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2009年9月18日 (金)

【補助線】マニュフェスト考

◆「計画」に対するマインドセット

いよいよ、鳩山政権が発足した。政権交代もさることながら、なんと言っても「理系」それも、経営工学でStanfordのPh.Dを持つ鳩山由起夫氏が日本のリーダーになることが注目だ。良くも悪くも、社会の価値観や風土が変わるのではないかと期待が高まる。

ビジネス上で考えてみたときに、理系と文系の違いで目立つのは、(構想も含む広い意味での)計画に対する感覚だと思う。いいか悪いかは別にして、日本人のビジネスマンは「計画は計画、実施は実施」と考える傾向が強い。良くも悪くも人に依存した仕事の進め方をする。Aさん、Bさんの計画は単に計画に過ぎないと考える。リスクマネジメントまでを計画ベースで行うプロジェクトマネジメントが普及してきても、この計画に対するマインドセットはあまり変化していないように思える。ここが変われば相当な社会的インパクトがある。

◆マニュフェストを実行できる人材ではなく、あくまでも「人物」が重要の不思議さ

この変革の鍵を握っているのはマスコミではないかと思う。

選挙のときにマスコミが、マニュフェスト、マニュフェストと騒いでいたのは記憶に新しいが、政権政党であった自民党のマニュフェスト実行に関する本格的な検証のニュースはとうとう、お目にかからなかったような気がする。要するに、終わったことをぐたぐたと言うよりは、次に何をするかという方が重要だという発想だ。

今回の民主党の組閣のマスコミの論評を見ても、マニュフェストはどこかに行っている。その人物の「実力」、「実績」、「経験」、「キャリア」、「人脈」など、もっぱら人物主体の論評がなされている。あるいは、組織的な「配慮」などと盛んに書いている新聞もある。

本来、これらは「結果」であって、マニュフェストの実行のために「最適」な人材配置をしているはずなのだ。本当に最適化どうかはこれから分かるわけだが、マスコミが今の段階で評価すべきなのは、マニュフェストの実現のために今回の人選がどのようなメリットとデメリットがあるかであって、それ以外ではない。

◆過ぎたことは忘れ、先だけを見る

過ぎたことは忘れて、新しい気持ちで次の目標を設定して動く。これは日本人の強みでもあると思う。

経営やマネジメントでもこのような傾向は強い。目標の達成については大きく問題にしない。ただし、トラブルや問題が生じた点については、それを解決した方法をノウハウとして蓄積するし、それによって仕組みを改善することにも熱心である。

ただし、これは論理矛盾がある。検証されないということは、結局、計画段階で何を宣言しようがその場の議論になるだけで、どうでもいいということに他ならない。まあ、これも刹那を重んじる日本人らしいといえば、らしいのだが、、、

日本人という表現をしてきたが、おそらくこれは文系の発想である。理系の発想は、積み上げた計画を作ると、その計画に徹底的にこだわる。理系の鳩山政権はマニュフェストの実現にこだわるのではないかと思う。というか、マニュフェストが実現できなければ、丸く収まっても、あるいは、景気の立ち直りや労働環境の改善などの成果があったとして、理系的には失敗だと思う。

◆問題は結果ではなく、プロセス

もちろん、最終的に必要なのは、結果である。しかし、それはマニュフェストに書かれた「仮説」に基づき、いったんは行い、修正しながら行われるべきものであり、変革をするというのはそういいうことだ。仮に施策が麻生政権のものと同じに収まったとしても、その実現プロセスで得られるものは大きい。結局のところ、今回の政権に国民が期待するのはそのあたりではないかと思う。

もし、仮に鳩山政権がマニュフェストにこだわり抜く活動を展開し、成果を上げれば、社会的なインパクトが期待できる。ビジネスの世界でも、計画に対する価値観は大きく変わることが期待できる。がんばってほしいなあと思う。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。