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2008年10月28日 (火)

【補助線】合理性の限界

解決しようのない問題というのがある。

この場合の「解決しようがない」という意味には、常識の範囲、合理性の範囲というスコープ定義が隠されている。

たとえば、提案したスケジュールの半分の期間でやることを要求されたとする。当然、即座にできないと答えるだろう。できないというのには、前提条件がある。

・通常のリソース確保の方法
・通常の(支援)体制
・通常のパフォーマンス
・通常のリーダーシップ
・通常の業務方法(開発方法)

通常といわれることに抵抗があれば、常識的と言ってもよい。

なぜ、人はこういう対応をするのか?話は変わるが、標準化の議論と関係がある。標準化というのは、「(成功)予測」を作り上げることである。このやり方でやればできるというのを定めることである(実際の標準はそうなっていないものが多いが)。

ところが上のような状況は、予測を求めてみても役に立たない。可能性を求めることが必要である。そこで、可能性を求めるというマインドセットのない組織の場合には、すぐにできないという判断をする。

実際に上に前提条件と書いたが、多くの組織ではプロジェクトを実行するにあたって、明文化するかどうかは別にして、上のような前提をおいている。言い換えると、プロジェクトマネジメントの前提だといってもよい。そして、組織はリスクマネジメントだと称して、この前提を何とか維持をしてプロジェクトを実施しようと躍起になっている。つまり、

・通常のリソース確保の方法でできるプロジェクト
・通常の(支援)体制でできるプロジェクト
・通常のパフォーマンスでできるプロジェクト
・通常のリーダーシップでできるプロジェクト
・通常の業務方法(開発方法)でできるプロジェクト

に仕立てようとしているわけだ。

それはそれでいいのだが、いくらリスクマネジメントを行っても不確実性そのものをなくすことができるわけではない。不確実性は減ることはあってもなくなることはない。

すると、上の前提条件が怪しくなってきて、プロジェクトが失敗する。こんなケースが少なくない。

ドラッカーが面白いことを言っている。

リスクをとらない人でも一般的には年に二つくらいの大きな過ちを犯す。リスクをとる人も、一般的には年に二つくらいの大きな過ちを犯す。

失敗(予測)ということに関してこんなものだとすれば、可能性にかける戦略というのはありうるし、重要である。

常識を重視するかどうか、合理性を重視するかどうか、可能性を重視するかどうかというのはマインドセットの問題であるが、おかしな議論をしている人をよく見かける。常識を重視し、そのようなマインドセットで構築したやり方を引き合いに出して、可能性を重視するやり方は危険であるといった議論だ(逆はあまり見かけないが)。

たとえば、冒頭に示した例を常識を重視する意思決定やレビューの仕組みを持つ組織で行っても必ず失敗する。議論するまでもない。無謀というものだ。

解決できないと思われる問題を解決できるプロジェクトは間違いなく、可能性を追いかけるのであれば仕組みが必要である。これだけプロジェクトの条件が厳しくなってきているのだから、仕組みを作りながら可能性を追いかけるというスタンスの組織が出てきてもおかしくない。全治3年という経済状況であれば、今がチャンスかもしれない。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。