従業員第一、顧客第二
ヴィニート ナイアー(穂坂かほり訳)「社員を大切にする会社 ―― 5万人と歩んだ企業変革のストーリー」、英治出版(2012)
お奨め度:★★★★★+α
facebook記事:「世界でもっともモダンな経営」
HCLテクノロジーズ(以下、HCLT)の2005年からの対話を中心にした企業変革の道のりを、トップリーダーであるヴィニート・ナイアー自身が振り返った一冊。HCLTの変革の特徴は、「従業員第一、顧客第二」というビジョンにある。
ヴィニート ナイアー(穂坂かほり訳)「社員を大切にする会社 ―― 5万人と歩んだ企業変革のストーリー」、英治出版(2012)
お奨め度:★★★★★+α
facebook記事:「世界でもっともモダンな経営」
HCLテクノロジーズ(以下、HCLT)の2005年からの対話を中心にした企業変革の道のりを、トップリーダーであるヴィニート・ナイアー自身が振り返った一冊。HCLTの変革の特徴は、「従業員第一、顧客第二」というビジョンにある。
ジェイ・エリオット、ウィリアム・L・サイモン(中山 宥訳)「ジョブズ・ウェイ 世界を変えるリーダーシップ」、ソフトバンククリエイティブ(2011)
お奨め度:★★★★1/2
IBMやインテルで働き、その後アップルで上級副社長として人事や教育を担当したジェイ・エリオットが、当時自分の上司であり、今では世界一のCEOと評されるようになってきた、スティーブン・ポール・ジョブズ(スティーブ・ジョブズ)のマネジメントを、ジョブスのキャリアを追いかけながら紹介している。そして、時には、著者自身がその後の自分のキャリアの中でジョブス・ウェイを実践し、その結果を踏まえて、ジョブスの素晴らしさを評価した一冊。
上村敏彦「即刻〈リセット〉したい5つのこと リーダーになってもデキる人 33のルール」、すばる舎(2010)
お奨め度:★★★★★
プレイヤーからリーダー(プレイングマネジャー)になるときに、失敗しがちな行動を避ける方法を経験に基づき、解説した本。一人でも部下ができたときに、ぜひ、手にとって読んでほしい一冊。
トム・デマルコ、ピーター・フルシュカ、ティム・リスター、スティーブ・マクメナミン、ジェームズ・ロバートソン、スザンヌ・ロバートソン(伊豆原 弓訳)「アドレナリンジャンキー プロジェクトの現在と未来を映す86パターン」、日経BP社(2009)
お奨め度:★★★★★
トム・デマルコはプロジェクトマネジメントに対して、独自の視点から、鋭い指摘をした本が何冊もある。プロジェクトマネジメントのグルを一人あげるとすれば、デマルコと言う人は多いのではないだろうか。僕の好きな3冊はこれ。
トム・デマルコ(伊豆原 弓訳)「ゆとりの法則 - 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解」、日経BP社(2001)
トム・デマルコ、ティモシー・リスター(伊豆原 弓訳)「熊とワルツを - リスクを愉しむプロジェクト管理」、日経BP社(2003)
トム・デマルコ、ティモシー・リスター(松原 友夫、山浦 恒央訳)「ピープルウエア 第2版 - ヤル気こそプロジェクト成功の鍵」、日経BP社(2001)
今回の本は、このような膨大な著作のコアメッセージをTips(パターン)の形でまとめたもので、おまけに、かなりユニークなネーミングとフレーズになっており、楽しめる。ファンであれば待望の一冊。
この本を読んでみて、物足りなければ、単独テーマの本に行くのもよいだろう。
福田 収一「良い製品=良い商品か?―「モノづくり」から「価値づくり」へ」、工業調査会(2009)
お奨め度:★★★★★
技術的な立場から書かれた本格的なマーケティング論。「期待マネジメント工学(EM)」という考え方を提唱し、さまざまな問題提起とその問題に対するマーケティングのアイディアを体系的に示している。すべての技術系マネジャー、技術者に読んでほしい一冊。
木村 英紀「ものつくり敗戦―「匠の呪縛」が日本を衰退させる」、日本経済新聞出版社 (2009/03)
お奨め度:★★★★★
日本の技術が苦手なのか、「理論」、「システム」、「ソフトウエア」を3つだという仮説に基づく、システム思考を中核に据えた技術マネジメント論。
久手堅 憲之「日本のソフトウェア産業がいつまでもダメな理由」、技術評論社(2008)
お薦め度:★★★1/2
現場の視点から、日本のソフトウェア産業の問題を指摘した一冊。7人の男(賢者?)が対談をし、その内容を著者がうまくまとめている。7人はいずれも、業界では著名な識者で、
西田雅昭さん(自営、カリスマプログラマ)
田倉達夫さん(技術コンサルティング)
中野雅之さん(アクセンチュア調達統括)
庄司敏浩さん(フリーのITコーディネータ)
相楽賢哉さん(ITコンサルティングの会社経営)
三笠大和さん(流通システム開発コンサルティング、プロマネ)
手久堅憲之(ITコンサルタント)
の7人。文中の指摘を見ても、いずれもたいへん高い見識を持つことがうかがえる。
石黒 由紀「ドキュメントハックス-書かない技術~ムダな文書を作り方からカイゼンする」、毎日コミュニケーションズ(2007)
お奨め度:★★★★
GTD(Getting Things Done、デジタル時代のストレスフリーな仕事術)本として作られた本のようだが、ドキュメントを書きながら仕事を進めることに関して、常識の枠を超えた本質的な指摘が多く、たいへん、「ため」になる本。
著者が指摘しているように、ドキュメントは何が必要かという点から必要性の分析がされ、作成されている。しかし、その作成プロセスに注目すれば不要な(他のコミュニケーションで代替できる)ドキュメントは多く、そこをうまく組み立てていることにより、「ドキュメントによるコミュニケーション」として本当に必要なドキュメントだけを作成するようにできる。それによって、作成するドキュメントの質も上がるし、情報共有の質もあがるというのがこの本の主張。特に、2章で、品質を上げるためにゴール共有をするという視点から、ドキュメントの必要性を分析している部分は共感できる。
デジタル時代の特徴のひとつは間違いなく、ドキュメントの量である。バーチャル組織、多様な人間の共同作業などで、間違いなく、ドキュメントがストレスになっている。この本はそのようなスタイルの仕事をしている人の救世主ではないかと思う。
GTD本としてTips集的な書き方になっていると感じるが、ぜひ、続編としてコミュニケーション全体を睨んだ体系的な本を書いてほしい。
吉平健治「トム・デマルコの「プロジェクト管理」がわかる本―ポケット図解」、秀和システム(2007)
お奨め度:★★★1/2
トム・デマルコというと、
「デッドライン―ソフト開発を成功に導く101の法則」、日経BP社(1999)
「ピープルウエア 第2版 - ヤル気こそプロジェクト成功の鍵」、日経BP社(2001)
「ゆとりの法則 - 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解」、日経BP社(2001)
「熊とワルツを - リスクを愉しむプロジェクト管理」、日経BP社(2003)
などの、人間に焦点を当てた、独自のソフトウエアプロジェクトマネジメント論を展開するプロジェクトマネジメントのグルの一人である。
そのデマルコのプロジェクトマネジメントを解説した本が本書。この本は2つの要素があり、前半は、著者がデマルコのプロジェクトマネジメント理論を解釈してどのように実践すべきかを述べている。後半はデマルコの理論のポイントになる部分を解説している。
デマルコのプロジェクトマネジメントは人間を中心においているため、PMBOKのように体系的ではない。著書も、すばらしいTipsが並んでいるし、また、大局的なものの見方が素晴らしい。
そのため、この本もどちらかというと体系的にまとめた本というよりは、数多くのTipsをまとめてあり、GTD本的な趣の本である。
その意味で、デマルコの主張を手っ取り早く読むにはよい本だ。ただし、デマルコの本は、行間に多くの情報があるので、この本を読んだ後で、やはり、一度は、オリジナルの本を読んで見られることをお奨めする。
スザンヌ・ロバートソン、ジェームズ・ロバート( 河野正幸訳)「ソフトウエアの要求「発明」学 誰も書かなかった要求仕様の勘違い」、日経BP社(2007)
お奨め度:★★★★1/2
SIプロジェクトでは、プロジェクトマネジメントの導入が一段落して、開発プロセスの問題がはっきりしてきた。一つは古くて新しい話題である見積もりの問題であり、もう一つが要求分析・要件定義の問題である。
本書は後者に対して、有効な一つのアプローチを解説した本である。この本では、要求はユーザが持っているものをうまく定型化するのはなく、ぼんやりとしかないものを「発明」するものだとしてそのために有用な考え方や手法を紹介している。
また、要求に対して「マネジメントする」という考え方をとり、測定や測定に基づくマネジメントの方法を述べている。
同様のアプローチとして最近注目されているのが、マインドマップを使ったアプローチであるが、マインドマップを使ったアプローチも含めて、本書で示されている枠組みの中で、今までの要求分析の活動を体系化することができるのではないかと思われるし、それは大変意義のあることだろう。
ちなみに、この本の邦訳はソフトウエアがついているが、原題は「Requirements-Led Project Management」である。全般的に書かれていることは、顧客中心プロジェクトマネジメントに近く、基本的にどのような分野のプロジェクトでも使うことができるのではないかと思う。本書でも指摘されているように、この本で主張しているやり方は「iPod」やアマゾンもやっているやり方だとしているように、特に、商品やサービス開発のプロジェクトに取り入れるとよいのではないかと思われる。
その意味で、使われている例にソフトウエア分野でしかわからないものがあるが、他の分野のプロジェクトマネジャーにも読んでほしい一冊だ。特に、コンセプトデザインの仕事に従事している人に読んでほしい。
また、本書に併せて本でほしいのが、この本
エレン・ゴッテスディーナー(成田光彰訳)「要求開発ワークショップの進め方 ユーザー要求を引き出すファシリテーション」、日経BP社(2007)
実際に要求の「発明」をしようとすれば、何らかの機会が必要である。その機会としては従来行われていたような要求分析の方法だけでは十分ではなく、創発的な場が必要だと思われる。その点において、こちらの本に書かれている要求開発ワークショップは現実的な方法だし、書籍そのものもワークショップの進め方を細かな注意点まで含めて実践的に書いている良書だ。発明に役に立つこと間違いなしの一冊である。
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