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2013年4月23日 (火)

戦略的に「質問」を活用する

4484131048 アンドリュー・ソーベル、ジェロルド・パナス(矢沢聖子訳)「パワー・クエスチョン 空気を一変させ、相手を動かす質問の技術」、阪急コミュニケーションズ(2013)

お奨め度:★★★★★

質問することは難しい。質問を効果的に使いたいと考えていくと、対話とか、洞察とか、高尚な話になっていくが、本来、質問は目的があって行うものだ。そう考えると、パターンはあるはずで、それをプロのコンサルタントがまとめた本。これまでありそうで、なかった本。

あなたが営業マンで売り込みがうまく行かなかったらどうするだろうか?どうして売れないのだろうかと考えてみてもなかなか問題は見つからない。こんなときに自問してみるといい。

・相手はそれによって解消できる大きな問題や状況を抱えているだろうか?
・相手はその問題を自分のこととしてとらえているだろうか?
・相手は現在提供されているもの、あるいは、その改善率に不満を抱いているだろうか?
・相手はあなたをその仕事の適任者として信頼するだろうか?

この4つの質問は、売り込むときに使う

・この相手は買う条件が整っているだろうか

という質問の条件を確認することになる質問だ。質問を構造化しているわけだ。

もうひとつ。あなたはコンサルタントだとしよう。クライアントが、M&Aについて重要な決定をしようとしている。そのときに、こうきいてみるとよい。

これはミッションや目標の実現に役立ちますか?

本書では質問を以下の視点からまとめている。

(1)いつこの質問を使うか
(2)この質問のバリエーション
(3)フォローアップの質問

上の質問であれば、

・相手が基本理念と矛盾しようとしたことをしているとき
・相手が新しい方向に多くの時間と資源を投入しようとしているとき
・相手がミッションや目標を真剣に考えているとは思えないとき

といったタイミングが挙げられている。これから分かるようにこの質問はかなり概念的なものであり、使うにはコンセプチュアルスキルが必要であるが、応用できる範囲が非常に広い。質問をパターン化しているために、多くの質問はそのような特徴を持っている。

さらに、バリエーションも示されている。

・御社のミッションと目標を確認させていただけますか?
・これはあなたの価値感や信念と矛盾しないでしょうか?

などだ。さらに、フォローアップの質問も示されている。

・なぜそうなのですか、なぜそうではないのですか?
・ミッションに適っていて、考慮に値する別の案や考え方はないでしょうか?

こ の2つの例を見ただけでこの本のパワーが分かると思う。状況と、応用状況での質問パターンと、フォローアップが示されているので、非常に使いやすい。とい うよりも、行動パターンとして覚えてしまうのだろう。また、この枠組みを使って、自分なりにバラエティを増やしたりすることももちろん可能だ。

基本的には上に述べたようなパターンで活用法が示されているが、なかに、陳腐な質問の例も示されている。

・夜中にふと目覚めて不安になるのはどういうことですか?

といったもので、これは避けなくてはならない質問だとされている。この場合には、将来について知識に裏付けられた質問をするとよい。

・御社で今後成長が見込まれるのはどの分野でしょう?
・追加資源があったらどの分野に投資しますか?
・なぜこれほどの成功をおさめることができたのですか?今後、そのアプローチは変わるのでしょうか?

といった質問で相手の気持ちを掴んだり、相手の世界観を知るとよい。こういう質問が34章に渡って示されている(第1章は、導入)。そして、最後に、

・新規ビジネスを獲得する
・人間関係を築く
・人を指導・指南する
・危機的状況や苦情に対処する
・上司と円満な関係を保つ
・部下と円満な関係を保つ
・新しい提案や着想を判断する
・会議を改善する
・寄付を募る

という9つの状況に分けて、合計293の質問が示されている。この質問の中から、自分の必要なものを抜き出して、本文のフレームで整理しておけば、強力な武器になることは間違いない。

実はこの本、感動的によかった本

選ばれるプロフェッショナル ― クライアントが本当に求めていること

の著者の一人である、アンドリュー・ソーベルの著書だったので中身を見ずにアマゾンで注文したのだが、目を通してびっくりした。

この本が1700円で手に入るというのは驚きだ。質問というアプローチの有効性は多くの人が認めているが、実際には質問を作るのが難しい。そのような悩みを一挙に解消してくれる一冊だ。

座右の書としてぜひ一冊持っておきたい。

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