【PMスタイル考】第130話:イノベーションにおけるコンセプチュアルスキルの役割
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コンセプチュアルスキルの必要性への認識が高まってきている。イノベーションの創出、生産性の向上をはじめとする、直面する多くの課題取り組みの行き詰まりの一因が「コンセプチュアルスキルの低さ」だと考えられるからだ。
生産性とコンセプチュアルスキルの関係についてはこれまでに何度か書いてきたので、今回はイノベーションにおけるコンセプチュアルスキルの役割について考えてみたい。
まず最初に、さまざまな場面で使われるにも関わらず定義の不明確なイノベーションという言葉の定義を明確にしておこう。
イノベーションはオーストリアの経済学者だったヨーゼフ・シュンペーターが20世紀初頭に名付けた概念だが、彼は経済活動において旧方式から飛躍して新方式を導入することをイノベーションと呼んだ。
すなわち、イノベーションを「生産手段の新結合」とし、市場における価値を、社会や市場の中から発見することによって実現されると考えた。何もないところからいきなり生み出すのではなく、「結合」、つまりすでにあるものの組み合わせから、これまでなかった価値を作り出すものだというのがシュンペーターの考えるイノベーションである。
この記事ではイノベーションという言葉を、シュンペーターのいうイノベーションの意味で使うことにする。
シュンペーターの考えは、100年経った今でも変わっていない。むしろ、最近は、結合の範囲が拡大し、組み合わせの重要性が高まってきている。
例えば、21世紀の最大のイノベーションの一つだと考えられているiPhoneにしても、もともとさまざまな技術の組み合わせで生まれてきたが、それだけでは成功していない。そこにコンテンツの流通や制作などのやり方を組み合わせることによって全く新しい価値が生まれ、成功がもたらされたといえる。