PMstyle 2024年4月~7月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

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2014年6月

2014年6月30日 (月)

【PMスタイル考】第87話:学習について考える(1)

◆はじめに

Gakusyu

2009年から書いているPMスタイル考で逃げてきたテーマがあります。それが学習です。非常に広いテーマで、切り口も多様ですので、PMスタイル考で原則としている1回読み切りで書けるテーマではないから避けてきたという事情があります。

ただ、この数年日本でも急に学習への関心が高まっており、そろそろ、書いてみようかと思ったわけですが、書くにあたって1回読み切りという原則を止めることにしました。

◆ピーター・センゲの「学習する組織」

ビジネスの場で学習すべきなのは、人と組織です。

ビジネスの場に学習という言葉を持ち込んだのは、組織学習協会(SoL)創設者のピーター・センゲです。ピーター・センゲは「学習する組織」という概念を提唱しました。

これは

目的に向けて効果的に行動するために集団としての気づきと能力を継続的に高める組織

と定義される組織です。センゲが学習する組織を提唱したのは、1994年に出版された「The Fifth Discipline」という本で、日本でも1995年に

最強組織の法則」(徳間書店)

として出版されています。この本で説かれているのは、システム思考を基盤としながら、個人とチームが効果的に変化を創り出す力を伸ばしていく方法です。そのためには5つの原則(ディシプリン)が必要だといっています(原題が、「The Fifth Discipline」となっているのはそういう意味です)。

1.自己マスタリー
2.メンタルモデル
3.共有ビジョン
4.チーム学習
5.システム思考

の5つです。それぞれがどういうものかは、別の機会に紹介します。

センゲの定義から分かるように、学習は目的に向けての行動が対象となります。つまり、組織学習の基本単位は目的を達成するためのチームです。日本では当時はチームという考え方があまりなく、学習する組織に対する注目も低かったように思います。

というよりも、むしろ、目的を明確にして仕事をするという習慣があまりなかったのかもしれません。



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2014年6月18日 (水)

【PMスタイル考】第86話:パラダイムを意識する

◆変化の常態化

Paradaimu

「変革」、「変化」という言葉が氾濫しています。オバマ氏が大統領になったころ、チェンジというと新鮮さを感じたものですが、今は、あまり新鮮に感じなくなってきました。変化が常態になってきたのとともに、何でも変革が必要だと言っていれば済むような雰囲気もあります。

よく考えてみると、変化が常態化するというのはすごい話です。これまでのやり方のほとんどが通用しなくなります。

たとえば、仕事の仕方を考えてみてください。これまではどのような仕事かを考えて、その仕事をする人を決めて、チームを作って仕事をしてきました。

ビルを建てるといった仕事では計画を作って、チームで計画通りに進めていきます。不確実要因は天候とか経済情勢くらいですので、それらのリスクも計画し、計画に従って進めていけるわけです。

ITのように相手のある仕事となると、相手の(ビジネスの)都合がありますので、計画を作っても計画通りとはいきませんが、それでも計画を作って変更を管理しながら進めていきます。

これがイノベーションになるとどうでしょうか?計画すらできません。なぜか?どうすればよいかわからないからです。分からないことは学んでいくしかありません。そこで仮説検証と呼ばれるような活動をして、いろいろなことを学習しながら、仕事を進めていきます。



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【コンセプチュアル診断】まずは自分のコンセプチュアル力を知ろう!

◆コンセプチュアルスキルで何が変わるか

コンセプチュアルスキルによって、以下のようなことができるようになります。

【1】市場や顧客の要求の本質を見極め、期待を上回る製品やサービスを提供できる
【2】仕事の本質を見極め、仕事の生産性を上げることができる
【3】柔軟な発想の問題解決ができる
【4】意思決定を速く、適切に行うことができる
【5】想いを仕事に活かすことができる
【6】ある仕事の経験を別の仕事に活かすことができる
【7】過去の経験を未来の活動に活かすことができる
【8】多様な意見を統合した新しいアイデアを生み出すことができる
【9】まったく新しいことを考えることができる
【10】共感を得るコミュニケーションができる

詳細はこちらをご覧ください。

【コンセプチュアルリーダー】コンセプチュアルスキルがもたらす10の変化



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2014年6月10日 (火)

【プロデューサーの本棚】チームが機能するとはどういうことか

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エイミー・C・エドモンドソン(野津 智子訳)「チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ」、英治出版(2014)

一昨年話題になった「TERMING」の邦訳が登場した。邦題は「チームが機能するとはどういうことか」。ちょっと長いタイトルだが、非常に的を得たタイトルの本。

タイトルを見たときに、翔泳社から出ているパトリック・レンシオーニの「あなたのチームは、機能してますか?」という本を思い出し、なんでこんなタイトルにと思ったが、読み進めていくうちに、なるほどと思った。

チームをテーマにした本だが、チームではなく、チーミング。チームは静的(固定的)な「グループ」で、チーミングは動的な「活動」であると説明されている。

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【プロデューサーの本棚】真のチームを探求する本~マッキンゼーの系譜

◆日本人のチーム観とは

日本ではイノベーションが必要だと言われながら、なかなかできずにいる。その原因を組織マネジメントに求めたり、創造性に求めたりしますが、意外と語られていない原因がチームである。

日本人はチームワークが得意だと思っている人が多いと思う。例えば、自動車のように複雑な製品を摺合せで作っていく能力を見ると、チームワークは日本人の強みのようも思える。

しかし、欧米人から見たときの評価は決してそうではない。たとえば、齋藤ウィリアム浩幸氏は2012年に

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齋藤ウィリアム浩幸氏「ザ・チーム (日本の一番大きな問題を解く) 」日経BP社(2012)

という本で、日本のもっとも大きな問題はチームがないことで、チームがないために製品はできても、システムはできないとまで言っている。

なぜ、こんなに認識のギャップがあるのか?

そのヒントがマッキンゼーで12年間採用マネジャーを務めた伊賀泰代氏の「採用基準」(ダイヤモンド社)の中の指摘に見ることができる。

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伊賀 泰代「採用基準」、ダイヤモンド社(2012)

この本はマッキンゼーの人材評価の方法を書いた本だが、伊賀氏は日本の考えるチームは一人のリーダーがいて全責任を取るグループだといい、欧米の考えるチームはメンバー全員がリーダーシップを発揮するグループだと言う。

さらに、日本ではチームの成果はリーダーの優秀さで決まると考えるが、欧米ではメンバーのリーダーシップの総和によって決まると考える。

この指摘から分かるように日本人が考えるとチームと欧米人が考えるチームのイメージは似て非なるものであり、欧米人は日本的なチームをチームだとは認めていないところにギャップの原因があるといえる。

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では、欧米のチームとはどういうものなのか?その原点ともいえるのが本が1993年に出版されたこの本だ。

ジョン・カッツェンバック、ダグラス・スミス(吉良 直人、横山 禎徳訳)「「高業績チーム」の知恵―企業を革新する自己実現型組織」、ダイヤモンド社(1994)



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2014年6月 9日 (月)

【プロデューサーの本棚】なぜ人と組織は変われないのか

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ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー(池村千秋訳)「なぜ人と組織は変われないのか――ハーバード流 自己変革の理論と実践」、英治出版(2013)

ハーバード大学で、成人学習、職業発達論を研究するロバート・キーガン教授の『Immunity to Change』の翻訳書。2009年の刊行以来、免疫システムという一風変わった概念による変革アプローチの本として評価されている。

この本では、成長課題には、技術的な課題と、適応を要する課題があり、いま、直面している課題は技術的な成長(スキルアップ)だけでは対応できず、知性のレベルを向上させ、思考様式を変容させる必要があるという前提がある。

ちょっと長くなるが、重要なポイントなので知性のレベルについて説明しておく。著者がいう知性レベルには以下の3つのレベルがある。

(1)環境順応型知性
(2)自己主導型知性
(3)自己変容型知性

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2014年6月 3日 (火)

【PMスタイル考】第85話:タイミングを考えた計画をする

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◆意思決定はタイミングで内容が変わる

前回は、マネジャーの時間管理はPDCAよりはPDRの方が有効であることを述べた。ただ、この中で触れなかった問題が、「タイミング」の問題である。

意思決定や行動の中である意味で内容よりは重要なのがタイミングである。たとえば、製品開発を行うときに、目玉になる機能に拘るあまり、発売時期を逸し、機能的に劣る競合の新製品に負け、失敗に終わるケースは珍しくない。

もう少し細かなところでいえば、仕事(業務)にもタイミングがある。

プロジェクトマネジメントが行われるようになってから、計画が重視されるようになってきたが、そこで行われていることは時間の計画が中心でタイミングの計画までは行われていないことが多い。

理由を聞くと、メンバーがフルタイムでプロジェクトに参加することが多いので、作業のタイミングは大きな問題ではない(たとえば1日に一度同期すれば十分)という意見と、タイミングは業務プロセス標準である程度考えられているので大丈夫だという意見が多い。

ある程度理解できるのだが、厳密にいえばプロセスは節目になるところの同期しかタイミングを含んでいないことが多いし、メンバーがフルタイムで参加していても意思決定のタイミングの重要性がなくなるわけではない。1日に一度、作業を同期しているので無駄が出てくるのは1日というわけではない。実はここがタイミングという話のみそだ。

たとえば、製品開発でいえば、製品の仕様を決めるタイミングが早すぎると、その後、競合の動向をみて仕様を変えざるを得ないことがあったりする。あるいは、著者が経験した例だと、業界標準の策定が遅れ、仕様を決めるタイミングが遅れ、利益損失が起こるようなこともある。



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【プロデューサーの本棚】クラウドストーミング 組織外の力をフルに活用したアイディアのつくり方

4484141027_2ショーン・エイブラハムソン、ピーター・ライダー、バスティアン・ウンターベルグ(須川綾子訳)「クラウドストーミング 組織外の力をフルに活用したアイディアのつくり方」、阪急コミュニケーションズ(2014)

クラウドソーシング(特定の仕事を成し遂げるために組織が不特定多数の人々と協働すること)が普及していく中で、クラウドソーシングとブレインストーミングの考え方を併せた「クラウドストーミング」というコンセプトの活動がオープンイノベーションの手法として注目されている。

本書はクラウドソーシングを豊富な例を取り上げながら、ライフサイクルに沿ってポイントを解説している。おそらく、クラウドソーシングを体系的に解説した本邦初めての本。オープンイノベーションの取り組んでいる人、これから取り組みたい人にはお薦めの一冊だ。

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