーダーシップがリーダーが目標とするものであるのに対して、フォロワーシップは「不快感」を与えるものである。従って、部下力と限定されているのではないかと思える。


◆フォロワーシップが必要なのは、平社員だけではない

部下力という言葉は、会社に入って2~5年目くらいの社員が、「偉い」マネジャーやリーダーに対して、自主的に手伝いをしたり、あるいはものを申すといったイメージだが、フォロワーシップは決してのそのようなものではない。

世界でもっともたくさん読まれているフォローワーシップのガイド「The Courageous Follower」のアイラ・チャレフは、このガイドはすべてのレベルのフォロワーシップに有効であると述べているが、新入社員とその上司の間でも、部長と事業部長の間でも同じ考え方ができるということで、まさに、シップである。

組織の中のさまざまなレベルでのフォロワーシップを重視している企業として有名なのは、スターバックスコーヒーである。スターバックを支えるのは、「情熱的なフォロワーシップ」であると言われている。詳しいことは書籍などでしか知るすべがないが、その成果は店舗でも垣間見ることができる。


◆プロジェクトマネジャーのフォロワーシップの必要性

さて、プロジェクトマネジメントの話に移る。プロジェクトマネジャーにはチームを引っ張るリーダーシップが必要だと言われる。このことについては全く異存はないのだが、リーダーシップだけでいいのかという思いはある。特に、戦略的なプロジェクトマネジメントやプロジェクトガバナンスを考えた場合、プロジェクトマネジャーにとって、リーダーシップを同じくらい、フォロワーシップが重要なのではないかと思う。

多くのプロジェクトマネジャーが指摘するように、上位のマネジャーが「仕事をしない」のでプロジェクトがうまく行かないという現実がある。このような現実を目の前にして、プロジェクトマネジメントなどやっても仕方ないという人も決してすくなくない。そこまでは言わないまでも、「自分たちは現場のプロジェクトマネジメントさえしっかりやればよい、結果としてプロジェクトがうまく行かないのは自分たちの責任ではない」というスタンスのプロジェクトマネジャーはかなり多い。

このようなプロジェクトマネジャーにもってほしいのがフォロワーシップとして、上位マネジャーをしっかりと支え、場合によっては意義を唱えていくことである。アイラ・チャレフは「The Courageous Follower」の翻訳のタイトルは、残念ながら「ザ・フォロワーシップ」となっているが、Courageousは「勇敢な」という意味。


◆勇敢なフォロワーシップ

アイラ・チャレフは勇敢なフォロワーシップは5つの勇気の上に成り立つとしている。

・責任を負う担う勇気
・役割を果たす勇気
・意義を申し立てる勇気
・(リーダーの)改革に関わる勇気
・良心に従って行動する勇気

戦略的プロジェクトマネジメントにおいては、この5つの勇気はすべて重要である。また、戦略実行の責任を担うこと。役割を果たすこと。そして、上位マネジャーや組織の行動が戦略実行において適切でない場合には、それに対して意義を申し立て、マネジャーの行動や組織を変えていくこと。その変革に積極的に関わっていくこと。そして、それらが正しく行われていない場合に、見過ごすことなく、指摘をしていくこと。


◆上位マネジャと共通目的を持つことからはじめよう

ロバート・ケリーによると、フォロワーシップの行動の源泉になるのは、「共通目的」である。プロジェクトマネジャーが上位組織に対してフォロワーシップを発揮するためには、まず、プロジェクトの目的を共有することから始めればよい。プロジェクトマネジメントの作法では、プロジェクトの目的は上位組織が決めることになっているが、その点にこだわる必要はない。

プロジェクトマネジャーが自ら目的を明確にし、それを上位マネジャーと共有できれば、フォロワーシップの成功は約束されるだろう。

プロジェクトを任された部下として、上位マネジャーとさまざまな交渉にあたり、顧客の要求を実現するような条件を引き出すのも悪いことではないが、これはあくまでも上位マネジャーがしっかりしていればの話だ。一方で、マネジャーを非難しながら、一方でたてるというのはナンセンス。

そんなつまらないことに時間を費やしているのであれば、フォロワーシップへの取り組みを試みてみてはいかがだろう。

そのために何をすればよいか?このブログでも時々、述べようと思っているが、待てない人は、とりあえず、アイラ・チャレフの本を読んで自分なりに考えてみてはどうだろう。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。