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2007年12月

2007年12月31日 (月)

【補助線】プロジェクトマネジャーの美学

今年最後のメッセージです。

みなさんはプロジェクトマネジャーとしての品格について考えてみたことがありますか?
なければ、ぜひ、お正月にでも考えてみてください。

たとえば、川北義則さんは著書「男の品格」の中で

   品格とは何か? 美学である。

と書いています。

よく、「昔と比べると最近のプロジェクトマネジャーは小さくなった」という言葉を耳にします。これに対して「経営環境も、プロジェクトの質も違う」という反論もよく耳にします。

僕は基本的には後者の言い分を支持するのですが、たったひとつプロジェクトマネジャーの質で違いがあるとすれば、美学が持つかどうかではないかと思います。

20代でプロジェクトマネジャーを任されて、すでに自身の美学を持っている人もいます。一方で、40代後半で100人規模のプロジェクトを管理しているのに、美学の「美の字」も持ち合わせない人も少なくありません。

必ずしも後者ような人がうまくできていないわけではありません。

だからこそ、美学なのです。ある意味で、自己満足ですが、すべての仕事の最終ゴールは自己満足だともいえます。

これはとても大切なことです。自分が満足できない仕事で、お客さまが満足するなど、あり得ません。ただし、順番を間違えないでください。自己満足は最後にあるゴールです。これを最初のゴールや中間ゴールにしてしまうと大問題になります。

そして、最初のゴールや中間ゴールではなく、最終ゴールにするために必要なのが「美学」です。来年は美学を探す1年にしましょう。特に若いプロジェクトマネジャーの方は美学を持ってください。

こちらの記事でヒントになる本を紹介しています。

では、来年もよろしくお願いします。

2007年12月28日 (金)

PMサプリ105:部下にはバナナを投げ続けよ

部下にはバナナを投げ続けよ(マイク小池ソニックウォール日本支社代表)

【効用】
・PM体質改善
  創造力アップ、実行力向上、顧客説得力アップ、問題解決能力向上、
・PM力向上
  チームをまとめる力の向上、ビジネスセンスアップ
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

【成分】

◆モンキーマネジメント
◆「投げる」はタブー?
◆「投げる」と「渡す」、どっちが人が育つか?
◆プロジェクトでパフォーマンスを上げる方法

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2007年12月25日 (火)

【補助線】人を好きになろう!~愛と真心のプロジェクトマネジメント

◆近藤さんの人間愛

先日、PMAJ(日本プロジェクトマネジメント協会)のITベンチマーキングSIG「プロジェクトマネジャーの成功条件」の活動で、有限会社ウィンアンドウィンの近藤哲生さんのお話を聞く機会があった。近藤さんは

実用企業小説 プロジェクト・マネジメント

という本で、なかなか、理論的な本では言いにくいさまざまな考えを発表されている方で、僕も注目しているプロジェクトマネジメントコンサルタントの一人である。近藤さんの本を読んでみると、できそうでなかなかできないことが結構書いてある。たとえば、できる人を重用するというのは口でいうのは簡単だが、いざ、やろうとするとさまざまな壁にぶつかる。どうやって評価するのか、評価されなかった人はどうやって動機付けするのか、などなど。

実際にお話を聞いてみると、この本に書かれているようなことをご自身実践されているとのころ。どうすればできるようになるのでしょう?とおたずねした。近藤さんの考えはある意味で単純だった。

「人間愛」

だと断言されたのが印象的だった。

◆愛のないヒューマンスキルなどあり得ない

実は、このSIGもヒューマンスキルに注目しているのだが、最近、プロジェクトマネジャーのヒューマンスキルに注目する人が増えてきた。それはそれでいいことなのだが、どうも釈然としないものがある。それが、近藤さんの言葉でいえば、人間愛があるかどうかだ。僕たちは人が好きかどうかという言い方をしている。

たとえば、メンバーに動いてほしいとしよう。動機付けの方法とか、チームの雰囲気を作るとかいろいろなことをする。しかし、「愛」のない人がいくらやってもあまりよい結果を生まないように思う。

この違いが出てくるところは、「相手を味方だと思えるか」どうかだ。メンバーに動いてほしい。このときに、自分の味方になって動いてくれるだろうと思えるかどうかだ。この点について懐疑的な人は、どうしてもスキルに頼って動かそうとする。

こういう言い方をすると、現実的ではないとか、裏切られるに決まっているという人が結構多い。そう思うこと自体が味方だと考えられない証しだといえよう。

◆ステークホルダを味方になると考えられるか?

これが顕著なのが、ステークホルダマネジメントである。上司や顧客を本当に動かしたいと思うのであれば、まず、すべきことは、味方になると信じることである。ハリネズミにようによろいを身にまとっている限り、交渉も説得もすべて不毛なもののような気がする。
リーダーシップに関心を持つ人であれば、ケン・ブランチャードの名前は聞いたことがあると思う。ワンミニッツ(1分間)シリーズが多くの人に支持されている組織とリーダーシップのコンサルタントである。そのブランチャードが中心になって書いた

新・リーダーシップ教本―信頼と真心のマネジメント

という本がある。この本は、専門経営者と教授と牧師の3人がじっくり考え抜き、議論し、煮詰めたキリストに学ぶリーダーシップ論である。

何人ものリーダーやマネジャーにこの本を紹介してきたが、どうしても宗教的なにおいに引いてしまうようだ。例外なく、これは宗教的だという。しかし、(他)人を愛したり、好きになったりすることは、宗教とは別の次元の話である。

プロジェクトマネジャーは人を動かさないと仕事にならない。そのためには、Win-Winのような論理的な価値交換が必要なことはいうまでもない。しかし、これは人を愛すること、あるいは、人を好きになるといった感情的な関係を基盤として初めて成り立つ関係である。ビジネスの世界の話なので、愛があれば、お金など関係ないなどというつもりはない。そうではなく、論理的な取引が効力を発揮するために愛が必要なのだ。

ビジネスに感情的な関係を持ち込むのはいやだという人も少なくないだろう。もし、論理的な関係だけで済むのであればそれもよい。しかし、済まないから、コミュニケーションであり、ヒューマンスキルが注目されているのだ。

この領域に足を踏み込むのであれば、人間を愛する、人を好きになるといったことを一度真剣に考えてみる必要がある。

2007年12月24日 (月)

【補助線】プロジェクトマネジメントのポイント

◆「ハーバード流」プロジェクトマネジメントのポイント

最近、この本を読んでいて、プロジェクトマネジメントとして最低限することってなんだろうか?と考えてしまった。

その本とはこれ。

メアリー・グレース・ダフィー(大上 二三雄、松村 哲哉、上坂 伸一、エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社訳)「プロジェクトは、なぜ円滑に進まないのか」、ファーストプレス(2007)この本では、プロジェクトをスムーズに進めるためのポイントとして

・必要なリソースを見きわめる
・目標をはっきりと定める
・途中で必要な修正を施す

という点にポイントを置いている。

◆よく言われるポイント

マネジメントとしてプロジェクトマネジメントをとらえれば当たり前のことだが、今、一般的に考えられているポイントと微妙に違う。いわゆるプロジェクトマネジメントの識者に尋ねると、たぶん、この3つの上の2つの代わりに、「ステークホルダとうまく話をつける」、「リスクを上手に管理する」の2項目が入り、

・ステークホルダとうまく話をつける
・リスクを上手に管理する
・途中で必要な修正を施す

の3つのポイントを上げる人が多いような気がする。組織文化の違いはあるが、おそらく、マネジメント「感」が違うのだと思う。というより、プロジェクト感が違うといった方がよいかもしれない。

◆プロジェクトに対する見方、捉え方

プロジェクトは組織から与えられた目標の達成だと考えていると、だいたい、こういう答えになるだろう。要するに目標達成の阻害要因を排除することと、目標が変わった場合の対処をうまくやることに尽きるということだ。

2004年にダイヤモンド社から、

すぐに解決!プロジェクト―30分で読める!プロジェクト成功の秘訣がわかる!

という本が出版されている。ファーストシンキングシリーズと銘打って何冊か出ている中の一冊だ。この本では、

・プロジェクトの目的が何かを明確にさせる
・本当の責任者を見極める
・周囲の力を借りる

の3つにポイントを置いている。スコープを明確にすることも、リスクに対応することも明示的には入っていない。たとえば、周囲の力を借りることにより、リスクに対応している。

◆トム・ピータースのセクシープロジェクト

また、トム・ピータースの

セクシープロジェクトで差をつけろ!

でも、ポイントになっているのは、

・プロジェクトの目的を明確にする
・多くの人を味方にする
・走りながら考える

の3点である。やはり、プロジェクトやスコープマネジメントは明示的にははいってこない。

この問題は真剣に考えてみる必要がある。

みなさんにとって、3つのポイントを上げるとすればなんですか?

2007年12月21日 (金)

PMサプリ104:非常時にこそ、真の上司の品格が顔をのぞかせる

非常時にこそ、真の上司の品格が顔をのぞかせる(小笹芳央・リンクアンドモチベーション代表)

【効用】
・PM体質改善
 アカウンタビリティ向上、リスク管理能力アップ、実行力向上、問題解決能力向上
・PM力向上
 プロ意識の向上、実行力向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
 弱気克服、プロジェクトにおける辛さの克服

【成分】

◆上司の品格
◆プロジェクトマネジャーの品格
◆品格のないプロジェクトマネジャー
◆品格を保つためには

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2007年12月17日 (月)

【補助線】プロジェクトマネジャーの理解

◆前回の復習

前回、PMOがプロジェクトの支援をうまくできなかったケースを紹介した。

前回、価値観が違うという問題を指摘した。今回は、もう少し、このあたりを考えてみたい。

◆価値観以前の問題~相手が味方になると考えるか?

価値観の違いというのがどこから起こるかという議論をしなくてはならないのだが、それ以前の問題としてスタンスの問題がある。プロジェクトマネジャーとPMOの間の関係において意外と重要なのが、「味方になると考える」ことができるかどうかだ。

プロジェクトマネジャー側から見れば、PMOを味方だと考えている人はそんなに多くないのではなかろうか?理由はいろいろある。いろいろな対応が面倒だと思うプロジェクトマネジャーもいるし、上位組織の代理人だと思っている人もいる。

一方で、PMOがプロジェクトマネジャーが味方になると思っているかというと甚だ疑問であMikata る。たぶん、多くの人は、自分たちは味方なのに、敵対視していると思っているのではないだろうか?これも理由はいろいろある。

このような状況の中において、味方になると考えない限り、相手の価値観を理解し、相手のために何かするということはできないように思える。結局のところ、前回述べたように、自分の価値観で何かをしてそれで終わってしまう。終わるだけならまだよいが、お互いに仕事の本質とかかけ離れたところで手間を取るという最悪のケースになることもある。相手を味方だと思う努力をし、もし、思えないようなら下手に支援をしない方がお互いのためだ。

◆目的を明確にし、付き合う範囲を限定する

プロジェクトマネジャーを味方だと思えたら、次に考えるべきことは、目的を明確にすることだ。PMOで勘違いしている人が多いのはここだ。PMOの活動の目的は「プロジェクトの成功です」と考える人が多い。以前にも述べたがPMOの機能体系はいろいろなものがあるが、その中で、標準化/コンサルティング/ナレッジマネジメント/人材育成の4つに分けるという考え方がある。このうち、コンサルティングについてはPMOの活動目的はプロジェクトの成功であるが、それ以外は違う。少なくとも一義的な目的ではない。
たとえば、標準化を主活動とするPMOであれば、よい標準を提供することが目的であり、プロジェクトが成功することは結果にすぎない。ここを混乱し、目的を「プロジェクトの成功」としてしまうと、おのずと便利屋、マンパワーお助け部門の道をたどることになる。また、標準化PMOがプロジェクトの成功という目的を掲げた場合、プロジェクトマネジャーからすれば、互恵関係の構築のために何をすればよいかを明確でなくなることも問題である。

いずれにしても、目的を明確にし、自分が何のために活動するのか、そして、どういうことをしてもらうとうれしいかを明確にすることは極めて重要なポイントである。

◆プロジェクトマネジャーを理解する

その上で、プロジェクトマネジャーを理解することが必要である。理解のポイントは3つある。ひとつはプロジェクトマネジャーがどういう仕事かということだ。これが理解できていないPMOスタッフはいないと思うが、逆に本当に理解できているPMOスタッフもそんなに多くはないだろう。要するに、自分のPM経験の中で理解しているだけというケースが多く、ここはあらためていく必要がある。

二つ目は、ステークホルダからどういう期待を受け、また、どういうプレッシャーを受けているかである。この点は支援の際には丁寧に聞いていく必要がある。

もうひとつ重要なのは、「プロジェクトマネジャーが何をもとに評価されているか、報酬を受けているか」である。PMOスタッフでも比較的組織キャリアの長い人はこの点をよく理解できているのだが、若いスタッフがうまく支援できていないケースを見ると、この点に対する理解不足がきわめて多い。単にプロジェクトの成功という業績だと思っていると、日本の組織ではまずうまくいかない。

いすれにしても、これらを中心にして、相手の価値観はできている。

◆交換手段が必要

ここまでくれば価値観が明確になり、価値観に訴えるにはプロジェクトマネジャーとどのような価値交換の構想はできてくるだろう。そこで、具体的な関係構築に入る。

関係構築において、重要なのは「カレンシー」と呼ばれる概念である。カレンシーとは通貨のことで、お互いに相手の価値観に適合した価値の交換をするための手段である。たとえば、あなたがよりよい人事評価を得るために、一生懸命働いているとしよう。この場合、一生懸命働くことがカレンシーになっている。

実は、前回紹介した事件が問題なのは、価値観であるとともに、カレンシーがうまく交換できていない点にある。

カレンシーについては、また、次回。

2007年12月15日 (土)

【補助線】角を矯めて牛を殺す

◆最近のプロジェクトの特徴

最近のプロジェクトによく見られる課題がある。

・スケジュールにチャレンジ要素がある
・リソースにチャレンジ要素がある
・仕様があいまいである
・新しい技術へのチャレンジにより、技術的不確実性がある
・今まで全く知らない人とチームを作って取り組む
・チームが分散している
・プロジェクトの中間的なスコープが変化する
・・・

などだ。このような課題がまったくないプロジェクトは珍しいだろう。

米国では、こういった課題のプロジェクトに対して、PMBOKに代表されるような「確定的な」プロジェクトに対して有効なマネジメントが本当に有効なのだろうか?という議論がある。アジャイルプロジェクトマネジメントやライドブレーンプロジェクトマネジメントといった手法が登場してきている。

◆手法ありきの傾向が強い日本

ところが、日本の企業をみていると、このような要素を含むプロジェクトに対して、PMBOKを適用するには何をすればよいかを考えている組織が多い。もちろん、手法を導入するというのはそういうことだから、頭ごなしにそれが悪いということではない。

問題はバランスである。

PMBOKは基本的には上位組織がプロジェクトを「管理」するには、プロジェクトはどのようにマネジメントされていればよいかという発想で作られている。しかし、すべてを管理しようとしても定型業務ではないのだから難しい。そこで、与える権限を明確にして、権限委譲をするようになっている。これに使われるツールがたとえば、プロジェクト憲章である。

ただ、権限委譲というのはそんなに簡単にできることではない。任せるだけであれば「丸投げ」ということで簡単だが、多くのプロジェクトはプロジェクトマネジャーやプロジェクトのエンパワーメントをしなくてはうまくいかない。

結果として、プロジェクトマネジメントを導入してもうまくいかなかった。その分析をしてみると、明らかになったのが冒頭に述べたようなプロジェクトではうまくいっていないという現実だった。

◆2つのアプローチ

ここで多くの組織は2つのアプローチをとることにした。ひとつはこのようなプロジェクトに対応できるようなプロジェクトマネジャーの育成である。一言でいえば、コンピテンシーやヒューマンスキルを持ったプロジェクトを育成しようとした。これは、今でも盛んに行われているが、そんなに短時間でできるものではない。

そこで現実策として出てきたのが、組織のマネジメントによりプロジェクトの性格を変えてしまうことだった。まず、リスクマネジメントと称して、チャレンジ要素を最小限に抑えてしまう。これがもっとも多い。また、不確実性の回避として、ゲート(レビュー)を設けたフェージングを導入した組織も多い。さらにはスコープマネジメントとして、変更管理を中心に行うのではなく、変えないということを前提にした運営を始めている組織も少なくない。

つまり、プロジェクトを定型業務化する方向に走っている。この効果は大きい。プロジェクトの失敗が減ってきた。

◆弊害と対策

これだけであれば、ハッピーエンドなのだが、弊害も見られるようになってきた。競争力の低下だ。商品の機能を落としてみたり、SIサービスの顧客満足を低下させるということがかなり、目につくようになってきた。もちろん、クオリティとチャレンジのどちらが組織の競争力になるかは事業の性格や組織文化によって異なるので、チャレンジをあきらめたすべての組織がそうなっているというわけではないが、競争力を落とすというのが特殊ケースという状況でもない。

この問題の根底にあるのがスポンサーシップである。スポンサーが管理主義に陥ってきて、市場や顧客のニーズに十分な対応するものができない組織が増えてきた。結果として、そんな仕事に対してやりがいを見失っている人も少なくない。

こうなってくると、PMBOKの適用だという話ではなくなってくる。明らかにバランスを失い、手法に合わせて業務を変えるという状況になってくる。

このままでいくと、角を矯めて牛を殺すことになりかねないことをよく認識しておく必要がある。

2007年12月14日 (金)

PMサプリ103:必要なのは日々の準備

激変する時代に対応するために必要なのは日々の準備だ(三木谷浩史 楽天会長)

【効用】
・PM体質改善
  問題解決能力向上、リスク管理力アップ、現象観察力アップ
・PM力向上
  リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

【成分】

◆和洋折衷の成功のコンセプト
◆常に改善することの目的
◆リスクマネジメントによる常在戦場と現場力

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2007年12月10日 (月)

【補助線】PMOとPMのレシプロシティ

前回は、PMOが作る標準というのは、その通りにやればプロジェクトマネジメントがうまくいくというものでなくてはならないということを述べた。ただし、マネジメントである以上、それは現実的に難しい。そこで、標準化のプロセスそのものを考え直す必要があることを指摘した。

◆PMOとプロジェクトマネジャーの関係の基本は「互恵関係」

今回は、少し、視点を変えて、この議論の本質を考えてみたい。この議論の本質にあるのは、「レシプロシティ」だと思う。日本語では「互恵関係」という。簡単にいえば、「よい行動には見返りが、悪い行動には報復が戻ってくる」というものだ。

ここで、多くのPMOスタッフが頭を悩ますのは、何がよい行動かということである。

たとえば、あなたが

「上位組織のマネジャーが入る定例のレビューミーティングで、プロジェクトマネジャーの進め方に賛成の態度を示す」

と、その見返りとして、プロジェクトマネジャーは

「プロジェクトであなたが提唱する標準的な手法を使って、成果を作ってくれる」

といった行動をすることを期待するだろう。このような価値の交換が生じるのはレシプロシティである。

何でもない話のようだが、これは以外と難しい。その理由は、価値であるので、決めるのは相手であり、自分である。つまりは主観である。思いつきや、自分の価値感で行ったのでは、相手はそれを評価しない。

相手に評価されないと、人間だれしも、「なんだ、あいつ」という感情が芽生える。

こんな事件があった。

◆ある事件

プロジェクトマネジャーがプロジェクト計画書をなかなか出さない。プロジェクト計画書を出さなければ建前上はプロジェクトは承認されず、作業に着手することはできない。このプロジェクト担当のPMOスタッフは時間がないので、苦労しているのだと思い、そこで、良かれと思って、代わりに計画書のたたき台を作って渡した。プロジェクトマネジャーは一応受け取った。

そこまでしてやったのだから、当然、すぐに計画書が出てくると思っていたが、依然として出てこない。後でわかったのは、このときに顧客側が経営陣の異動があり、計画がひっくり返りそうになっていた。落札はしたもののまた、入札はしていない。プロジェクトマネジャーは、まず、この問題をなんとかするのが先決だと考え、顧客の社内提案の支援をしていたのだ。この時点で、プロジェクトマネジャーは計画書を書いてもらってもありがたくもなんともかなったので、当然、ほったらかしにしていた。

一方、PMOスタッフは顧客の問題に立ち入っていくのはPMOとしては行き過ぎだと考え、できる範囲で最善を尽くしたと思っている。にも関わらず、プロジェクトマネジャーは何もしない。最初はやんわりと言っていたが、だんだん、攻撃的になってきた。計画書も出していないのに、契約前に顧客に入り込んで仕事をしているというのはどういうつもりだといったことを言い出した。

不幸にもこの企業のPMOは結構強く、最終的にこの声は通ってしまった。事業部長が出てきて、プロジェクトマネジャーに対して、顧客の内部の問題に首を突っ込むな、それよりは提案通り(内示通り)の内容という前提で社内の準備をしろという裁定をした。

どれだけの因果関係があるかは分からないが、結果としてこのプロジェクトは顧客側で中止になった。

この事件における、PMO側の問題は何だろうか?これは理屈をいうのは簡単である。たぶん、まっ先に出てくる答えは状況を理解していなかったという答えだろう。ただ、理解していなかったわけではない。プロジェクトマネジャーとも話をしていたし、顧客側の状況も知っていた。

この問題の本質は、価値観にある。PMOスタッフは、自分たちは間接部門であり、プロジェクトマネジャーが稼いでいる。プロジェクトマネジャーの仕事を助けて利益が出るということを分かっていたにも関わらず、本当にそうは思っていなかった。社内ルールを守るということと、顧客へのサービスをすることを比較したときに前者が勝っていたのだ。えてしてこんなものだ。

では、どうすればよかったのだろうか?これは次回。

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【補助線】顧客との互恵関係

◆顧客はだれか

顧客との良好な関係を保つことは難しい。といよりも、対立的な関係になることが少なくなり。なぜだろう?

プロジェクトからみたときの顧客と言ってもいろいろなケースがある。典型的なものだけでも以下のようものがある。

まず、SIプロジェクトのように顧客に直接商品を売って対価を得るという関係がある。この場合は、プロジェクトの顧客=エンドユーザとなり、これがある意味でもっともわかりやすい。

多くの消費材商品のように市場があり、エンドユーザはいるが、その顧客へ届く経路に流通がある。この場合、プロジェクトにとっての(ステークホルダ)としての顧客は、顧客の声の代表ということになる。

生産材商品であれば、メーカが直接営業するケースも少なくない。この場合には、デリバリチャネルとしての流通はあるが、プロジェクトとしての実質的な顧客は自社内の営業部門のように、エンドユーザに影響力を持つ部門であることが多い。良いか悪いかはその営業部門の活動内容の問題なのでさてき、これも一種の社内顧客である。

社内の情報システム開発のようなプロジェクトだと、社内の利用部門が顧客になる。文字通り、社内顧客である。

◆エンドユーザとそれ以外という区分

これらを同じように扱うのは難しいかもしれないが、大きく分けてしまえば2つに分けることはできるだろう。エンドユーザとエンドユーザ以外である。

エンドユーザとそれが以外は何が違うかというと、「目先」の利益である。インターネットが普及してきて顧客と提供者の関係についての変化が盛んに言われるようになってきたが、モノにしろ、サービスにしろ、エンドユーザの手に届かないものは買えないという事実は変わらないし、すべてのものが宅急便で運べるわけではない。はやり、流通は強いし、今までの通り、流通までと、その先という区分は根強く残っている。

プロジェクトにとってみると、エンドユーザの満足を実現するのは、QCDとのコンフリクトがありので、苦労を伴うが、困難ではない。プロダクトスコープの問題である。

ところが、エンドユーザ以外を考えると、顧客として満足させることは非常に難しい部分がある。なぜか。

◆カレンシーを見つけるとうまくいく

ここで面白い概念をご紹介しよう。コーエン&ブラッドフォードが「影響力の法則」というフレームワークの中で言っている概念で、カレンシーという概念である。カレンシーとは言葉としては通貨のことだが、通貨というはもの代わりに登場したものだ。つまり、相手からの何かを得たい場合には、対価が必要になる。エンドユーザの場合は、商取引であるので、文字通り、通貨がカレンシーになる。通貨を得るためにニーズに沿う商品を開発するわけだ。

流通であれば、まだ、通貨で行けるかもしれない。要するに仕切りを下げておけば何とかなるかもしれないが、多少、複雑である。ボリュームが出てくるからだ。つまり、100円の利益が上がって、100個売れそうなものと、10個の利益があって1000個売れそうなものはどちらがよいかという話になる。これはやや難しい。

顧客が社内の営業部門となると、カレンシーとして使える資源となると、ぱっと思いつかないだろう。ある営業マンはたくさん売れて自分の給料が上がることに価値を求めるかもしれないし、ある営業マンは顧客が喜ぶことに価値を見出すかもしれない。ある営業マンは営業部長が気にいるものであることに価値を見出すかもしれない。こんなことを考え出すときりがない。わけがわからない。

顧客との関係がうまくいくということは、このカレンシーをうまく見つけることができて、それをうまく提供できるということだ。

◆カレンシーは主観である

ここで重要なポイントは何がカレンシーになるかは価値観の問題であり、主観的な問題であることだ。流通の話で、100円の利益が上がって、100個売れそうなものと、10個の利益があって1000個売れそうなもののどちらを選ぶかはおそらく、組織としての主観(意志)の問題だ。つまり、戦略なり、ビジョンの問題である。営業部門の話になると、プロジェクトとの関係は営業部という組織よりは担当者との関係になり、ゆえに、営業担当者の主観の問題である。

さて、SI。上で分かりやすいといったことに違和感を感じた方もいらっしゃると思うが、結局のところ、同じ問題だ。違和感を感じた人は、組織かプロジェクトチームか個人かという見極めが難しいと思っている人だと思う。

実はこの問題は腹をくくって決めてしまうのがよい。たとえば、プロジェクトだと腹をくくれば、そのプロジェクトの意見を組織内に通していくことそのものがカレンシーになり、ステークホルダマネジメントになるからだ。

相手の組織の状況をみて、中途半端な態度をとるので、スコープ変更が起こるのだ。相手を徹底的に支援して、その見返りに、手戻りの防波堤になってもらう。たとえば、こんな関係を作っていくのだ。これが互恵関係である。

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好川哲人

技術士&MBA 技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。