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2009年11月 5日 (木)

【補助線】顧客視点とはプロダクトライフサイクルの視点

◆プロダクトライフサイクルとプロジェクト

先日、第6回のPMstyleスペシャルセミナーを開催した。テーマは戦略経営におけるプロジェクトマネジメントのあり方。

フロアディスカッションの中で、顧客視点の話が出てきた。いつものことながら、IT業の人たちは、プロダクトのライフサイクルについて考えているのだろうかという疑問を持つ。

顧客の要求をうまく引き出し、また、品質管理に全力を尽くし、顧客が満足するシステムを提供しましょう

という。これはすばらしいことだと思う。

だが、システムのライフサイクルを考えて見ると、短くとも5年、長ければ10年を超えるようなことも少なくない。すると、当然のことながら、5年~10年先にどのようなシステムが求められるかという議論が必要になる。必然的に、本当にこういう議論ができるのかという疑問が生じる。

今の時代、5年先に組織や業務が現状のままと思っているとしたら、危機感がないと怒られるのが関の山である。ましてや10年となると、なくなっていてもおかしくない。組織や事業が変われば多くの場合、システムに求められるものも変わる。

◆顧客の要求と顧客満足

顧客の要求は

・不満足要因
・満足要因
・サプライズ要因

に分けることができる。不満足要因は品質のように充足できて当たり前のこと。満足要因は、「こんなことができるといいのにな」と顧客が思っていること。サプライズ要因は顧客が期待しなかったこと。不満足要因は契約で固める。顧客の要求を引き出すというのは、満足要因を分析していることになる。

ライフサイクルを考えた提案は「サプライズ要因」になる。おそらく、サプライズ要因を含む提案はほとんどプロダクトライフサイクルがらみになるのではないかと思う。一つは顧客の商品やサービスに対するコミットメントになるとこと、同時に、顧客もどのようなものが必要かが必ずしも分からないからだ。

つまり、サプライズ要因を作り出し、顧客満足を生み出すには、プロダクトライフサイクル視点が不可欠である。

ただし、サプライズ要因は満足要因のように、提案すればすっと顧客側が受け入れる類のことではないことに注意を要する。ある種の予測が含まれ、当然ながら受け入れの抵抗がある。つまり、顧客自身が変わらない限り、受け入れられることはない。当然、顧客というのは一人ではない。ユーザを初めとして顧客の中にもいろいろな利害関係者が存在する。特に大規模な投資だと、現場のユーザから、投資意志決定をするエグゼクティブまで、会社全体が顧客になる。

これが変わることはまさに企業変革である。サプライズ要因を提供し、顧客満足を得るというのはまさにそういうことだ。

◆自社の変化を予測できない顧客を如何に満足させるか

問題は、「顧客」が自社がどのように変わっていくかを予測できるかである。事業の性格によっても異なるが、予測できないケースが圧倒的に多いと思われる。このような状況で顧客を満足させるにはどうすればよいか。

一つの方法は、プロジェクトスコープを運用・保守まで加えてライフサイクル全体を捉えたものにしてやることである。これは90年代後半以降、アウトソーシングのサービスとして行われている。最近、ITプロジェクトマネジメントと、ITILとの統合を図る動きがあるのは、今まで現場でやってきたことをマネジメントで行う手段として注目に値する。

二つ目は、ライフサイクルと、プロジェクトフェーズをうまく整合し、顧客にとって筋肉質の投資になるようにプロジェクト(プログラム)を進めていくことだ。

いずれにしても、顧客のビジネスに積極的に関わっていくことになる。たとえば、商品を視野に入れたプロジェクト定義を提案していくようなことが不可欠だ。

三番目は、顧客の懐に入ってしまうという手がある。これは、たとえは、CDTのようなプロジェクトの作り方をすることだ。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。