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2007年5月

2007年5月28日 (月)

【補助線】「正しいプロジェクト」とは何か

重要なことは、正しいプロジェクトを正しく行うことだ。

このような認識が日々、強くなってきている。正しく行うというのはプロジェクトマネジメントをきちんとすることとイコールだと考えてよいだろう。では、正しいプロジェクトとは何か。

例えば、どう考えても無理なスケジュール目標(納期)を決めてしまえば、いくらプロジェクトマネジメントをきちんと実施してもプロジェクトは成功しないし、それはプロジェクトマネジメントの問題ではない。どう考えても赤字になるような金額で受注してくる場合も同じ話しだ。

つまり、プロジェクトの目的に対して、その目的を達成できる範囲で、実行可能な目標を設定したプロジェクトが正しいプロジェクトというわけである。

ちなみに、今までは、プロジェクトマネジメントがあまりきちんと行われておらず、プロジェクトの「正しくなさ」の責任もすべて現場(プロジェクトマネジメント)に転嫁されていたが、プロジェクトマネジメントの普及により、ここにきて、この転嫁ができなくなり、この問題を直視せざるを得なくなってきたという事情があることも忘れないでおきたい。

ところが、ちょっと考えてみると、この話は不可解な点があることがすぐに分かる。「なぜ、明らかに無理な納期を設定するのか」、「なぜ、最初からオーバーすると分かっているような予算を設定するのか」といった疑問が生じる。この理由はそんなに難しいものではない。

SIプロジェクトだと例えばこうなる。

「戦略計画達成のためにはこのお客さんからの受注を取ることは必須だ。他にも2社、引き合いをしている。うちとしては、多少、納期もお客さんの準備している予算も厳しいが、提案せざるを得ない。外注を駆使して乗り切ろう」

商品開発プロジェクトだと例えばこうなる。

「戦略計画達成のためには、この商品はこの時期までに上市をせざるを得ない。これより遅れると競合商品が出てきて、売上げ目標が変わってしまう。まだ、未解決の技術問題があるが、それはなんとかお金で解決しよう」

これから分かるように、「正しいプロジェクトを行う」ためには、戦略計画を達成するためのアプローチが大問題になってくる。例えば、上のSIの例であれば、「このプロジェクトは諦めよう。その分のリソースを他に転用して利益を作ろう」と考えることが必要である。

言い換えると、戦略計画達成のためには、どのプロジェクトをやるかが大きな問題になってくる。ただし、ここに、単に戦略計画達成の視点以外の要素が入ってくる。つまり、正しくないものを正しくする方法がある。それは組織としての生産性をあげることである。あるいは、技術力をあげることである。

プロジェクトレベルの生産性の向上はチームマネジメントなどで取り組んでいくが、組織レベルの生産性の向上は戦略課題である。戦略計画の実行に併せて、この戦略課題の解決によって、「正しいプロジェクトを行うこと」と、「正しく行うこと」のバランスが取れてくる。

これをわれわれは、「正しいプロジェクトを正しく行う」に加えて、「正しい組み合わせをする」といっている。

正しい「組み合わせ」ができてはじめて、「正しいプロジェクト」を立ち上げていくことが可能なのだ。このためのマネジメントが必要である。これがポートフォリオで取り組んで行きたい部分である。これを積み上げだけでやっていると、プロジェクトの優先順位が考慮することができない。

結果として戦略計画が達成できればいいじゃないかと考える人もいるかもしれない。これは間違い。リスクに対する配慮が足らない。

また、ここで、戦略そのものが上げ底である可能性もあるので、注意を要する。例えば、引き合いのある仕事をすべてとっても達成できないような戦略計画を作るケースだ。まあ、これはそもそも戦略計画とはいえないが、売上げ絶対時代の名残で今でもこのような経営計画を作っている組織は少なくない。これは論外。収益率を高めて、人を育てることという視点からもう一度、戦略の見直しをすべきである。

2007年5月25日 (金)

PMサプリ77:リスクを覚悟したコミュニケーション

コミュニケーションをとるにはそれを実行した場合にリスクや損失のあることを覚悟しないと、本当の意思疎通はできません(ソフトブレイン創業者 宋文洲)

【効用】
・PM体質改善
  アカウンタビリティ向上、顧客説得力アップ、バランス感覚の洗練、
  リスク管理力アップ、問題解決能力向上
・PM力向上
  チームをまとめる力の向上、ステークホルダをコントロールする力の向上、
  リスク対応力向上、プロ意識の向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、プロジェクトにおける辛さの克服

【成分表示】

◆以心伝心はあるか?
◆コミュニケーションをする覚悟!
◆覚悟のないコミュニケーション
◆コミュニケーションの覚悟がプロジェクトマネジメントを変える

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2007年5月23日 (水)

はじめてのプロジェクトマネジメント

Gavanance_3 PM養成マガジンの5周年の企画で「はじめてのプロジェクトマネジメント」というセミナーを行った。

そのセミナーの1枚目のスライドが左のスライドだ。

まあ、プロジェクトガバナンスの説明を最初に持ってくるプロジェクトマネジメントセミナーなどあまりないと思うが、これをやりたかった。

ガナバンスからみて、プロジェクトマネジメント活動を、プロジェクトマネジャーの仕事、プロジェクトスポンサーの仕事、エグゼクティブの仕事、PMOの仕事と区別し、その中で、プロジェクトマネジャーの仕事だけを抽出し、説明するというセミナー。

メルマガ発刊当初のセミナーで大切なのは、プロジェクトマネジャーに求められる責任は、レスポンシビリティではなく、アカウンタビリティだと説明した。それはこの図式があるからだ。

にもかかわらず、タコツボプロジェクトに閉じこもって、アカウンタビリティを果たさないプロジェクトマネジャーは少なくない。今回、これをきちんとまとめた。

この議論を上級者向けの議論だと思わないでほしい。卑しくも、マネジメントの一端を担うものであれば、基本中の基本である。

京都が残っているので、まだ、書くのは早いかもしれないが、告知では一切触れなかったが、実はこのセミナータイトルの「はじめて」というのは、今まで、なかったプロジェクトマネジメントの見方をしようというチャレンジ。だから、メルマガ5周年としてやった。その見方で、初心者向けのセミナーを作ろうと思った。それなりにうまくできたと思っている。

ドラッカーは「マネジメントの導入はイノベーション」だと述べているが、まさに、(組織の)イノベーションとなるようなプロジェクトマネジメントを考えて行きたいと思っている。

5年間、メルマガをやって思うことは、結局、プロジェクトマネジャーがこの構図をきちんと理解できていないし、組織も(確信犯的に?)この構図を作ろうとしていない。

作った瞬間に、総論として「弊社のプロジェクトマネジメントにはいろいろと問題がある」といいながら、自分の監督する個別のプロジェクトの話になると、「あのプロジェクトから問題は聞いていない」ことにしようという、「お気楽マネジャー」ができなくなるからだ。

これから5年は、プロジェクトマネジャーが行うプロジェクトマネジメント以外に、この構図をしっかりと組織で共有できるようにすることに努力したいと思っている。プロジェクト環境のマネジメントである。その第一歩として、プロジェクトマネジャー側のすべき認識作りのセミナーがこれ。

このあと、PM養成マガジンの5周年企画は、第2弾、第3弾とやる予定だが、「プロジェクト環境のマネジメント」についてもやる。お楽しみに。

2007年5月21日 (月)

【補助線】プロジェクトマネジャーとMBA

プロジェクトマネジメントにどのような知識が必要かと聞くと多くの人は、

・プロジェクトマネジメントの知識
・業務(技術)の知識

の2つをあげる。最近では、さらに、ここに

・ヒューマンスキル(人間系)
・チームマネジメント

というをあげる人も増えてきた。

本当に、これだけでいいのだろうか?

これが問題提起だ。

結論を述べておこう。これだけでは足らない。いわゆるMBAの知識が必要である。それはどのようなものか?

(1)経営戦略
(2)マーケティング
(3)コスト
(4)ファイナンス

の4つがその代表である。これらの知識がないとプロジェクトマネジャーは務まらない。

もっとも、プロジェクトマネジャーをどう位置づけるかという問題もある。プロジェクトマネジャーを工場長、つまり、現場マネジメントの責任者だと位置づけるのであれば、これらはそんなに重要でないかもしれない。しかし、ビジネスのマネジャー、すなわち、経営側のマネジャーだと位置づけるのであれば、MBAの知識は不可欠である。

実は多くの企業はこの問題に明確な答えを出していない。というよりも、この問題は考えないでおこうとしているように見える。

一方で、プロジェクトマネジャーのキャリアパスというのが問題になってきている。日本でこの問題を白昼にさらけ出したのは日経コンピュータだったと思う。IBM社のキャリアパスで、プロジェクトマネジャーで突き抜ける、すなわち、役員まで昇進するキャリアパスがあるという記事を発表した。この辺りから、急にプロジェクトマネジャーのキャリアパスに関心が高まったように思う。

プロジェクトマネジャーが現場マネジャーでキャリアを終えるのであれば、それはそれで構わない。しかし、役員になる、つまり、経営側に入っていくとなると、経営の視点は不可欠なのはいうまでもない。やはり、MBA的な視点が必要になってくる。

では、MBA的視点とはどういうものか?上の4つについて、ひと言ずつ、以下に述べておく

(1)経営戦略
経営戦略の適切さが最大のプロジェクトの成功要因であることを理解する

(2)マーケティング
プロジェクト期間中、プロジェクトの成功のためにどのようなマーケティング活動が行われているかを理解する

(3)コスト
プロジェクト期間中のコストは重要であることはいうまでもないが、成果物のライフサイクルコストも同様に重要であることを理解する

(4)ファイナンス
プロジェクトが企業価値に貢献するためには何が重要であるかを理解する

といった視点を持てることが必要である。視点として書くと簡単そうにみえるが、これらはいずれもそれぞれの分野で本質的な問題である。

さらに、MBAという場合に欠かすことのできないのが、組織・人材マネジメントである。これについては、プロジェクトマネジメントプロセスの問題として定義でき、スケジューリングプロセスだけが重要なのではなく、組織行動プロセス(リーダーシップ、チームなど)の重要性をきちんと理解することが必要である。

さて、あなたはどのくらいMBA的だろうか?

2007年5月18日 (金)

PMサプリ76:リーダーには透明性が必要

リーダーには明確な基準という透明性が必要である(ジョン・サルカ)

【効用】
・PM体質改善
  アカウンタビリティ向上、リーダーシップ発揮
・PM力向上
  ピープルマネジメント力向上、チームをまとめる力の向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

【成分表示】

◆「First in, Last out」
◆明確な基準をもつ難しさ
◆できないことを約束しない
◆EQに見る透明性

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2007年5月14日 (月)

【補助線】PMOモデル

◆プロジェクトマネジメントオフィスの3つのモデル

プロジェクトマネジメントオフィスの役割にはどういったものがあるのだろうか?この議論は2つの視点からする必要がある。ひとつは、プロジェクトマネジメントに対して、どのようなスタンスをとるかという議論である。もうひとつは、どのような機能を果たすかである。今回、したいのは前者に対する議論である。

プロジェクトマネジメントオフィスのプロジェクトに対する関わり方は一般に、PMOモデルと呼Model1 ばれれ、2種類、あるいは3種類ある。

◆ストロングモデル

ひとつは、ストロングモデルと呼ばれる強い関わり方である。ストリングモデルでは、組織のプロジェクトマネジメントの実行そのものにPMOがコミットする。場合によっては、プロジェクトが行うプロジェクトマネジメントにコミットする場合もある。

一般にはストロングモデルのPMOは、標準化や機能の導入以外に、バーチャルチームの形成、計画書のレビューや、プロジェクト監査、リカバリーマネジメントなどの形で、プロジェクトの外部からプロジェクトマネジメントを支援していくことが多い。

また、いわゆるプロジェクトオフィス機能としてプロジェクトマネジャーの行うプロジェクトマネジメントの一部を引き受けるケースもある。例えば、プロジェクトマネジメント計画書の作成、上位組織への報告書の作成、会議体の運営、ファシリティの手配などを行う。また、プロジェクトマネジャーに代わって、メンバーの教育・指導などをすることもある。

◆コンサルティングモデル

これに対して、コンサルティングモデルと呼ばれるモデルはプロジェクトマネジメントに対してあくまでもコンサルティング的な立場で接していく。自発的に何かサービスを提供するということより、あくまでもプロジェクトや組織から相談があったときに出動し、相談された問題を解決していくというスタンスだ。支援内容的にはストロングモデルと重複する部分も多い。例えば、計画書のレビューをしたり、監査を行ったり、リカバリーを行う場合もあり、スタンスの違いだと考える方が分かりやすい。

ストロングモデルと異なるところは、自らが計画を作ったり、あるいはリカバリーに入ったり、あるいは、プロジェクトマネジメントをしたりということはない点である。

PMOの戦略の中でもっとも重要な部分はこのどちらのスタンスをとるかであり、これによって、PMOの性格も変わるし、必要なリソースも大きく変わってくる。

Model
◆ブレンドモデル

ストロングモデルとコンサルティングモデルの折衷で、ブレンドモデルというスタンスの取り方もある。これは、例えば、プロジェクトトラッキングとリカバリーについてのみ、ストロングモデルを採用し、それ以外の部分ではコンサルティングモデルを採用するというようなものだ。

PMOとしては、もっとも力量が必要になるのが、ブレンドモデルであろう。

このようなスタンス(タイプ)分類でキーになっているのは、前回述べたプロジェクトマネジメントのオーナーシップである。ストロングモデルは基本的にはオーナーシップを持とうとするスタイルであり、コンサルティングモデルはオーナーシップを持たないスタイルである。どちらを選ぶかというのはプロジェクトマネジメントの成熟度によっても変わってくるし、また、企業の姿勢によっても変わってくるだろう。

プロジェクトマネジメントに人間的要素を強く求める企業はコンサルティングモデルを採用し、オーナーシップを重視しない傾向がある。プロセスや標準を重視する企業は、オーナーシップを重視し、ストロングモデルを採用する傾向がある。

特に、企業の姿勢の中で、押さえるポイントだけは押さえたというのがブレンドモデルということになる。日本企業では、ブレンドモデルが多いようである。

2007年5月11日 (金)

PMサプリ75:多面的な方法を組み合わせた「三角測量」を用いる

あいまいなシグナルをはっきりさせ、周辺部の不透明なシグナルを解釈するため、多
面的な方法を組み合わせた「三角測量」を用いる

               (ジョージ・デイ、ポール・シューメーカー)

【効用】
・PM体質改善
  リスク管理力アップ、現象観察力アップ、バランス感覚の洗練、徹底確認力アップ
・PM力向上
  ステークホルダをコントロールする力の向上、チームをまとめる力の向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、弱気克服

【成分表示】

◆周辺視野が大切
◆どの方法にも重大な欠点や限界がある
◆アーンドバリューという三角測量
◆三角測量を使ったステークホルダマネジメント

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2007年5月 9日 (水)

【補助線】プロジェクトをチャーターする

昨日は、第1回のPMstyleプライベートセミナーを開催した。好川と峯本さんがスピーカーを務め、

 「世界の標準に見るプロジェクトのマネジメントの方向性」

というテーマで行った。このセミナーは今までにPMstyleのセミナーにきていただいた方への感謝の意味を含めて、限定的に行うセミナー。当然、メルマガなどでは告知していないので、このブログの読者でもセミナーページを見られていない方もおおいだろう。

【第1回 PMstyle Private Seminar】世界の標準に見るプロジェクトマネジメントの方向性

久しぶりにメルマガの開始当時にやっていたみんなが参加するフロアディスカッションをやった。面白かったが、その話題になったのが、Integrity(インテグリティ)。

峯本さんの話に誘発されて、フロアから、プロフェッショナルにインテグリティが必要なのは分かるが、現実にそれはどう実現するのかという質問が口火になったのだ。

僕は、持論である、日本語のボキャブラリがないものを標準として導入するのは、文化を創るに等しい仕事だという立場で意見を述べたが、実はこれを一番感じているのが、チャーターである。

名詞 charter はコウビルド英英では以下のように説明されている

A charter is a formal document describing the rights, aims, or principles of an organization or group of people.

一方で、charter に当てられる日本語「憲章」を広辞苑で引くと

重要なおきて。原則的なおきて。

と説明されている。おきてとは何かも書いていないし、重要とは何かも書いていない。

PMBOKでプロジェクト憲章というツールにはじめて出会うと、「プロジェクト憲章には何を書いたらいいのだろう」という疑問を持ち、説明を読んで、「ああ、そういうものか」と納得する。

PMBOKに書かれていることはあたかも、PMBOKで決められているように思えるが、実はこれはプロジェクトチャーターというツールというレベルで決まっているというよりも、文化、「しきたり」が charter という言霊になっているような話である。

charter という動詞は、例えば、飛行機をチャーターするとかいう使われ方をする。これは、「やとう」、「特権を許す」という意味である。権限委譲よりももっと強いイメージだ。

ついでにいえば、charter という動詞には、「許可する」という意味があり、許可書を発行するという意味でもある。つまり、 charter というのは許可書なのである。英語では、project chartering という言葉がある。プロジェクトをチャーターするのである。チャーターするためには、rights, aims, or principles of an organization をはっきりしておく必要がある。明快である。

言葉からこんなことを考えてみると、なんとなく、プロジェクトというのが組織にとってどんな位置づけのものか、感じることができるのではないだろうか?

ところが、プロジェクトチャーターをプロジェクト憲章とした瞬間に、このような言葉を構成する世界はすべて消えてしまう。だいたい、この憲章って誰が作るのかといった議論すら怪しくなっている。日本にスポンサーシップが根付かないのはこのためではないかと思っている。

マネジメントには、こういう例がたくさんある。例えば、昨日のセミナーで峯本さんが紹介したレスポンシビリティ(resopnsibility)。責任概念にはレスポンシビリティとアカウンタビリティがあるが、これは、いずれも「責任」である。言葉がないのだから、この区別をしろというのは無理な話だ。レスポンシビリティという概念がないので、コミットメントという概念もできない。

アカウンタビリティもレスポンシビリティもコミットメントもないところで、マネジメントを実行しようと思えば、プロセスにするしかない。これが、日本人にPMコンピテンシーがなかなか理解されない理由であろう。

しかし、このような壁を乗り越えて、コンピテンシーを身に付けていかない限り、本当の意味で日本人がプロジェクトマネジメントを実行する日はやってこないだろう。

壁を乗り越えずに、日本は日本のやり方で、米国のやり方とインタフェースをとっていくという方法もある。欧州PM協会のICBなどがやっている方法だ。

トヨタが米国文化の象徴のひとつともいえる自動車で世界一の企業になった。単に世界一になっただけでも凄いが、もっと凄いのは自分たちのマネジメントのやり方を世界中に普及して現地生産拠点を増やし、世界一になった。これは素晴らしいことだ。

なんどかTVでその方法をみたが、非常に地道なトレーニングをしている。インストラクタ(トヨタウェイのエバンジェリスト)が公私につき、模擬のラインを作ってスキルアップを図ると同時に、その考え方を丁寧に教えていく。「私」の部分でも、「トヨタマン」としての振舞い方を教える。まさに、人材育成の部分でもコツコツとやって、今の状況を作った。

こういうやり方もある。

2007年5月 7日 (月)

【補助線】CPMOとプロジェクトマネジメントのオーナーシップ

◆はじめに

ゴールデンウィークで少し間があいたが、前回のコラムでは、PMOのマネジメントについて、最低限でも

(1)PMO活動の成果の定義と測定
(2)PMOの戦略と役割の見直し
(3)PMOの機能の評価と見直し
(4)PMOスタッフのローテーションと育成

の4つは実施する必要があることを述べ、(1)のPMO活動の成果の定義と測定について説明した。今回から(2)について説明する。その前に、前回の記事について「PMOはひとつしかおかないのか?弊社では、プロジェクトの中にもあるし、事業部にもある。会社としてのPMOもある」という質問を戴いたので、これに回答しておきたい。

◆PMOの種類

PMOといっているものにはいろいろなものがある。例えば、米国では以下のような分類が一般的である。

(1)CPMO(Corporate Project/Program Management Office)
 あとで説明する
(2)PMO(Project Management Office)
CPMOによって確立されたプロジェクトのマネジメントの標準の適用による効果を見ながら、事業部、BU、リージョンなどの範囲で、戦術的なマスタープランに対する責任を持つ
(3)PSO(Project Support Office)
CPMOによって確立されたプロジェクトマネジメントの標準の監視をし、オペレーショナルなマスタープランに対する責任を持つ
(4)PO(Project Office)
ミッションクリティカルなプロジェクト、大規模&複雑なプロジェクトの直接的な支援を行う責任を持つ

これらは、ひとつの組織の中に共存する。

◆CPMOの役割

Owner この中で、注目すべきなのは、CPMOである。日本でもエンタープライズPMOとか、コーポレートPMOといった位置づけのPMOがある企業は少なくないが、CPMOというのは

全社のビジネス機能の一つに位置づけられる。財務、マーケティング、営業、エンジニアリング、製造などと同様に、プロジェクトマネジメントに対するオーナーシップを持ち、プロジェクトのマネジメントのベストプラクティスを全社に展開することを目的とする組織

をいう。つまり、プロジェクトマネジメントというのは組織機能の一つである。メルマガの記事に何回か書いたように、最近、「正しいプロジェクトを正しく行う」ということに関心が高まってきている。しかし、実は、これだけでは不十分である。

「正しいプロジェクトを行う」ことと、「正しく行う」ことは組織の中では自動的には結びつかないことが多い。例えば、正しいプロジェクトを正しく行うためには、組織がプロジェクトをやる意味が十分にプロジェクトに伝わり、反映される必要がある。プロジェクトマネジメントにはプロジェクト憲章というツールがあるが、これだけでそのプロジェクトを実施する組織としての意味が十分に伝わるものではない。この部分は人間系(組織)の課題になる。

◆「正しいプロジェクトを正しく行う」ためにはCPMOが必要

つまり、「正しいプロジェクトを正しく行う」ためには、「正しいプロジェクトを行う」ことと、「正しく行う」ことをコンバインする必要があるのだ。これはシニアマネジャーの役割であるが、シニアマネジャーが個別にやるには横通しの問題からおのずと限界がある。

そこで、プロジェクトマネジメントのオーナーシップという話が出てくる。プロジェクトマネジメントのポリシーを明確に定め、そのポリシーに従って、シニアマネジャーがうまくプロジェクト選定とプロジェクトマネジメント実行を結びつけてやるのだ。このようなオーナーシップを持つためには、PMOを戦略組織とし、「CPO(Cheif Project Management Officer)」とでもいう役職を設置する必要がある。

最後にひとつ、日本の企業のCPMOの特徴に触れておく。日本の企業では、CPMOがプロジェクトマネジメントに対するオーナーシップをもてないケースが多い。ぜひ、考えてみて欲しい。仮に、あなたのPMOが全社標準を作っているとすれば、以下の3点をチェックしてみて欲しい。

【簡易診断】

(1)全社のプロジェクトマネジメントポリシーを作っている
(2)標準の運用で、プロジェクトスケジュールを無視して、計画書の書き直しを命じることができる
(3)プロジェクトマネジャー以外の部門のプロジェクトマネジメントに対する責任を明確にしている

【補助線】適材適所とストレッチングゴール

適材適所という言葉をネガティブに受け取る人はほとんどいないだろう。しかし、この考え方は結構、「曲者」である。

適材適所というと、ほどんとの場合、「新しいやり方はしない」、「新しいやり方は認めない」という前提がある。ほとんどの場合と書いたのは、例外的に「何か新しいことをする」場合の適材適所というのは、新しいものを生み出せる人の配置を指すからだ。

パフォーマンスマネジメントの中にストレッチゴールと呼ばれる手法がある。これは個人に目標を与える際に、すでにその人が達成している目標よりやや高い目標を与え、その達成を「期待」することだ。

では、チームパフォーマンスをあげるにはどうするか?ひとつのやり方は、一人ひとりに対してストレッチゴールを与えることである。その積み重ねがチームのパフォーマンス向上に繋がる。確かにそうだ。これだけで十分か?

多くの人は、ここでチームワークといった「オバケ」を思い浮かべるのではないだろうか?

コンサルをしたプロジェクトでこんな経験をしたことがある。化学製品の開発プロジェクトだったのだが、プロジェクトの途中で中途採用の技術者がプロジェクトに入ってきた。とりあえず、そこの会社に慣れるためということで、まあ、勉強がてらといったところだ。

最初はメンバーの話を聞く中で、雑用係みたいなことをやっていたが、半月ほど経って、3名の実験チームの一人になり、実験の一部を担当した。ところが、他の2人と較べると常に早く終わる。最初はチームリーダーは、なれないので、やり方を間違っていると思ったらしいのだが、そうではなく、検証ロジックを組んで、並行して実験を進めていた。それで早かったのだ(といっても単なる実験計画法だが、、、)。これは前の会社で身につけた方法だった。ただし、技術スキルはもうひとつで、実験はいくつか手戻りがあった。

プロジェクトマネジャーは、仮にこの技術者がプロパーの社員であれば、その(重要プロジェクトと位置づけられた)製品開発プロジェクトには選ばれなかっただろうし、そもそも、うちの会社でエンジニアとして生き残れるかどうか怪しいとまで言っていた。にも関わらず、このプロジェクトマネジャーは、彼のやり方を自分のプロジェクトにどんどん取り込んでいった。

この例は偶発的だが、本当の意味での適材適所というのは、こういうものである。つまり、多様な視点で考え、どの視点が今一番必要かということを見極め、その視点から優れた人を割り振ることである。こうすれば、適材適所というのは失敗しないための方策ではなく、チームとしてストレッチゴールを達成するための方策になる。

冒頭に述べた曲者と書いた理由は、この視点設定ができない限り、いくら適材適所といっても非現実的だということだ。楽天の野村監督がヤクルト時代に雑誌のインタビューでこんなことを言っていた。「巨人みたいに1番が出塁し、2番がチャンスを広げ、3~5番で点を取るというような単純な野球なら、1番に足が速い人、2番にバントのうまい人、3番は足が速くて、中距離ヒッター、4番はホームランを打てる人、5番は勝負強い人と並べればいい。でも、そんな選手がいなければ、どんな野球をやるかというところから考え、その野球をできるチームを作らなくてはならない。これが王や長島には分からない監督の醍醐味」。

野村監督のどんな野球をやるかというのが視点設定である。人がいないといいながら、ステレオタイプのやり方でやって、人がいないから失敗したというのはナンセンスもいいところだ。確かに、個人の目標をストレッチしながらやっていけば、少しずつは、選手も育っていくかもしれないが、その前に監督を首になるだろう。

この議論はもうひとつ面白い含意がある。個が先か、組織が先かという議論でもある。ある視点設定でスペシャリストになると、別の視点設定をする組織では活躍できない。トルシエが中村俊介を選ばなかったのはこれだ。ここで個が先なら、自分の身につけたスキルに合う組織を捜すということになる。組織が先なら、個性を組織に併せるしか生き延びる道はない。つまり、自分のスタイルにこだわらず、組織の求めるスタイルになっていくことだ。

日本の会社は、個を活かすとかいいながら、やっぱり、組織が先で個を活かす方向を求めているだけのように見えるのはなぜだろうか?最後に、ひと言。モダンプロジェクトマネジメントというのはどう考えても個がありきの手法だな。

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好川哲人

技術士&MBA 技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。