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2012年4月 9日 (月)

【スポンサーシップ論】第1回 プロジェクトスポンサーの仕事

Sponsorship◆プロジェクトをどう評価するか

こんな状況を考えてみてほしい。

ITベンダーS社は、5%ほどの利益を見込んである案件を受注した。技術的には枯れている分野でS社のスキルも十分で、技術リスクは少ない。ところが、開発に入ってから、顧客からの追加要求があり、対応しているうちに、利益は最終的には1%まで低下。

プロジェクトチームでは、要員のアサインができず、既存メンバーで対応したために、メンバーは軒並み、残業、休日出勤でダウン寸前。かろうじて最後まで、持ちこたえ、納期はクリアした。

一応、顧客要求には応えた格好になっており、顧客はその点については評価する一方で、ベンダーの要件開発の能力を問題を指摘しており、100%満足していない。

このプロジェクトをどう評価すればよいのだろうか?いくつか、考えられる評価を書き出してみる。

・赤字が出ていないのだから成功
・5%の収益を見込んだのに1%だから失敗とはいえないまでも、成功とはいえない
・こんな案件をするくらいなら、別の案件をすべきだった
・・・

どれが正しい評価は分からない。S社の経営状況や戦略により、評価は変わる。たとえば、S社は仕事の確保に困っており、リストラを考えなくてはならないような経営状況だとすれば、このプロジェクトは食い扶持を稼ぎ、かつ、「1%もの」収益を上げたのだから、大成功だといえる。

たとえば、S社は仕事には困っておらず、収益力の向上を戦略として掲げているなら、黒字が出ていても失敗である。あるいは顧客満足の向上を戦略に掲げているのであれば、微妙である。



◆プロジェクトの成果と業績は別

つまり、プロジェクトとしては、

納期通り、予算は4%程度のオーバー(スコープ追加あり)、顧客はそれなりに満足、
メンバーは疲労困憊

というファクトが残っている。スコープ追加があったことを考えると、プロジェクトの現場としては、問題はなかったと総括してもよいだろう。

問題は、上に述べたように同じ結果を以って、ある場合には成功といえるし、ある場合には失敗だと言えるという点だ。この判断をするのは誰かということになる。

プロジェクトマネジャーの中には、顧客が満足することがすべてだと考える人がいるが、そのプロジェクトが成功だったか、失敗だったかの判断をするのは顧客ではない。顧客の評価も含めて判断するのがプロジェクトスポンサーである。

つまり、この状況で、スポンサーがこのプロジェクトは成功だった思えば成功だし、失敗だったと思えば失敗なのだ。

もちろん、スポンサーが何の基準も持たずに、独断で判断しているわけではない。プロジェクトには、組織の方針に基づく実施目的がついている。たとえば、収益性の向上という組織の目的に対して、このプロジェクトは技術的なリスクがないんで、予定以上の収益を実現する生産性向上のプラクティスの開発を行うことを目的にしていたとしよう。すると、実際にどの程度の生産性に効果のあるプラクティスが開発できたがが、目的の達成度になり、それが成功かどうかの判断基準になる。

そして、この目的を達成することが業績になる。


◆プロジェクトスポンサーの3つの仕事

プロジェクトスポンサーには、3つの仕事がある。一つ目は、チームをインスパイアすることだ。プロジェクトスポンサーは、プロジェクトの中で、唯一、「WHY」を決めることができる存在だ。HOWはプロジェクトマネジャーが決めることであり、WHATはメンバーが決めることだ。WHYを決めることだけが、チームをインスパイアできる。

二つ目は、プロジェクトが持てる以上の力を発揮できるように、環境を整えることだ。場合によっては指導もしなくてはならない。

三つ目はプロジェクトの成果を上位組織に売り込むことだ。できたものを売り込むのは難しい。プロジェクトの立ち上げから、プロジェクトの価値を売り込み、価値のあるプロジェクトであることと思わせなくてはならない。それが、プロジェクトへの組織の支援を取り付けることにもなる。

次回は、ロールをもう少し、詳細に落とし込んでみよう。


◆セミナーのご案内

管理者の組織職としての役割・活動と、スポンサーとしての役割・活動を考えます。

━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆管理者のためのプロジェクト管理講座                               ◆7PDU's
日時:2012年05月18日(金)  10:00-18:00(9:40受付開始)
場所:銀座ビジネスセンター(東京都中央区)
講師:好川哲人(株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、MBA)
詳細・お申込 http://www.pmstyle.biz/smn/pm_managers.htm
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【カリキュラム】
1.管理者からみたプロジェクト活動の位置づけ
2.プロジェクトに対する管理者の役割と責任
3.組織の方針をプロジェクトにより実現する
4.管理下のすべてのプロジェクトを成功させるために
5.ビジネスの成果が上がるプロジェクト実行環境の構築
6.人材育成と風土づくり
7.プロジェクトスポンサーシップを身につける
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