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2008年3月

2008年3月30日 (日)

【補助線】変わると混乱が起こる?

道路特定財源の問題もいよいよ、大詰めになってきた。なにもなければこのまま、暫定税率は一旦廃止になる。

この1か月くらいを見ていてつくづく思うのは、「変えない」ことを前提にした議論をしていることだ。自民党や自治体の言っていることは、他のことは変えないで、この部分だけを変えるという前提で議論をしている。

他のことは何も変わらず(変えず)、暫定税率分がなくなると、財政的な穴が空いて(予定している来年度予算が足らず)混乱が起こる。これは当たり前のことだ。新規の道路工事を一切やらないとしても、混乱は収まらない(まだ、足らない)。

だから、暫定税率を無くす(仕組みを変える)などあってはならないという論法である。

もちろん、政治的な配慮もあってそのような論法を取っているのだと思うが、これと同じ論法をみなさんの組織の中で聞いたことはないだろうか?あるいは、みなさんは使っていないだろうか?

たとえば、こういう論理がある。

計画書を丹念につくると、プロジェクト作業の着手までに時間がかかり、顧客に迷惑がかかり、かつ、プロジェクトリソースの活用もスムーズにいかなくなる。だから、計画書をあまり時間をかけてつくることは、混乱のもとだ。いままで程度に作っておけばよいのではないだろうか?

これは正しいのだろうか?

2008年3月28日 (金)

PMサプリ117:思考を楽しむ

思考を楽しむ(トム・マーカート、経営者)

【効用】
・PM体質改善
  顧客感度アップ、創造力アップ、問題解決能力向上、自己統制力アップ、
  計画力アップ、リスク管理力アップ
・PM力向上
  チームをまとめる力の向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

【成分】

◆忙しいから考える
◆目先のことを考える改善と戦略を考える計画の両立が必要
◆立ち止まって考えることでものごとの本質をつかむ
◆考えることを楽しめるか
◆行動が伴うので考えることが楽しい

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2008年3月21日 (金)

PMサプリ116:すぐれた成果は明確な目標から

すぐれた成果は明確な目標から始まる(リアス・カデム、ロバート・ローバー:コンサルタント)

【効用】

・PM体質改善
  アカウンタビリティ向上、リーダーシップ発揮、顧客感度アップ、
  問題解決能力向上、計画力アップ、バランス感覚の洗練、実行力向上
・PM力向上
  ピープルマネジメント力向上、チームをまとめる力の向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

【成分】

◆1ページマネジメント
◆必須のものだけを書くと1ページになる
◆すぐれた成果は明確な目標から始まる
◆膨大なスコープ記述書のできる理由
◆プロジェクトが1ページなら、上位組織は半ページでよい

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【補助線】スケジュールありきのプロジェクト

朝日新聞を見ていたら、また、道路工事予算の問題がでていた。

●国土交通省が所管する道路・街路関連の国直轄事業や補助事業のうち、02年度以降に完了・実施中の1176事業の過半数で、当初計画時より事業費が膨らんでいる。

●最終事業費が100億円以上にのぼる道路・街路関連事業は1176、判明した当初事業費の総額は約40兆6千億円。このうち当初事業費を上回ったのは597事業で、総額は約48兆4千億円(差額 7兆8千億)。

●当初の3倍以上に膨らんだのは21事業。理由は、「工場や病院、ガソリンスタンドなどの移転費用が増えた」「想定していなかったもろい岩質による崩落が発生した」など。用地補償費や工事費の見積もりが結果的に不十分だった。

●ひどい事例。青森県「白銀市川環状線」事業は完了が15年も遅れたうえ、当初の約24億5000万円が、5.8倍の約142億2000万円に。兵庫県主体の「阪神本線連続立体交差事業」は約152億8000万円が約839億8000万円に。

少し前に

計画されないプロジェクト
https://mat.lekumo.biz/ppf/2008/03/post-651a.html

という記事を書いたが、ここまでとは思わなかった。一応、工事積算基準、用地補償基準などはあるわけだから、ここまで来ると、費用対効果の数字を作るために、追加発注を前提にして当初見積もりを取っているのではないか?と疑ってしまう。

もっとも、仮にそうだとすれば倫理的な問題は感じるが、プロジェクトをコントロールできているという意味ではまだましかもしれない。これが無作為の数字であれば、事業者当事者としての能力に疑いを持たざるをえない。

前の記事でも述べたように、このような実態を作っている最大の原因は

 「スケジュールありき」

だろう。背景にあるのは、道路特定財源の設置当初からそうであったように道路が欲しいのではなく、工事がほしいという景気対策である。ゆえに、何が何でも計画通りに着手する。だとすれば、これでもまだ、よくやっている方だと言えなくもないか。

この構図は、企業のプロジェクトにもたくさん見られる。っていうか、これを裏返ししたのが、企業プロジェクトの実態だと考えてもよいだろう。道路工事を請けるゼネコンは、まったく準備ができていない状況で受注し、プロジェクトを走らせることになる。他の官庁でも同じだ。SI案件で予算だけつけて、仕様を決めないままで着手している例は少なくない。

あるSI企業では、内部調査で失敗プロジェクトの80%はスケジュールありきで実施していることがわかったそうだ。その大半は、「準備不十分なままで時計をスタートさせ、実質的に計画よりはるかに短い時間で完成させようとして品質の問題を起こしたか、納期遅れを起こした」だそうだ。

プロジェクトのスケジュールの要望は顧客が出すことが多いので、これを顧客側の問題に転嫁する人が多いが、実際に顧客の意見を聴くと、10年使うシステムで、10年間不適合で悩むよりは、1年カットオーバーが遅れる方がはるかにましだという意見が圧倒的に多い。

っていうか、要件定義ができないままでトラブって3年かかるよりは、プロジェクト開始を1年遅らせてでも要件を確定して、1年でやった方が、よほど早く、よいものができるだろうという短期的な話のような気もするが、、、

なんにしても、顧客側の問題だとかいって、ベンダーが言われたままで流されて、顧客ときちんと向き合った話をしていないだけだ。

つまり、スケジュールありきはほとんどは自分たちの事業成果(売上)の都合である。道路の比喩でいえば、サービスを提供することが目的ではなく、売り上げを上げることが目的なのだ。ゆえに、何よりもスケジュールが重要になる。国が景気対策で工事を作るのと、本質的に違いはない。

だからそんなプロジェクトのやり方は間違っているというほど、単純な話ではない。道路であれば政策の問題であり、企業であれば戦略の問題でもある。むしろ、問題なのは政策や戦略の中で成果に関する部分だけがひとり歩きしてしまって、その実現に必要な組織能力を持っていないことではないだろうか?実際に、道路についていえば、欧米の企業とはずいぶん生産性が異なるという話をよく耳にする。これは道路をつくる能力の違いだけではなく、労働政策とか、国土政策とか、総合的な政策の質の違いだと思われる。企業においても同じで、単にシステムを作る生産性の違いではなく、HRM、組織マネジメントなど、さまざまな要因がシステム構築の生産性に表れているように思う。

ここをなんとかしなくてはならない。

2008年3月17日 (月)

【補助線】プロセス、行動規範、仕組み

エンジニアはプロセスが好きである。ある意味で当り前だ。工業製品であっても、ソフトウエアであっても、工芸品であっても、作り上げるまでのプロセスは必ずあるからだ。逆にいえば、プロセスがないとすれば再現性がなく、エンジニアリングとはいえない。

エンジニアからプロジェクトマネジャーになっていくとき、一皮むけるというのは、この信仰ともいってよいプロセスへのこだわりを捨てることだろう。

たとえば、PMBOKの43のすべてのプロセスはインプットとアウトプットでつながっている。つまり、プロジェクトマネジメントを一つのプロセスで表現することが可能だと言っているようにも思える。たしかに、プロセスの「インプット→処理→アウトプット」の定義には当てはまっている。しかし、処理の内容をみればそうではないことは一目瞭然だ。処理の内容は思いっきり属人的なものがふんだんにある。というか、属人的ではない処理(ツールと手法)はほとんどない。したがって、形式的にはプロセスにしているが、再現性はほとんどない。

PMBOKはまだしも、プログラムマネジメント標準となると、技法とツールはすべてのプロセスに対してひとつである。つまり、インプットとアウトプットを明確にしているだけで、他は何も定義していない(これは、次のバージョンでは変わるらしいが、PMBOKレベルのツールと技法を指定するのは不可能だろう)。

したがって、OPM3やPMCDFといったメトリクス系の標準を使って、プロセスの品質を均質化させることを目指しているのだ。

これがマネジメントであり、正解がないということだ。ここで、よく認識しておくべきはこのような背景であるにも関わらず、PMIがプロセスに拘る理由はアカウンタビリティの確保だと思われる。仮に処理がなくても、インプットとアウトプットを明確にしておけば、アカウンタビリティを高めるには大変有用である。

これに対して、IPMAはコンピテンシーを中心に標準化をしようとしている。プロセスを決めるのではなく、マネジメント行動として何をすべきかということを標準化しようとしている。

結果として、PMIとIPMAの標準というのは同じところに落ち着くのではないかと思うが、このポリシーの違いは大きいし、重要だ。トップダウンの管理をするために最も重要なポイントはアカウンタビリティの確保である。アカウンタビリティを確保した上で、あとは状況を見ながら指示していく。これが米国流プロジェクトマネジメント。(マネジメントの)行動規範を作っておき、それを実行させることで成果を生み出す。これが欧州流プロジェクトマネジメント。

もちろん、どちらの地域でも多くの企業はグローバル化されており、こんなステレオタイプの議論ができるような状況ではないのだが、なんとなく、イメージに合うのではないだろうか?

さて、日本はどうか?僕は米国流でも、欧州流でもないように感じている。日本には日本流がある。それは、何か。仕組みを作って成果を出すことだ。仕組みとはシステムである。システムとはプロセスと行動規範を合わせたものである。これが日本人の智慧だと思う。

プロセスでも行動規範でもなく、仕組み作りのプロジェクトマネジメント。エンジニアからプロジェクトマネジャーに脱皮するとはこの脱皮ではないだろうか?

2008年3月14日 (金)

PMサプリ115:顧客に聴く

「仮説と検証」により初めて「顧客に聴く」ことができる(セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文会長)

【効用】
・PM体質改善
  創造力アップ、計画力アップ、実行力向上、顧客説得力アップ、
    問題解決能力向上、リスク管理力アップ、
・PM力向上
  チームをまとめる力の向上、ビジネスセンスアップ、リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

【成分】

◆顧客の要求を聴くとは?
◆潜在ニーズを掘り起こす仮説思考
◆情報システムでも潜在ニーズの掘り起こしが必要
◆コラボレーションをするために必要なもの

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2008年3月10日 (月)

【補助線】プロジェクトリーダーをやる気にさせるもの

◆プロジェクトリーダーのやる気はメンバーのやる気

これ自体が僕の持論かもしれないが、プロジェクトメンバーをやる気にさせるには、プロジェクトリーダー(マネジャー)がまず、やる気になることが必要だ。

たとえば、ステークホルダからのやる気を削ぐコンタクトは自身が全部引き受けるというプロジェクトマネジャーは結構多い。一種のメンタリング行動だと思うが、これを喜々としてやっているプロジェクトマネジャーも結構いるが、多くの人はそれで自身は疲れ切って、やる気をなくしている人も少なくない。そんな様子をはたから見ていて、メンバーがやる気になって自分の仕事をやることはあまり考えられない。

これでは何をやっているかわからない。リーダーが腐れば、メンバーが腐り、チームが腐る。間違いなくこの伝染はある。

一方で、一人だけテンションが高いなどと揶揄されながらも元気一杯のリーダーがいる。こういうリーダーに出会うと最初は引くメンバーが多い。そこから先はリーダーの力量の問題もあると思うが、ずっとそんなふるまいを続けていると、馴染んでくることがある。慣れてくるのではない。なんとなくそんなものかなと思うのだ。これこそがやる気が伝染した瞬間である。

素晴らしいリーダーで、瞬時にチームの雰囲気を変えるような人もいるが、意外と、最初はメンバーに引かれてもかまわずそのふるまいを続けるリーダーのチームの方がトータルのパフォーマンスは高かったりするものだ。

しかし、リーダーが一定のやる気を持ち続けるのはそうたやすいことではない。

◆プロジェクトリーダーのやる気の源泉?

リーダーに「どのような環境になればやる気が出ますか」と質問したときに帰ってくる3大回答は

(1)やりがいのある(評価される)プロジェクト
(2)権限(好きなようにできる)
(3)優秀なメンバー

である。

ところが、本当にこれだけ準備すると、やる気を出して仕事をしてくれると思うと大きな間違いだ。

確かに最初は張り切って、絶対成功させますなどと宣言するのだ。

ところが、どれだけ優秀な人を集めようと、途中に挫折のないプロジェクトなど、めったにあるものではない。トラブルになったときに、多くの人は

(1)やってみたら全然面白くなかった。重要だと言っている割には何もしてくれない
(2)表向きは権限があることになっているが、実際には上の意見に逆らえない
(3)あいつ、みんなが評価しているけど、ぜんぜん、できない

と豹変する。条件が3拍子そろうことなどまずないので、これが3つ揃うこともないが、ひとつひとつの例をあげれば枚挙にいとまがない。

◆結局は本人のとらえ方次第

どこに問題があるのか?

やりがいがあるかどうかは、本人が決めることだ。ここに「評価」といった「邪念」を持ち込むので、混乱するのだが、評価されるかどうかというのは結果であって、やりがいがあるかどうかというのは本人のプロセスなのだ。端もかけられなかった商品開発が伝説に残る成功になったなどよくある話だし、一見さんなので適当に押し付けられたシステム開発が顧客の大満足を得てリピートにつながることも珍しいことではない。評価を考えても仕方ないというつもりはないが、少なくともそのプロジェクトの開始前の評価など、どうでもいい話であることは間違いない。

(2)についてはもっとひどい勘違いである。権限を持つ経験がなかった人に権限が委譲されても、そう簡単に使えるものではない。ましてや、自分が権限を持ったからといって周りが動いてくれるわけではない。権限は「与えられ、持つもの」ではなく、「奪い、使うもの」だ。

たとえば、人事権があれば人をプロジェクトに引き込んだり、メンバーとして動かすことができると思っているプロジェクトマネジャーが多いが、そんなプロジェクトマネジャーに限って権限に従って動いていない。よいか悪いかは別にして、日本の組織というのはそんなガバナンスの効く組織ではないのだ。権限シンドロームにかかっているだけだ。

つまり、権限を持っても、その権限を自身がうまくつかわなければ何も変わらない。(2)はそれがうまくできないプロジェクトマネジャーの愚痴にすぎない。

(3)は勘違いの極みである。人の能力には絶対値がある。その意味で、できるできないもある。しかし、ある仕事で、一人ひとりの人の能力を引き出すのはリーダーの役割だ。日本の管理職はほっといて成果を出してくれる人とできると言っていた。こういうことをいうプロジェクトマネジャーは100%この傾向がある。その意味で勘違いだ。

◆やる気を引き出すスタンス

ぼろくそに書いたが、3つの条件がやる気の源泉になっているというのは直観だろうし、その人にとって間違っていないのだと思う。だとすれば話は簡単だ。これらが現実のものになれば、プロジェクトマネジャーはトラブルになってもやる気を維持しながら切り抜けていける。つまり、

(1)やりがいがあると思う
(2)もっとうまく与えられた権限を使うことができるはずだと思う
(3)もっとうまくメンバーの能力を引き出すことができるはずだと思う

の3つでプロジェクトマネジャーのやる気は維持されることになる。こんな持論はどうだろうか?

2008年3月 9日 (日)

【補助線】計画されないプロジェクト

◆計画の位置づけの違い

テレビの道路特定財源の議論を見ていたら、なるほどなと思ったことがある。

日本の道路のコストがなぜ高いのかという議論なのだが、欧州では道路は計画に時間をかけて実現性を持つように徹底的にやる。その代わり、計画が終われば、「計画通り」速やかに工事計画を作り、工事をするので、結果として、企画から供用までの時間は欧米の方がはるかに短いという。

ところが日本は、最初の計画は作るが、実現性は工事での調整任せ。着工すると、できるところから予算をつけてやることになる。ゆえに、とびとびに作り掛け道路が点在しているのだそうだ。

なるほどなあと思った。この問題で、以前、テレビで国道8号線の高架化工事のいきさつの特集をやっていた。一応、計画を作って、タウンミーティングをやる。何回かやっているのだが、住民のコンセンサスは得られていないどころか、報道を信じれば圧倒的に反対住民が多い。にも関わらず、今後もタウンミーティングを続けながらも、計画通りに着工手続きに入り、進めていくというのだ。

基本計画の調整ができていないままで、工事にバトンを渡している。

これでは、いくら、工事計画を精緻に作ろうとその通りに実行できるはずはない。実際に工事を始めると、現場では想定していなかった障害が飛び出してくる。

◆なぜ、コストが高くなるのか?

プロジェクトマネジャーのみなさんなら、まあ、これは最後まで計画通りにいかないと思うのではないだろうか?

では、プロジェクトオーナーは何をやろうとしているのか?とりあえず、キックオフする。そして、比較的、反対住民の少ない箇所から着工し、既成事実を作って、反対住民が多いところを切り崩していく。

ただし、この切り崩しが、当初予算どおりにできるはずがないのは、自明の理だ。既成事実化すれば、土地が上がるし、何らかの補償をするにしても、補償金を上げることが「合理性」を持ってくる。当然、当初計画よりはるかに大きなコストがかかる。役人がリスク管理をしていないはずはないので、おそらく、確信犯でやっているのだろう(リスクをとっているわけではない。リスクを識別して無視しているのだ)。

当然、工事コスト自体もよけいにかかるのも明らか。ところが、ここでも既成事実が意味を持つ。「今、止めてしまうと、今までの投資はすべて無駄になる」というロジックで押し切れるからだ。

◆SIプロジェクトのロジック

実は、このロジック、SIプロジェクトで行われていることに瓜二つ。ポイントは以下の3つだ。

・徹底的に基本計画をせず、大雑把な基本計画でとりあえずプロジェクトを始める
・問題がでてきたら、予算の積み増しを要求し、継続する
・今、やめたら、これまでの投資が無駄になると継続の合理性を主張する

この構図は、SIベンダーを非難しているように聞こえるかもしれないが、違う。3つとも、ユーザ側のプロジェクトマネジャーにとってもそうするメリットがあり、利害が一致するのだ。

計画を詳細化すればするほど、意志決定しにくくなるし、時間がかかる。また、変更がしにくくなる。変更をするのは、担当者にとってみれば一生懸命仕事をしていることのエビデンスだと言えなくもない。そして、中断しないのは一蓮托生である。

このような利害の一致があるがゆえに、止められない。そして、大けがをする。

◆ユーザ側の理性と計画

ただ、ユーザ側に「理性」があると、こんなことにはならない。先日の新聞にこんな記事が載っていた。

=====(抜粋開始)
静岡県を地盤とする地方銀行のスルガ銀行(本店・沼津市)は6日、銀行業務に関する基幹コンピューターシステムの開発を契約通りに行わなかったとして、開発委託先の日本IBM(本社・東京都港区)に約111億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした
 関係者によると、スルガ銀行は2004年9月、銀行業務全般にかかわる基幹システムを刷新するため日本IBMとシステムの開発契約を結び、開発費用の一部はすでに日本IBMに支払っている。ところが、新システムの稼働を予定していた08年1月を過ぎても稼働のめどは立っておらず、開発費用も当初の予定額より膨らんだため、支払った費用の返還などを裁判で争うことにしたという。
 スルガ銀行は日本IBMとの開発契約は破棄したと主張しているが、システム開発自体は引き続き進めるとしている。
 日本IBMの広報担当者は、「このような訴えを起こされるのは異例だ。訴状が届いていないので詳細は分からないが、スルガ銀行との契約上の義務は果たしたと認識している」と話している。
=====(抜粋終了)

たぶん、記事の内容からすれば、契約の方法などにも問題があるように感じるが、ここで区切りをつけようとしたのは、まさに「理」だとも感じる。

ちなみに、スルガ銀行は横並びしないことで有名な地銀だ。何よりも、スルガ銀行を有名にしたのは、バブルの時に踊らなかった数少ない銀行であったこと。同族経営の強みだと言われているが、まあ、経営や、戦略を感じる企業である。

この記事は、SIプロジェクトのプロジェクトマネジメントは日本で活動しているベンダーとしては頭一つ抜けているという評判のIBMであることがもう一つのポイントだろう。これ以上は憶測になるので控えるが、このような事態が発生するのも、道路の問題と同じく、「計画」という作業の「位置づけ」に問題があるのではないかと推測される。

2008年3月 8日 (土)

PMサプリ114:自らの実行計画を理解してもらう

成果を上げるためには自らの実行計画を理解してもらわなければならない(ピーター・ドラッカー、思想家)

【効用】
・PM体質改善
  アカウンタビリティ向上、計画力アップ、リスク管理力アップ、実行力向上
・PM力向上
  ステークホルダをコントロールする力の向上
・トラブル緩和
 モチベーション向上

【成分】

◆1対1の関係を前提とする日本人
◆プロジェクトマネジャーを介したチームコミュニケーション
◆コミュニケーションは組織の在り方
◆自身の計画を理解してもらうという発想が原点
◆仕組み作りの重要性

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【補助線】プロジェクトリーダーがやる気になるための持論

◆メンバーのやる気の源泉はリーダーのやる気

こんな記事をPM養成マガジンのマイナーなコーナー「PMコンピテンシーを高める一冊の本」に書きました。

=====

プロジェクトマネジャーで、メンバーのやる気を気にする人が多いが、それよりも問題なのはプロジェクトマネジャー自身のやる気だ。

常にハイテンションのプロジェクトマネジャーだとメンバーがつかれてしまうといったことを言う人もいるが、プロジェクトマネジャーにやる気がないのに、メンバーがやる気まんまんなどといったプロジェクトなどまず、お目にかからない。

プロジェクトマネジャーは自身のやる気をうまくコントロールしなくてはならない。

=====

これは、神戸大学の金井壽宏先生の書かれた「やる気攻略法」という本の書評として書いたものです。この本では、モチベーションの高め方を実践家の事例を通じて考えています。

ワークモチベーションは誰にとっても身近なテーマで真剣に仕事に取り組んでいる人であれば、必ずといってよいくらい持論を持っているテーマです。

みなさんは、プロジェクトリーダーとして自身の持論を持ち続けるにあたって、どんな持論をお持ちですか?

◆好川のリーダーとしてのモチベーションを高めるための持論

ちなみに僕は、自分の活動に常に意味付けをしながら、プロジェクトを回していくようにしています。「やらされ」のプロジェクトでも考えてみれば、何か意味があるはずです。

それは、プロジェクトマネジャーとしてのキャリアを深める、スキルを向上させるといった個人的なことではありません。

僕はキャリアアンカーが僕のキャリアアンカーは「創造」ですので、よけいにそう感じるのかもしれませんが、自分がこのプロジェクトで何らかの社会貢献できるということで、モチベーションをコントロールしています。

僕のセミナーを聞かれた方は、僕が異様に「プロジェクトの目的」にこだわっていると感じられている方もいらっしゃると思いますが、これも根っこは同じ話です。

(注)キャリアアンカーとは、キャリアを選択する際に最も大切な他に譲れない価値観や欲求のことで、有名なのは、エド・シャインの提唱した5つである。
自律:組織に属さず、何事も自分の力でやろうとするタイプ
創造:自分自身の何か(製品、会社、サービス)を生み出したいタイプ
技術・職能:スキルを中心に自分キャリアを作っていくタイプ
安定:キャリアの安定に何よりも関心を持つタイプ
管理:組織の中で、より管理・統制できる地位への出生に関心を持つタイプ

◆みなさんの持論を共有しましょう

このテーマについて、みなさんがお持ちになっている持論を共有しませんか?コメントに書き込んでもらえるか、あるいは、好川まで直接、メールをください。メールの場合は公開してよいかどうかも書いておいてください。

ここで、みなさんの背中をおすために、持論とは何かを整理しておきたいと思います。

金井先生は、ビジネスインサイト誌で、「持論とは」ということでこんな定義をされています。

=====

持論とは、学者が構築する公式の理論とは異なり、実践家が意識的にせよ無意識にせよ実際に用いているセオリー(theory-in-use)を指す。

金井壽宏「ワーク・モティベーション論における古くて新しい展開 -経営学における持(自)論アプローチのモティベーション論への適用-」、ビジネスインサイト、No.55 より抜粋

=====

多くの皆様は、モチベーションの問題に限らず、なにがしかの持論をお持ちではないかと思います。

持論のイメージがわかない人はぜひ、この本を読んでみてください。多くの実践家のモチベーションに関する事例が紹介されています。

「やる気要塞」を攻略しよう!

どうすれば持論を整理できるか、見当のつかない人は以下の記事を読んでみてください。持論を発見するステップになりうるエクスサイズを紹介してあります(金井先生の作られたものです)

メンバーのモチベーションの源泉を知る

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。