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2014年1月 8日 (水)

ビジネスメガネを新調しよう

4054058868井関 利明, 山田 眞次郎「思考 日本企業再生のためのビジネス認識論」、学研パブリッシング(2013)

お奨め度:★★★★★

大学改革の手本となった慶應大学SFCの創設メンバーの中心であった井関 利明慶應義塾大学名誉教授と、インクスの創設者であり、モノづくりの論客でもある山田 眞次郎さんが現在のビジネスの認識について過去からの流れを整理し、論じた対談集。パラダイムの変化をうまく議論していて、今、われわれが行っているビジネスを明確に認識できる一冊。

これは名対談集だ。水野学さんによる本全体のデザインもよい。


われわれがやっているビジネスがどういうものかを認識するというのは当事者であっても難しい。いや、当事者であるから難しいのかもしれない。認識するのに落とし穴になることがいくつもあるが、その中から5つ上げている。

・「モノ作り」という迷信
・「競争」という神話
・「選択と集中」の悲劇
・「標準化・大量生産」の迷走
・「全社一丸」の危険

モ ノ作りの迷信とは、モノをモノとして作っていること。競争の神話とは、現代は競争社会であると信じて疑わないこと。選択と集中の悲劇とは、投資の効率化の ために特定の事業や製品に集中的に投資し、需要が変わったときに悲惨な状況になること。標準化・大量生産の迷走とは、標準化をすることにより、ものを考え なくなり、新しいものができなくなること。そして、全社一丸の危険とは、多様性の排除により、成長できなくなること。

本書で述べていることは、このような点についてパラダイムを変える(ビジネス・メガネを新調する)時期に来ているということとどういう方向に変えればよいかということだ。

まず、ビジネス認識のベースになるマーケティングのパラダイムを3つのカーブとして表現している。

最初は、技術革新、第2のカーブはI&C革命、そして今は、顧客革命。カーブだと言っている意味は、パラダイムは共存し、重なっていると言う意味。対談では、このパラダイムのそれぞれにおいて、

・行動主体
・ビジネス焦点
・提供物
・生産モード
・流通形態
・イノベーション
・リーン戦略
・価値形態
・コンピュータ活用
・コミュニケーション
・マーケティング

について例を挙げながら比較をして、第3カーブのパラダイムを明確にしようとしている。簡単にまとめると第3のパラダイム(顧客革命)では

・行動主体:顧客・コア企業・パートナー企業の連携と協働
・ビジネス焦点:全方向の関係づくり
・提供物:経験、新しい価値創造、ビジネス創造、コミュニティ
・生産モード:コラボレーション、協働
・流通形態:シームレス・チャネル
・イノベーション:需要イノベーション
・リーン戦略:需要サイドのリーンイノベーション
・価値形態:多元的価値のバランス
・コンピュータ活用:ネットワーク・ソーシャルなど
・コミュニケーション:Many-to-Many
・マーケティング:創発

ということになる。詳しくは対談を読んで、彼らの言葉で知ってほしい。

特に重要だと思うのは、彼らがマクロテクノロジーと呼んでいるものの獲得である。これは単品技術ではなく、仕組みの連動でシステムを作る技術である。単品の設計をこのような観点からできるかどうかで、たとえばiPhoneを発想できるかどうかが決まってくる。

おそらく、ビジネス全体でこの技術が鍵を握っていると思われる。システムが作れない日本を象徴している技術でもある。

今、 ビジネスの認識として考えなくてはならないことは多いが、何かを軸にしてきちんと整理してみないと言葉の遊びになる。この本は3つのカーブというパラダイ ムを軸にして、ほぼ、今のビジネスで話題になっていることを総ざらいしているので、ビジネス脳を創り出すのに役立つ本だ。

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