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2014年2月 4日 (火)

「獺祭」というイノベーション

4478026211桜井 博志「逆境経営―――山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法」、ダイヤモンド社(2014)

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お奨め度:★★★★

獺祭で知られる旭酒造の社長・桜井 博志氏の書いた潰れかけの酒造から、獺祭で純米本醸造の国内シェアの50%を占め、40億近い売り上げを作るまでの経営の物語。全体としてはサクセスストーリーなのだが、いろいろな失敗をし、学びながら、現在に至る的なストーリーはなかなか学ぶ点が多い。


旭酒造は国内では敵なしの獺祭ブランドを引き下げて、パリに進出した。そこで、ワインとの伝統を守る、すなわち変えないことこそ重要だという価値感に出会う。実際に若い先端的な新しいワイナリーで新しい技術を追求していても、伝統的であることを打ち出して訴求する。

それに対して桜井氏は

技術革新や変わること、つまり、「工夫」も伝統的な文化

だという。獺祭の歴史は、まさに工夫の歴史であった。

旭酒造が最初に行ったのは、酒造りのマニュアル化である。酒造りでは、杜氏がその権限を持ち、経営者は売ることに専念するという方法が一般的だった。しかし、桜井氏は新しい技術を取り入れ、それを杜氏が実行するという体制を作った。

そして、徐々に酒造りを内製するようになった。すると、オフシーズン(夏)は生産量が少なく、人手があまる。そこで、地ビール事業に手を出し、1年間の売上げを3ヶ月で失うような大失敗する。そして、これを機会に杜氏が就かなくなり、完全に社内で酒造りを行うようになる。

旭酒造の方針は、「杜氏の勘と経験」を売らず、数値化できるものは数値化し、理論化できるものは理論で解析し、その上で人間にしかできないところは人間が判断することだそうである。

こ の会社の拘りが見えるのは、酒の区分に関するものである。大吟醸とか、純米には、精米歩合を明記しなくてはならないという規則がある。ところがおいしい酒 を作ろうとすると毎年歩合を変えなくてはならない。毎年変わると客に混乱を与えることを心配し、表記が必要のない普通酒として出している。

つまり、売るために大吟醸にしているのではなく、おいしい酒を造ったら法律上の大吟醸だったというこだわりがあるのだ。

こ のような品質への拘りはまさに日本人のDNAだといってもよいだろう。一方で、桜井氏は捨てるべき日本的なものもあるという。それは、近視眼的な発想だと いう。日本人は神は細部に宿るという言葉が大好きだが、細部にこだわりすぎて、本質を見失うことが少なくない。ガラパゴスという現象はさまにそうだ。

桜井氏は、自分たちにとって本質はうまいかどうかということであり、その手段はどうでもいいと断言する。この発想がまさに獺祭を生んだといえよう。

もう一つ捨てるべきものは縮み思考だという。ワインには数十万という商品は珍しくないが、日本酒にはない。これは技術とか品質の問題ではなく、平均的なものしか作れない構想力とか哲学の問題であると指摘する。そして、これを乗り越えていかなくてはならない課題だという。

実は、当初は獺祭は品質で売り、ストーリーだとか余計なものは拭い去り、シンプルな商品として展開していた

この点もそうだが、桜井氏の考え方は獺祭の成長とともに変わっている。この点も含めて、改善なのだと思う。こだわりがあるようで、客にうまいと言わせる酒を作る以外にはこだわりがない。

僕 はお酒は飲めないが、旭酒造は地元の酒造だったので興味を持っていた。本が出たので読んでみたが、技術経営に関わっている人にはぜひ読んで欲しい一 冊である。読んでみると分かるが、熱血経営者というタイプでもない。現実を受け入れ、脱力する部分もあるし失敗を学ぶ方法も心得ている。そんな経営の物語 だ。

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