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2009年10月28日 (水)

【補助線】提案はコンテンツではない、コンテクストである。

◆提案の要件

提案では、「提案内容」が問題になる。よい提案を作るには、相手(顧客)をよく知り、顧客の視点で考え、必要だと思うことを提案すればよい。そのためには、顧客とのコミュニケーションを適切にできることが重要である。

みなさんはこの文章を読んでどう感じるだろうか?

◆提案の例

さて、この問題を考えるために、みなさんがブティックに服を買いにいったときのことを考えてみてほしい。なんとなく気になった服を見ていると、店員が寄ってくる。

(接客1)
店員「どんなときに着られる服をお探しですか?」
あなた「そうだな、子供と遊ぶときかな」
店員「この服なんかどうですか、動きやすいし、家で選択できますよ」
あなた「似合っているかな」
店員「とてもよくお似合いだと思いますよ」

(接客2)
店員「どんな服をお探しですか?休日用ですか」
あなた「はい」
店員「休日は何をされることが多いですか」
あなた「妻が日曜は仕事のことが多いので、子供と遊んでることが多いな」
店員「この服なんかどうですか?子供さんと公園で遊んでいるとカッコいいですよ」

ケース1もケース2も、上に述べた文章に書かれている提案の要件は満たしている。だが、ほとんどの人は接客2で買うことはあっても、接客1では買わないのではないかと思う。ただし、エンジニアを除いてと書くと、失礼か。

◆合理的な問題解決だけでは提案にならない

接客1は合理的な問題解決のプロセスである。顧客の情報を得て、顧客視点で提案を考えている。コミュニケーションも問題ない。では、何が問題なのか?

接客2が接客1と異なるのは、一旦は服の話題を離れて相手の世界に入り込んでいる。そして、そこで、服を選ぶという行為をしている。これによって、あなたはこの店員が自分のことを十分に分かってくれたと思う。これが相手の提案を受け入れる下地になる。簡単な例なので多少わかりにくいかもしれないが、そのことによって、相手に影響を与えている。

最初に示した文章で抜けているのはこの点だ。

◆顧客理解とは、顧客を理解することではなく、理解されたと思わせること

顧客とコミュニケーションをする意味は、顧客理解をすることだけが目的ではない。いくら、十分に情報を得ることができても、仮に、顧客が十分に聞いてくれたと考えない限り、その情報に基づいて提案したとしても、受け入れられることはないだろう。

顧客にとってその提案はコンテンツに過ぎない。

つまり、コミュニケーションは影響プロセスでなくてはならず、まずは、きちんと理解してくれた、自分の問題を共有してくれているという思いを持たせることが先決である。そこで、初めて提案の内容が意味を持っている。逆にいえば、顧客に影響を与えられない限り、如何にすばらしい内容であっても、ほとんど意味がない。

プロジェクトでそのような提案活動をすることは服を売るより遙かに複雑であろうが、「提案内容」(コンテンツ)より、「提案プロセス」(コンテクスト)を考えるべきであろう。

イノベーティブな提案であればあるほど、コンテクストが重要になることは言うまでもない。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。